海の向こうにあるものは  (3枚)

幼かった頃の私は、孤独な女の子だった。
兄弟もいず、眠るのはいつも真っ暗な部屋でひとり。
眠る時に、童話の一つも読んでもらった記憶はなかった。

覚えているのは冬の夜のことがほとんどだった。
霜で凍りつき始めた窓ガラス越しに見えるあの場所の記憶がよみがえる。

暗い冷たい海の向こう。
暖かそうな光に包まれた場所が私の寝床から見えた。
毎晩毎晩、その場所を見ながら、それを子守歌代わり‥童話の物語の代わりにして眠るのだった。
ひどく寒いこの部屋と違って、どんなにその場所は暖かく見えたことか。
そして、かすかに聞こえる人々の声。
太鼓や、鐘などを鳴らしているのか、ガンガンガン、カンカン‥と賑やかな音。
花火をしているんだろうか、いつも火花が散るのが見えた。

あの場所へ行きたかった。
そこへ行けば、どんなに暖かいことだろう。
どんなに楽しいだろう。
そこにいる人々のたくさん笑顔を思い浮かべながら、眠りに落ちる毎日だった。

いつものように布団にくるまって、その場所を見ていたある日。
ひときわ大きな音が聞こえた。
ひときわ大きな花火が打ち上げられた。
そして人々が大勢、大声を上げながら騒いでいるのが聞こえた。

しばらくして家の電話が鳴った。
隣の部屋にいた母親が受話器を取った。
話は、ところどころしかわからなかった。
「鉄工所で事故‥、お父さんが下敷き‥うそでしょ‥」
何もわけもわからず、それでも何か大変なことが起こった事だけは察していた気がする。



ツイッターの本文はこれだ。

暗い寒い海の向こう。窓ガラス越しに見るその場所は、暖かそうな光に満ちて、いつも何やらお祭りのように賑やかだ。花火が見えたり、ガンガンガンと大きな太鼓のような音がしたり。あそこに行ってみたいと、いつも思っていた小さな私。ある夜、家に電話がかかってきた。「工場で事故‥お父さんが死‥」


どうも、思いつくアイデアが、ツイッターの140文字に収まりきらないというか、収めてしまうと、欲求不満を感じますね。

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by marinegumi | 2010-09-17 23:05 | 掌編小説(新作) | Comments(0)