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海野久実が掌編小説やら短編小説を書いています。タイトルの後に原稿用紙換算の(枚数)があるのが小説です。


by marinegumi
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その角を曲がると (4枚)

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塾からの帰りがすっかり遅くなってしまったあなたは気ぜわしく、急ぎ足で夜の道を歩いていた。
後ろから街灯に照らされた、あなたのおさげ髪の影法師が、だんだん暗闇に飲み込まれて行くのをあなたは心細く見ていた。
この辺の通りは街灯と街灯の間隔が広く、次の街灯が見えて来るまでしばらく、道はほとんど暗闇に包まれてしまう。
あなたは早く家にたどり着きたかった。
あの暖かな光の中へ。家族の笑顔が待っているあの心休まる空間へ。
背中のランドセルの中の文房具が、歩くにつれ音を立てている。
その音が建物の塀に反射して、時々別の方向から聞こえて来る。
それが何か怪しげな物の怪のたてる音ような気がして、あなたはさらに不安になる。

やがて、次に曲がる角の向こうの街灯の明かりが、うっすらと道路に射しているのが見えた。
あなたは小走りになる。

その角を曲がると目の前に「影」が立っていた。
それは日差しの強い日中のアスファルトの道路に黒々と映るようなくっきりとした濃い影だ。
いや、一瞬影に見えただけで、それは上から下まで黒ずくめの服装の男の人だった。
街灯を背にしているので影にしか見えなかったのだ。
あなたは怖くなり、その人をよけながら下を向いたまま通り過ぎようとした。
すれ違って通り過ぎたと、安心しかけた時、後ろから襟首を掴まれ、あなたの体ごと、そのまま持ち上げられる。服の襟が首に食い込み、あなたは声を出せない。
目の前にその人の顔があった。
いや、黒い服と黒い帽子の間の顔があるはずの所には何もなく、ぽっかりと真っ暗な空間が見えているだけだった。
その空間は少しづつ明るくなり、あなたはそこにあなたの後ろ姿が映っているのを見つける。
通学路を歩いている自分の赤いランドセルが色鮮やかだ。
息が出来ずに気が遠くなりながら、あなたはその明るい日差しの中の自分の後ろ姿を見ていた。

気が付くとあなたは朝の歩道の上を歩いていて、いつもの角を曲がったばかりだった。
歩いているうちにあなたは自分が学校へ向かっているのがわかった。
あなたは不思議に思いながらも、しばらく歩いて行くと、近所のおばさんが2~3人立ち話をしているのに出会う。
「おはようございます」と、あなたはいつものように挨拶をする。
おばさんたちは会釈をしただけで、立ち話の続きに戻った。
「でも、よかったじゃない」
と、一人のおばさんが言うのが聞こえた。
あなたは通り過ぎて、少し歩いて立ち止まり、その話に聞き耳を立てる。
「昨日の晩、職務質問で捕まったんですってよ」
「いわゆる少女の敵っていうやつね」
「こんな近くにそんなのが出るなんてねー。こわいこわい」
あなたは訳がわからないながら理解していた。
あの影のような男の人が現れなければ、あなたは何か犯罪に巻き込まれていたのかもしれないと言う事を。




おわり



ぽつりぽつりと、ツイッター小説を書きながらリハビリ中です(笑)
いくつか書くうちに、140文字にどうしても収まらないストーリーが出て来てしまいました。
それを膨らませて掌編にしてみたのがこれです。

やっぱりツイッター小説はいいトレーニングになっているんでしょうか?


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by marinegumi | 2011-12-12 00:19 | 掌編小説(新作) | Comments(0)