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シンデレラストーリーズ (8枚)

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シンデレラは思い出す


シンデレラが家の明かりを目にする頃には雨は土砂降りになっていました。
カボチャの馬車は途中でただのカボチャに変わり、馬はネズミに、お伴の者はトカゲにもどり、どこかへ行ってしまいました。
シンデレラは長い道を歩いて帰らなければなりませんでした。
石ころだらけの道は雨のためにしだいにぬかるみ始め、歩くのさえままならないほどでした。
シンデレラの服は、すでに美しいドレスからみすぼらしい元の服に戻っていましたが、家に着いた時には、泥で汚れ、雨にぬれてよれよれになり、さらにみすぼらしく見えました。
自分の部屋で小さな鏡を覗き込むと、ずぶぬれの泥と涙で汚れた顔の娘が見つめ返しました。
「王子様はお城から帰る時に声をかけてくださったわ」
シンデレラはあの声を思い出しました。
「きっと王子様は私の事を気に入ってくださったと思うのだけれど…」
シンデレラは寒い暗い部屋でぬれた服を寝巻に着替えると、冷たい足を我慢してベッドに入りました。
そして、お城での夢のような舞踏会の事を思い出しました。
昼間のように明るい、とてつもなく広い部屋。
見たこともないたくさんのごちそう。
そしてそして、優しく男らしく美しい王子様の笑顔。

シンデレラはふと思い出し、ベッドから出ると足元のガラスの靴を手に取りました。
それを丁寧に布で汚れをふき取ると鍵のかかる戸棚に大事にしまいました。

きちんと右左をそろえて。





シンデレラはがんばる


シンデレラが家の明かりを目にする頃には雨が降り出しました。
カボチャの馬車は途中でただのカボチャに変わり、馬はネズミに、お伴の者はトカゲにもどり、どこかへ行ってしまいました。
シンデレラは長い道を歩いて帰らなければなりませんでした。
靴が片方お城の階段で脱げてしまったものですから、歩きにくく、残った片方のガラスの靴を手に持ってはだしで石ころだらけの道を歩いたのでした。
やっと家に着いた時にはへとへとに疲れていました。魔法で美しいドレスに変わっていた服も元に戻り、さらに雨に濡れ、泥だらけでした。
シンデレラは自分の部屋の汚れた鏡に映るその姿を見てますますみじめになりました。
ふと足を見ると血だらけになっていました。
冷たい水で足を洗い手当てをして震えながらベッドに入った頃に、二人の姉と継母が帰って来た物音がしました。
片方だけのガラスの靴を目の前に持って来てはお城での舞踏会の事、素敵だった王子様の事を思い出していました。
翌朝になってもシンデレラの足はうずきました。

次の日からお城からの使いが国中を駆け回り、ガラスの靴の持ち主を探し始めました。
1週間後、シンデレラの家にもお使いはやってきました。まだガラスの靴がぴったり合う娘は見つかっていなかったのです。
二人の姉にももちろんその靴は合いませんでした。
「この家には他には娘はいないのか?」とお使いが聞きました。
「はい。この二人だけですわ」と継母が答えました。

そうなのです。シンデレラがあの舞踏会の夜の足の傷のため、破傷風で死んでしまったのは3日前の事でした。




シンデレラは待っている


シンデレラが家の明かりを目にする頃には、土砂降りだった雨もやみそうになっていました。
カボチャの馬車は途中でただのカボチャに変わり、馬はネズミに、お伴の者はトカゲにもどり、どこかへ行ってしまいました。
シンデレラは長い道を歩いて帰らなければなりませんでした。
しかもシンデレラは片方しか靴を履いていませんでした。あわててお城の階段を駆け降りる時に脱げてしまったのです。歩きにくかったので、残った片方のガラスの靴を手に持ってはだしで石ころだらけの道を歩いたのでした。
魔法で美しいドレスに変わっていた服も元のみすぼらしい部屋着に戻り、それがさらに雨に濡れ、泥だらけでした。
やっと家に着いた時にはへとへとに疲れていました。部屋に落ち着くとシンデレラは疲れのために足が痛むのさえ忘れていたのに気がつきました。
冷たい水で足を洗い、ベッドに入ったものの足が痛くてなかなか寝付けませんでした。
片方だけのガラスの靴を目の前に持って来てはお城での舞踏会の事、素敵だった王子様の事を思い出しました。足の痛みを忘れるために。

次の日からお城からの使いが国中を駆け回り、ガラスの靴の持ち主を探し始めました。
1週間後、シンデレラの家にもお使いはやってきました。まだガラスの靴がぴったり合う娘は見つかっていなかったのです。
二人の姉にももちろんその靴は合いませんでした。
「私もその靴を履いてみてもいいでしょうか?」
とシンデレラは進み出ました。
「何を言うんだ?お前なんかに合うはずがないだろ?」
と継母が言いました。
「国中の娘にはかせてみろと言うお達しだ」
お使いがシンデレラにガラスの靴をはかせるとぴったりでした。
「お前の名前は?」
「シンデレラと申します」
「そうか」
お使いは番地と名前をメモすると、出て行きました。
「なにしろ国中の娘に履かせなくちゃならないのだ」

それからしばらくして王子様は結婚しました。
王子様はお使いが娘を探している間に姓名判断に凝ってしまいました。
それによるとシンデレラと言う名前の娘とはうまく行かないらしいのでした。
ガラスの靴にぴったりの足の娘と結婚すると宣言した手前、結婚相手の、その最高の名前を持つ娘の足に合わせるためにガラス職人にガラスの靴を削らせたのは秘密でした。

そのガラス職人は首をはねられましたとさ。




おわり




この作品は、りんさんのブログ「りんのショートストーリー」の中の作品「おとぎ話(笑)3」のコメント欄に書いた、「シンデレラ」のパロディーを元にしています。
それはこちら(全文です)

「あー、舞踏会楽しかったわねー」
そう言いながらシンデレラはガラスの靴を揃えて靴箱にしまいました。


それだけを元にしてあれやこれやと妄想した結果なわけですね。


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Commented by りんさん at 2012-04-04 13:09 x
ふふふ…
不憫なシンデレラですね。
途中まで同じ文章で、それぞれラストが違う。
こういうの面白いですね。

やっぱり1番目の「シンデレラは思い出す」が好きです。
幸せを予感させて突き落す、みたいな(笑)
考えてみたら、シンデレラの魔法は帰り道の途中で切れちゃったわけですからね。
破傷風もあり得るわけだ(笑)
Commented by 雫石鉄也 at 2012-04-04 13:41 x
ノックの音がした。
この家の娘が出た。そこにシンデレラが立っていた。
手にはS&WM29を持っていた。ダーティーハリーが持っていた、あのでっかい拳銃だ。バコン。44マグナム弾が娘の頭を吹っ飛ばした。
ノックの音がした。
この家の娘が出た。そこにシンデレラが立っていた。
手には胴太貫をぶら下げていた。
シャ。白刃一閃。娘の首が転がり落ちた。
ノックの音がした。
この家の娘が出た。そこにシンデレラが立っていた。
腰だめにポンプ式ショットガンを構えていた。
鹿撃ち用の散弾が発射された。娘の身体はすだれのようになって、壁に張り付いた。
ノックの音がした。
この家の娘が出た。そこにシンデレラが立っていた。
手にはチェーンソーを持っていた。
ウィン。ヘソの部分で娘は二つに切断された。
こうしてシンデレラは自分と同じサイズの足の娘をみんな殺しました。
シンデレラはめでたく王子様と結ばれました。
めでたしめでたし。
Commented by haru at 2012-04-04 18:31 x
海野さん面白すぎ!きゃははは!笑えちゃいますよ~。
あらら、雫石さんまで。シンデレラのイメージが頭でぐるぐる回りだしました。(笑)

え~っと、ところで「秋の教室」朗読させて頂いてもよろしいでしょうか?
ちょっと長めでムリかな~なんて思いつつもトライしてみたくなりました。
お願いします。m(_ _)m 
Commented by marinegumi at 2012-04-04 21:52
りんさんこんにちは。
>ふふふ…不憫なシンデレラ、ですかー
じゃあ、
>ははは…破廉恥なシンデレラ
>ひひひ…悲劇のシンデレラ
>へへへ…変身するシンデレラ
>ほほほ…本家シンデレラ(ってわけわかんない)

振られると、すぐにこういう事を考えてしまいます。
お気を付けください(笑)

ガラスの靴を忘れてこなかったシンデレラのアイデアはいいですよね。
そうだ、あと、12時過ぎてもお城の中にいたシンデレラと言うのもいいかも。
シンデレラって、馬車もドレスも魔法で変えられた物なんですよね。
でもガラスの靴だけは魔法使いが貸してくれた物なので、12時過ぎてもそのままガラスの靴なわけです
Commented by marinegumi at 2012-04-04 22:00
雫石さんこんにちは。
どかーんと来ましたね。
そうそう、足のサイズが同じ娘ってたぶん国中にはたくさんいるはずですよね。
でもまあ、原作のシンデレラがめでたく王子様と結婚できたのは魔法使いがこのガラスの靴にシンデレラにしか合わない魔法をかけていたのではないでしょうか?
そうでなければ、雫石バージョンのようなバイオレンスな結果になったかもしれません。
また、他の娘にシンデレラが虐殺されたかもしれませんね。

いやあ、しかし派手にやってくれちゃいましたね。
いくら昔の事で、警察の化学的な捜査なんてものがない時代でもちょっと派手すぎますね。
ここは証拠隠滅のためにそれぞれの家に放火ですかねー
Commented by marinegumi at 2012-04-04 22:04
haruさんこんばんは。
もう雫石さんともども好き勝手やり放題ですわー

僕の方はなるべく真面目にシンデレラストーリーのムードを壊さないようにやってみました。

「秋の教室」の朗読ですね。
お願いします。
朗読に先立って、文章にちょこっと手を入れました。
Commented by ヴァッキーノ at 2012-04-06 21:20 x
やっぱり、こうやってパロディが生まれるってのは
すごい作品なんですよねえ、原作は。
そういう原点にものが書けたらいいんですけどねえ。
Commented by marinegumi at 2012-04-06 22:38
ヴァッキーノさんこんばんは。

そうそう、そうなんですね。
書いていて思いましたよ。
手を変え品を変え、いろんな方向からパロディーに出来るすごいお話ですね。
同じパターンの童話が世界じゅうに分布していると言うのも納得ですね。
by marinegumi | 2012-04-03 22:56 | 掌編小説(新作) | Comments(8)