まりん組・図書係 marinegumi.exblog.jp

海野久実が掌編小説やら短編小説を書いています。タイトルの後に原稿用紙換算の(枚数)があるのが小説です。


by marinegumi
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屋上 (2枚)

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僕はビルの外階段を昇って行った。
風が強く、手すりをつかんでいないと不安だった。
体が簡単に吹き飛ばされてしまいそうな頼りない気分だった。
それでも階段をどんどん昇りながら、なぜこんな長い階段を昇らなければならないのか、その理由を自分自身でも理解していない事に気がついた。
その理由を思い出そうとしながら、僕はとりあえず昇っているのだ。
そんな自分がひどく滑稽に思えた。

そして、ビルの屋上に着いた時、そこにいる人影を見てやっと思い出した。
金網のフェンスを乗り越えて屋上の縁(ふち)に立っている人影。
それは僕だった。

僕はそこから飛び降りるためにここへやって来たのだ。
僕の人生を終わらせるために。
そして何度もためらい、何度も飛び降りようと試みているうちに、やっとさっき飛び降りる事が出来た。
いや、そう思った。
僕の精神は確かに飛び降りた。
しかし肉体は死の恐怖のためビビってしまい、そこに残ったのだ。

僕は魂の抜け殻の僕のその顔を見た。
なんて間抜けづらをしているんだろう。
なんて愛おしい馬鹿みたいな顔なんだろう。

わかったよ。
そんなに死ぬのが怖いなら、一緒に帰ってもいいんだよ。



おわり



仕事中にぽっかり時間が出来ると、けっこう楽に書けますね。
そうですこの作品もさっき書いたばっかりです。
家に帰るとなんだかしんどくて、ついついなまけちゃう今日この頃。
えーい、ついでにアップしちゃえ~と言う感じです。


haruさんがこの作品を動画と共に朗読してくださっています。

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Commented by haru123fu at 2012-04-17 19:03
あららら!お仕事中の方が小説がはかどるとは。(笑)
肉体と魂の分離とは。。。(;゚Д゚)! でも最後は一つになれそうで、良かった。ホッ!
「夜の部屋」も「屋上」もどちらもステキ!朗読させてもらいたい作品ばかりです。
こうなったら、まりん組・図書係の専属音声担当にでもさせてもらおっかなぁ~(^▽^)
Commented by marinegumi at 2012-04-17 23:53
haruさんこんばんは。
それはそうでしょー
仕事中は暇な時はパソコンの前に座っているんですからね。
暇だからと言って横になるわけにもいかないですから、小説を書くにはうってつけなんです。

これは人さまの、オチのないツイッター小説を読んで、なんとなく僕も書きたくなって、ツイッターで書きながら考えてるとオチまで出て来て、140文字に収まらなくなったものです。
やっぱり書くのに疲れたらツイッターですね。

朗読、いいですねー
こう言う感じの作品を聞きたい、みたいに、朗読を前提に書いてみると言うのも有りかもしれませんね。
Commented by りんさん at 2012-04-18 16:50 x
よかった。飛び降りなかったんですね。
飛んだのは、彼の精神。
自殺志願者が、みんなこんなふうに出来たら、きっと思いとどまるでしょうね。
間抜けでも、生きてる方がいいと思える日が来るといいですね。
Commented by marinegumi at 2012-04-18 18:39
りんさんこんにちは。
登場人物が自殺してしまう話って言うのはなんかやりきれませんね。
アマチュアの漫画家さんの作品で、そう言うお話がありました。
とても情景描写がきれいで、気持ちのいい絵なんですが、最後に飛び降りてしまって、終わります。
なんか漫画だとしてもいやな気持になりましたね。

だめ!ぜったい。
Commented by ヴァッキーノ at 2012-04-18 20:31 x
本格的なショートショートって雰囲気っすねえ。
アメリカンショートショートっぽくて
スカッとします。
Commented by marinegumi at 2012-04-19 08:50
ヴァッキーノさんこんばんは。
ショートショートに本格的とか、変格的とかないんじゃないのでしょうか?
言うならば、ショートショートらしいショートショートと言う感じですかね。
これまで書いている物があまりショートショートと言う感じのは少なかったですね。
思いついた時も結構スカッとしました。
短くすっきり書きやすく。
Commented by 矢菱虎犇 at 2012-04-20 03:18 x
haruさんのところで朗読を聴いてから来ました。
これ、いいですねぇ。死に直面してためらっているときって分離しちゃうんですよねぇ。それがこんなにみごとなショートショートになるなんて!
Commented by marinegumi at 2012-04-20 20:28
矢菱さんおはこんばんちは。
挨拶に困る時間帯(笑)

ありがとうございます。
なんかきっちりいかにもショートショートらしい作品が出来ました。
これぐらいの長さだと、どんどん書けそうな、そうでもなさそうな。
やっぱり死にたくなるのは心の方で、体は絶対生き続けたいはずですよね。
by marinegumi | 2012-04-17 18:29 | 掌編小説(新作) | Comments(8)