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海野久実が掌編小説やら短編小説を書いています。タイトルの後に原稿用紙換算の(枚数)があるのが小説です。


by marinegumi
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右手の寒さ (2枚)

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「ねむいよー、おかあさん」
「眠いんだったらねんねしなさい」
「いやだいやだよ。ねたくないもん」
「じゃー寝なきゃいいでしょ?」
「ねちゃったらだめなんだもん!」
「ほらほら、もう目を開けてられないじゃないの。おやすみなさい」
「いやだ!ねたらだめなの!」
「もう、この子は。足をじたばたするのはやめなさい!」
「ねたくない。ねたくない!ねたくない…」
「どうしてそんなにぐずるのかしら。眠ければ寝ちゃえばいいのに。変な子ね」

私はどうしようもない眠気の中で、幼い頃の夢を見ていたようだ。
母親の声がまだ聞こえている。
次第に夢から現実へと覚醒して行くと共に体に寒さを感じ始めた。
私は人通りの多い商店街の、歩道に置かれたベンチに腰掛けていた。
またお酒を飲んでしまったようだった。
お酒を飲むと、必ず眠くなるのがわかっていながら、飲まずにいられなかった。
ふと、右の手のひらが妙に寒いのに気が付いた。
ずっと暖かかったはずの右手……
その時、私ははっきりと目覚め、慌てて立ち上がった。
道行く人がじろじろと見て通る。
あの子がいない!
一緒にベンチに座って、しっかりと手を繋いでいたはずの息子が。
右手の絶望的な喪失感を握りしめ、走り出した。
暖かそうな光に包まれた街角がひどく寒く感じられた。



おわり



例のごとく、元はツイッター小説です。
事の大小はともかく似たような経験はだれでもあるでしょうね。

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Commented by haru123fu at 2012-10-17 10:53
この作品可愛いって思って読んでいたら、あらら。。。
そんなことに。(゚o゚;;
朗読させてもらってもいいですか?

朗読していると現実逃避ができて、安らぎます。
Commented by marinegumi at 2012-10-17 12:04
haruさんおはようございます。
現実逃避のおともにしてやってくださいー
朗読お願いします。

ぼくが現実逃避する時に聞く曲を「落し物係」の方に紹介してあります。
「黄昏だけなら生きてもいい」
by marinegumi | 2012-10-15 20:24 | 掌編小説(新作) | Comments(2)