まりん組・図書係 marinegumi.exblog.jp

海野久実が掌編小説やら短編小説を書いています。タイトルの後に原稿用紙換算の(枚数)があるのが小説です。


by marinegumi
プロフィールを見る
画像一覧

心霊写真 (5枚)

a0152009_23563744.jpg



僕のアパートの下の道路を救急車が走って行った。
サイレンの音がだんだん遠ざかって行く。近くに止まるかどうかドアの前に立って聞き耳を立てた。止まればすぐに部屋を出て見に行こうというわけだ。
でもそのまま聞こえなくなるまで止まらなかった。
ノックの音と同時に扉が開き、そこに岩崎が立っていた。開いたとたんに目の前に僕の顔があったので、彼も僕もびっくりするやら気まずいやら。
「なんだ?出かけるのかよ」と岩崎が聞いた。
「いやちょっとね」
「ははーん。救急車だな。お前は子供の頃から救急車の音が聞こえるといつも、一緒に遊んでいても飛び出して行ってたよな。俺をほったらかしてさ」
「そんなんじゃ…」と言う僕をさえぎって部屋に上がり込みながら彼は言う。
「大学生になってもその癖は直りませんでしたってか?」
「お前、何しに来たんだよ?」
彼は冷蔵庫から勝手に缶コーヒーを出してベッドに腰掛けた。
「今日はさー、面白いものを持って来たんだぜ」
と言いながら岩崎は1枚の写真を取り出した。
受け取って見るとなんだか見覚えのある写真だった。
ある古ぼけた旅館の一室で撮影された写真で、そこには僕が映っていた。僕のほかに友人が二人。
その中には岩崎は映っていなかった。
それは去年の夏におんぼろ車で旅行をした時の写真だったのだ。
僕と仲のいい友人達5人で行く約束をしていたのだが、そのうちの一人、目の前にいる岩崎の都合が悪くなり、4人だけで出かけたのだ。
そのシャッターチャンス違いの写真は、撮影した友人から僕ももらっていた。
「これさ、荒木がお前にもやるよってさ、旅行に行けなかったからって仲間外れにしたくないからってくれたんだよな」
「で、これがなんで面白いんだ?」と僕。
「これさ、心霊写真だぜ」
「ま、まさか?」僕は友人の顔と写真を交互に見て、またじっくりと写真を確かめた。どこにも霊らしいものは映っていなかった。
心霊写真の定番の、人物の後ろの窓に映る人の顔も何の影も見えない。
三人の手の位置も確かめ、肩に乗っているありえない手などもないのも確かめた。
点いてないテレビの画面にもそれらしいものは見えなかった。
「これがなんで心霊写真なんだよ?」
「よく見てみろよ。ほら、この辺に…」と言いながら写真の僕の右肩の上あたりを指差した。
特に何も見えなかった。彼はとてもいたずら好きな奴なので、今度もまた何か企んで来たのかと思い始めた。
そしてふと僕にもいたずら心が起きた。
「あ、本当だ。僕の後ろに人の顔がうっすらと見えてる」と言いながら友人の方へ写真を差し出した。
「ほら、この血まみれの…」
と言いながら、写真を渡そうとしたその時。受け取ろうと手を差し出した岩崎の体が透けて見えていたのだ。そう思った次の瞬間には最初からいなかったかのように、気配さえ残さず消えてしまった。
受け取る者のいなくなった写真ははらりと床の上に落ちる。
そのとき、携帯が鳴った。
震える指で受話ボタンを押さえると、荒木だった。あの写真を撮ったやつだ。
荒木が伝える内容は聞く前に分かっていた気がした。
「おい、驚くなよ。岩崎が死んだぞ。1時間ほど前だ。交通事故だったそうだ」
僕は足元の写真を見ていた。
その写真の僕の右肩の上あたりに血まみれの岩崎の顔がうっすらと映っていた。



a0152009_22454744.jpg





おわり



この作品は矢菱虎犇さんの作品「心霊写真」を読んで、コメントしている時に思いついたものです。
矢菱虎犇作品のオチの別バージョンと言う感じなんですが、コメントにこういうオチを考えましたよと書きかけて、ちょっともったいなくなって(笑)作品にしました。
写真はネットで拾った写真を2枚合成したものです。
こういう物を作る手際がだんだん良くなって来ましたね。

ランキング参加してます。
クリックで喜び組↓
にほんブログ村 小説ブログ 掌編小説へ
にほんブログ村

人気ブログランキングへ
[PR]
Commented by 矢菱虎犇 at 2011-05-21 02:20 x
う~ん、愛くるしい!犬の写真が!ってそこかよ~!

ハイ、というわけで早速拝読しました。ラスト、ゾクゾクって怖くなりましたぁ。絶対怖いですよ、コレ。なぜかっていうと、いたずら心で「見えないはずの血まみれの顔が見える」と肯定しているじゃないですか。その途端に現実化しちゃう。
幽霊が出そうだってゾゾ~とするときってまさに心の中で幽霊の存在を肯定してるんです。肯定しちゃった瞬間、恐怖が襲うとも言える。その演出がみごとです!
★★★★★
Commented by haru123fu at 2011-05-21 11:15
これって実話?って感じですよね。だってそう言うことありそうですよね。
亡くなった父の夢をよく見るんですが、
亡くなった人の夢を見るのはあまり、良くないとか?
尚かつ夢で話をすると良くないなんて言われるんですが、
私は、いつも父と話をします。お茶と羊羹を出すと、
父が「この羊羹はあまりおいしくないなあ」とか、
「どうやって帰ってきたの?」と聞くと「扉があって、そこから簡単に行ったり来たりできるんだ。」とか(笑)
意外と、海野さんが書いている扉は、実在しているのかも?
ワンちゃんの心霊写真かわいい~!
こんなに、満面の笑みを浮かべた霊ならかわいいかもね。ヾ(´ε`*)ゝ エヘヘ


Commented by marinegumi at 2011-05-21 22:27
矢菱さんこんばんは。
星五つ、いただきました!

そうかー
幽霊なんか信じないもんねー
と言いながら一人夜道を歩いている時に気持ち悪くなってきて、ちょっとの物音にでもビビる。
あれはすでに幽霊がいるんだと、心の奥では肯定してしまっていると言う事なんですかね。
そこに付け込んで、奴らは出てくるのか。
Commented by marinegumi at 2011-05-21 22:33
haruさんこんにちは。
>お茶と羊羹を出すと(笑)
あー、そう言うのいいですね。
肉親が亡くなってからも夢の中で生きていた頃見たいに話ができるなんて。
みんながみんなそうだと、悲しみも和らぐのにね。

あの世からの扉と言うのはまだ書いてないかな?
うふふふふ…(書くつもりだよこの人)
Commented by りんさん at 2011-05-22 20:39 x
最初の救急車は岩崎だったんですね。
怖い話ですね。

写真に行っていないはずの岩崎が写っているのかな…と思いましたが、もっと怖い結末でした。

矢菱さんのはネコの心霊写真で、海野さんは犬。
ちょっと笑えてホッとしました。
Commented by ヴァッキーノ at 2011-05-22 20:53 x
コワイっす!
矢菱さんのお話しの別バージョンっていう感じだろうと、タイトル見て思ったんです。
で、まあ画像も画像だし
そんないコワイ話しとかじゃなくて、コミカルな感じかと思ってたら
コワイっす!
あーやだやだ。
キャバクラ モンローウォークの記事に知らないうちにコメントが入ってて
ビビっちゃったってくらいコワイっす!(笑)
Commented by marinegumi at 2011-05-23 23:31
りんさんこんばんは。
>最初の救急車は岩崎だったんですね。
うーん、読んだ後に、そうかもしれないなと思わせるためなので、イエスでもあるし、ノーでもある、と言う感じですね(笑)
短いお話しに深みを持たせるためのテクニックだったりして。


>写真に行っていないはずの岩崎が写っているのかな
あ、そのパターンでも書けそうですね。
いただきー(笑)
Commented by marinegumi at 2011-05-23 23:37
ヴァッキーノさんこんばんは。
矢菱さんのお話を踏襲してあんな写真を持ってきてしまったので、その落差が大きくなっちゃいましたね。
より怖くなっちゃったかも。

モンローウォークの記事のコメントは、日々増殖しているかもしれませんよ。
油断禁物です。

僕は幽霊や心霊写真は信じません。
でも怪談は好きですね。
面白い怪談を書く小説家は好きですが、その小説家が幽霊は実在するとか、私は見たとかエッセイで書いたりすると白けちゃいますね。
by marinegumi | 2011-05-20 22:41 | 掌編小説(新作) | Comments(8)