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海野久実が掌編小説やら短編小説を書いています。タイトルの後に原稿用紙換算の(枚数)があるのが小説です。


by marinegumi
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パロディー/一寸法師 (5枚)

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一寸法師は鬼のお腹の中で暴れまわりました。
針の刀で手当たり次第につつきまわるものですから鬼は痛がり、とうとう泣きながら一寸法師を吐き出しました。
「どうだ参ったか。もう悪さをしないなら許してやるぞ」
「しませんしません、これを差し上げますからどうぞ許して下さい」
そう言いながら鬼が差し出したのは打ち出の小槌と言う宝物でした。
お姫様が言いました。
「これは何でも願い事を聞いてくれると言う不思議な小槌ですよ」
「それでは私の体を大きく出来るでしょうか?」
「大きくなーれ、大きくなーれ」
お姫様がそう言いながら打ち出の小槌を振ると、一寸法師はみるみる大きくなりました。
大きくなるさまが面白く調子に乗って振りすぎて、お姫様の倍ぐらいの背丈になってしまいました。
「あらま、どうしましょう」
「そうだ、姫を少し大きくすればいいんです」
一寸法師が打ち出の小槌を振ると、姫はどんどん大きくなりました。
手加減がわからないので、今度は姫の方が一寸法師より少し大きくなってしまいました。
「何と言う事だ。のみの夫婦なんて言われたくない。私をも少し大きくしてください」
「ま、夫婦だなんて、まだ何の約束もしたわけではないのに」と思いながらお姫様は小槌を振ります。
「大きくなーれ、大きくなーれ」
「あららら、また大きくなりすぎましたね」
「大きくなーれ、大きくなーれ」
そうこうするうちに、二人の背丈は、並ぶとちょうどいいぐらいになりました。
一寸法師よりも少しお姫様が低く、お似合いの二人になったのですが、気が付くと二人とも五重の塔よりも大きくなってしまっていたのです。
見降ろすと、集まって来た都の人々が二人をぐるりと取り囲み、黒々としたかたまりに見えます。
「いかんいかん。今度は小さくしなくては」
今ではもう豆粒のようになってしまった打ち出の小槌を親指と人差し指でつまみ、お姫様が振ります。
「小さくなーれ、小さくなーれ」
でも少しも小さくならないではありませんか。
「どうやればいいんだ?」
一寸法師は慌てます。
「鬼に聞きましょうか?」
あの鬼はどこへ行ったのかと足元を見るとそこに倒れていました。
お姫様は鬼を手のひらに乗せます。
「鬼よ、鬼。どうやれば体が小さくなるのじゃ?」
鬼は閉じていた目を薄く開き、こう言いました。
「願い事は一つだけ…。同じ願い事なら何回でもか…かなう…。もしも…」
鬼はそのまま息絶えてしまいました。
「しまった、針の刀に毒をぬっていたのだった」
「まあ、ひどい人。許すと言っておきながら」
「すまん。つい忘れていたんだ」
「死んでしまいましたよ。わたしたちの体を元に戻す方法を聞けないではありませんか!この粗忽者」
「な、なんだと?お姫様だと思って優しくしておればこのぉ…付け上がりおって!」
「なんですと?一寸法師。あなたこそ…」
すでに一寸法師とは言えなくなった一寸法師と、お姫様の喧嘩が始まりました。
普通の人なら何と言う事のない小突き合いでしたが、二人の体は五重の塔より大きくなってしまっています。
京の都はたまった物ではありません。
人々は踏みつぶされ、建物は破壊され、もう阿鼻叫喚の地獄絵と化します。
ふと気が付くと、二人のそばには二人と同じぐらいの背丈の一本角の赤鬼が忽然と立っていました。
「なんだ!?お前は」
一寸法師が聞いてもその赤鬼は一切無言でした。
そして、奇妙な拳法の構えを取りながら、二人の方へじわじわ近寄って来るのです。
一寸法師は腰の針の刀を探しましたが、そこにはありません。
身に着けていた服や履物は体と一緒に大きくなっていましたが、刀は地面に置いていたらしく、恐らく小さいままなのでしょう、もし見つかったとしても武器にはなりません。
「ま、丸腰で戦うのか…」
一寸法師は歯ぎしりをしました。
その時、赤鬼は奇妙な叫び声をあげて二人の方へジャンプしながら襲いかかって来たのです。

「シュワッチ!」




おわり




りんさんの書くおとぎ話のパロディーに感化されて僕も一つと言う感じで書きました。
ツイッター小説で次々に書こうと思ってとりあえず1本書いたのですが、140文字で書くと欲求不満を感じてしまい、こういう形になりました。

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Commented by りんさん at 2012-02-15 16:37 x
海野さんのパロディ、すごく面白かったです。
紐を切ったりするときに、長さが合わなくてどんどん短くなっちゃうことってありますからね。
これはその逆なんですね。

しかもウルトラマンまで登場しちゃって、怪獣扱いですか(笑)
一寸法師とお姫様の妙にリアルな会話もいいですね。
ウルトラマンにやられないように、3分間逃げ回ってほしいですね^^
Commented by かよ湖 at 2012-02-15 22:38 x
とっても面白かったです。つい声に出して笑ってしまいました。
小槌の振り方って、たしかに手加減が分かりませんよね。初めての事だもの。
一寸法師と姫のやり取りも笑えます。
ただ、冒頭。「鬼のお腹の中で」は、いつ出てきたんだろう?とちょっと疑問です。それ以外は、最高に傑作ですね!
Commented by marinegumi at 2012-02-16 00:55
りんさんこんにちは。
そうですそうです、図工の時間に椅子を作って足の長さがなかなかそろわず、最後に座イスになっちゃった。
あの逆バージョンですね。
あ、そうだ今別のオチを思いつきました。
これはまた近いうちに書くかも。

>一寸法師とお姫様の妙にリアルな会話
これは一度アップした後に、そのセリフ部分にけっこう手を加えました。
妙にリアルな会話にしようとしたんですね。

あ、そうだ。
ウルトラマンに勝つには、もっと大きくなる事ですね。
打ち出の小槌は大きくなる願いはかなえてくれるんですから。
Commented by marinegumi at 2012-02-16 01:05
かよ湖さんこんばんは。
そんなに受けていただいてありがとうございます。

>いつ出てきたんだろう?
あー、それそれ。
かよ湖さんするどい。
最後の最後まで、鬼のおなかから出て来る描写が必要か必要でないか迷いました。
やっぱり有った方がいいのかなー
と、思えば即実行(笑)
書きなおしておきます。

>とうとう泣きながら謝りました。

>とうとう泣きながら一寸法師を吐き出しました。
に変えました。
実は、そのあとの一寸法師のセリフ
>「どうだ参ったか。もう悪さをしないなら許してやるぞ」
の前に「謝りました」が来るのに疑問を感じてたんですね。
もう謝っているのにこのセリフはどうかなと。

これですっきりしました……か?
Commented by 春待ち りこ at 2012-02-16 10:56 x
笑いました。。。かなり。。。
ウルトラマンって。。。赤鬼一族だったんですね。
確かに。。。シルエットにすると
頭に角が一本あるように見えるなぁ。。。なんて思うと
またウケました。( ^∀^ )ヶラヶラ

面白かったです。
二人で大きくなっちゃうところも
会話の面白さも抜群
童話を怪獣物にしちゃうなんて、さすが。。。です。

楽しみました。ありがとっ♪
Commented by marinegumi at 2012-02-17 22:19
りこさんおはようございます。
140文字の時は二人が五重塔より大きくなっておしまいだったのですが、その絵を想像すると、ウルトラマンが登場するのがごく自然に思えてきたんです。

角が二本あるウルトラマンもいるのでしょうけど、やっぱり一番ポピュラーな「本家ウルトラマン」がいいように思えたんですね。

童話のパロディーシリーズ、次が思いつかないですねー
あ、そうだ。
一行ショートショートの「3びきのこぶた」があったよね(笑)
Commented by haru123fu at 2012-02-18 11:35
子供に聴かせるように声に出して読むと、凄く面白いです。
昔の紙しばいみたいな感覚です。10円玉握って飴を舐めながら。
あ、絵本にもできますね。海野さんにイラストを書いてもらいたいなぁ
Commented by marinegumi at 2012-02-18 20:36
haruさんこんにちは。
音声ソリューションで、男の子の声でこれを朗読させるとかなりいいですね。

紙芝居ねー
紙芝居と言えば、僕は水飴と酢昆布ですねー
なつかしい。

絵本も、昔はしたい仕事の選択肢に入っていましたよ。
今はもう絵を描くのがしんどいんですよね。
時間はかかるし、眠くなってくるし…(笑)
そんなこと言ってちゃなーんにも出来ませんよね。
by marinegumi | 2012-02-14 20:30 | 掌編小説(新作) | Comments(8)