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海野久実が掌編小説やら短編小説を書いています。タイトルの後に原稿用紙換算の(枚数)があるのが小説です。


by marinegumi
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夢 (5枚)

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  ぼくは夢を見ていた。これは夢に間違いないと思いながら長い夢を見続けていた。

ぼくが眩しい光の中に出た時に、たくさんの逆光の顔が見えた。
その中の一番近くにあった顔がぼくのお母さんだったと言うのは、その時にはまだ知らなかった。
家の床をハイハイ出来るようになった頃、お母さんやお父さんの笑顔がうれしくて、ぼくは一生懸命に家じゅうを這いまわった。
家事をするお母さんの後ろについて回るうちに、ある部屋で額に入れられたた男の子の写真を見つけた。その写真を見上げていると、お母さんが言った。
「これはあなたのお兄ちゃんだった男の子よ」
そう言って少し悲しそうな顔をした。
ぼくは両親にとても可愛がられて大きくなった。
わがままをたくさん言って育った。
なんでも思い通りにしてもらっていたので、保育所にはなかなかなじめなかった。
幼稚園へ行くのもとても嫌だった。
ぼくと同じような子どもたちがたくさんいて、家にいるのと同じように、思い通りには行かなかったのだ。
使いたいおもちゃを友達と取り合いになると、ぼくはとても腹が立った。
他の誰よりも体が大きかったぼくは、やがて無理やりに友達からおもちゃを取り上げる事を覚えた。
運動場のブランコや他の遊具も力づくで、いつでも自分が使いたい時に使うようになった。
でも、先生にそれを見られるとこっぴどく叱られるので、先生の目の届かない時だけにした。
先生に言いつける友達は、一度ひどい目に合わせてやればあとはもうしなくなった。

小学生になってもぼくは相変わらず、家ではわがままの言い放題で過ごした。
小学校でも幼稚園の頃と同じように振舞っていた。
なんでも自分の思い通りにならないと気が済まなかった。
そして、腕力でぼくにかなうやつは一人もいなかったのだ。
自分の使いたいものを使いたくなった時にすぐに使う。
友達と意見が食い違うと言葉で黙らせる。
不満そうにしているやつは先生の目のない所で少し痛めつけた。 
中学校に入ってからは特定の生徒をいじめるのが面白くなっていた。
なんでもぼくの言う事を聞く同級生二人と一緒に、一人の男子生徒をターゲットにした。
ぼくが言った事に嫌な表情をした。
たったそれだけの事がきっかけだった。
机の中に蛇を入れたり、ノートを破ったり、教科書を隠したりした。
ある日、体育館の裏にその生徒を呼び出して、同級生の二人にそいつの腹を何度も蹴らせたり、毎日いろんないじめ方を考えた。
僕の両親は相変わらず甘く、何でも買ってくれた。
お金には不自由していなかったけれど、その生徒に親の通帳を持ち出させ、お金を引き出させたりもした。
そんなある日、その生徒が自殺したのだ。
大きなニュースになり、ある日僕の家に警察がやって来た。
その時初めてやりすぎたと思った。

  これは夢だろ?まさか夢ではなかったなんて言う事はないだろ?

目を覚ました。
ぼくはベッドの上だった。
カーテン越しの朝日が部屋を薄明るく照らしていた。
あれが夢だったと言う事がわかって、ほっとしながら体を起こそうとしたけれど自由にならなかった。
ぼくは自分の手を持ち上げ、目の前に持って来た。それはとても小さかった。
ドアが開くと女の人の声がした。
「ぼうや。目が覚めたのね」
そう言いながら彼女はぼくをベッドから軽々と抱き上げた。
ぼくは部屋にある鏡を見た。
女の人に抱かれているのは、ほんの赤ん坊のぼくだ。
そうか、そう言う事だったんだ。
ぼくがまだ生まれて間もない赤ん坊のある夜。
寝ている間に長い長い夢を見たんだ。
その夢はたった一晩の事だったけれど、夢の中では十何年もの時間が経過した。
夢の中で長い年月を送り、生活し、言葉を覚え、わがままを覚え、憎しみを覚え、意識は中学生にまで成長してしまった。
ぼくは今、十三歳の心を持ってはいるけれど、体はまだほんの赤ん坊だと言うわけだ。
これからぼくはどんな子供時代を過ごせばいいんだろう?
ただ、さっきまでの夢に見たような同じ間違いを起こすことはないだろうとは思う。
だけど、この世界が、夢に見たあの世界と同じ世界なのかどうかはまだ分からない。
母親に抱かれたまま、僕は隣の部屋に入った。
その部屋には大きな窓があった。

ぼくは窓の外の景色に目を見張った。



おわり



これは公募ガイドの「小説虎の穴」のテーマが「夢オチ」と言うのを聞いて、思いついたものですが、書き上げた時にはすでに締め切りを過ぎてしまっていたというあほらしい作品です。

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Commented by haru123fu at 2012-10-26 19:22
5枚かぁ~。。。でも、内容としては5枚は必要だよなぁ~!
ブツブツブツブツ独り言。
5枚ぐらいで迷っていたら女がすたる。。。かな?
朗読させてください。お願いします。(__)ペコリ
Commented by marinegumi at 2012-10-26 19:28
あ、haruさんこんばんは。

>ただし2~3枚で

と言うのを聞いてから書いた作品があるんですよ。
時間予約投稿してありますから、27日の朝7時には見る事が出来ます。
どちらでもお好きな方をどうぞ。
by marinegumi | 2012-10-25 21:35 | 掌編小説(新作) | Comments(2)