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海野久実が掌編小説やら短編小説を書いています。タイトルの後に原稿用紙換算の(枚数)があるのが小説です。


by marinegumi
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砂漠 (2枚半)

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見渡す限り、一面の砂漠に若者は立っている。
容赦なく照りつける太陽の下。
彼は汗もかかず、さわやかな笑顔のままあたりを見回していた。
時折砂塵と共に吹きすぎて行く熱風に彼の髪の毛がなびく。
彼の表情はおだやかで、その熱風がまるで心地よいそよ風でもあるかのようだ。
彼は水筒はおろか、何の装備も身に着けていない。
ジーパンに半袖のTシャツという軽装だ。
この日差しの下では短時間でひどい日焼けに見舞われる事だろう。
彼のいる周りには数十個の彼の足跡はあったが、それ以上は砂漠から続く足跡もない。
まるでたった今まで町の中にいて、いきなり砂漠の間ん中に放り込まれたかのようだった。
彼はポケットからコインを取り出すと、目の前の空間で手を離す。
するとコインは空中で消えてしまったのだ。
彼が何もない空間を指で指すと音らしい音のない砂漠に「ガコン」と言う大きな音が響いた。
若者は少しかがみ、低い位置からそれを取り出した。
よく冷えた350mlのコカコーラの缶だった。
彼はそれを気持ちのいい音を立てて開けると、うまそうに一口飲んだ。
そして二口、三口。
ふう~と息を吐いて、アルミ缶をクシャリと握りつぶす。
軽くげっぷをした。

彼の近くには半ば砂にうずもれた遭難した探検家の白骨があった。
その探検家が死ぬ前に繰り返し見たのがその若者の幻だった。
その幻が、探検家のあまりに強い思いのために、未だに砂漠の真ん中で繰り返し現れているのだ。

若者の幻は握りつぶしたコーラの缶を放り投げようと振りかぶった。
しかし思い直し、それをジーパンの後ろポケットに入れると、数歩あるいて蜃気楼のように消えた。



おわり



さっき書いたツイッター小説を即、2枚半の掌編小説にしました。
画像まで作って即アップです。

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by marinegumi | 2012-11-23 01:33 | 掌編小説(新作) | Comments(0)