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クロスワード (4枚)

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君と別れてからはどんな女の子と付き合っても、長続きしなかった。
今度の彼女とも3日前に別れたばかりだった。
それは君の事をまだずっと引きずっているからなのかもしれない。
新しい彼女に君の面影を求めている僕がいるからなのだろう。

彼女と別れたばかりの休日なんて、ただただ暇なだけだ。
時間をもてあまし、たまたまそばにあった雑誌のクロスワードパズルをしていた。
縦のカギの6のヒントは「牧場でのんびり草を食む」で、これは「うし」だ。
その「し」で始まるのヨコのカギの3番のヒントが「歌う」と言う短いヒントだった。
最初に思いついたのが「ソング」Songだった。歌うものを考えたのだ。
でもそれでは「うそ」になってしまう。「うそ」と言う鳥もいるが、牧場で草を食べると言うのは「うし」だろう。
それで、「シング」Singを思いついた。
「うそ」ではなく「うし」で正解だ。

その時、遠いあの日の事を、突然思い出した。

ドライブの途中、停めた車の中の二人。
外の景色は広々とした牧場だった。
別れなければいけない理由をたくさん並べたあとの君の横顔を見ていた。
君はほとんど聞き取れないほどのかすれた小さな声で言った。
「みんなうしだよ…」
と、そう聞こえた。
そう、牧場の柵の向こうにはたくさんの乳牛がいたんだ。
別れ話の後に何を言ってるんだと、少し腹を立てた僕はすぐに乱暴に車を出した。
しばらく一般道を100キロ近い速度で走った。
君が怖がるのがわかっていながら僕はそうせずには居られなかったんだ。
そのまま帰るまで無言だった二人。
最後の別れの言葉もなかった。

あの時の君の心が今、ようやくわかったんだ。
君は本当はこう言ったんだよね。
「みんなうそだよ」って。
迷いながらそう言ったんだよね。
たくさん並べた別れなければいけない理由なんてみんな嘘だと、僕に分かってほしかったんだね。
そんなたくさんの理由なんて僕に蹴散らしてほしかったんだと思う。
その事に何年も経った今頃、気が付いている僕には、後悔する資格もないよね。
君の方がもっと僕より辛かったんだ。
それに気がつかなかった僕はどこまで愚かなのだろう。

まだ始めたばかりのクロスワードのページを破いてゴミ箱に捨てた。
「うし」と「うそ」
あまりにもばかばかしい間違いだった。
笑い飛ばしたかったのに、涙がにじんでいた。



おわり



もともとはごく初期の(と言っても去年)ツイッター小説です。
「うし」と「うそ」を聞き間違えるなんて言うお馬鹿な冗談ぽい作品を、ちょっとマジに書き直してみました。

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Commented by 川越敏司 at 2011-10-26 08:04 x
いえ、まだ間に合います。すぐに電話して、ごめんと謝るべきです。。。
って、彼女はもう結婚しているとか? 事故で亡くなったとか? よりを戻せない理由は欲しいですかね?
それにしても、この作品は若々しいですね。青春のうずきを感じます。
Commented by marinegumi at 2011-10-26 10:40
川越さんおはようございます。
電話ですよねー
わが青春時代には携帯電話、メールなんてありませんでしたしね。
実際にはこんなことはなかったですが、恋愛のからんだ作品を書くときには常に思い浮かべる人はいますね。
その人は遠くへ引っ越しちゃいました。
by marinegumi | 2011-10-25 10:44 | 掌編小説(新作) | Comments(2)