「ほっ」と。キャンペーン

金色のブレスレット (2枚)

a0152009_1855477.jpg



初めて出来た彼女の誕生日だった。
何をプレゼントすればいいのか判らなかったので彼女を呼び出し、食事に行く前にアクセサリー店に入った。
高額な指輪なんかをねだられても困るなと少しドキドキしていた。
でも彼女は僕の懐具合も考えての事か、選んだのは一万円弱の金色のブレスレットだった。
もちろんイミテーションゴールドだ。
腕にそれをはめて顔の横に持ってきて、僕に見せた。
「どう?似合う?」
眩しい笑顔だった。
でも僕はその笑顔のむこうに違う人の笑顔を見ていた。
突然思い出してしまったのだ。

小学校の3年生だった。
教室で隣の席に座っていた君に誕生日にプレゼントをした。
金色の色紙(いろがみ)にコンパスで円を書き切り抜いて、カッターナイフで切りこみを入れてブレスレットを作ってあげたのだ。
それを腕にはめると僕に見せて微笑んだ。
「かわいい?」
そう言う君の笑顔に僕はわけのわからない気持ちを感じた。

その君が、それからわずか二週間後、交通事故で死んでしまった。
その時の自分の気持ちを長い間思い出す事が出来ないでいたのだ。
悲しかったのは悲しかったのだろうが、たぶんそんな感情を超えていたのかもしれない。
子供の頃の思い出として、自分の気持ちは封じ込めて大人になって来たんだ。

アクセサリー店でブレスレットのお金を払いながら、食事に行く店までの道を歩きながら、僕は思い出していた。
僕は紙のブレスレットをプレゼントした君の事が好きだったんだと。
今まで好きになった誰よりも君の事が好きだったんだと。
その思いが胸を締め付けた。
「ねえ、そんなに早く歩かないでよ」
後ろから声をかけられた。
振り向くと、見覚えはあるけれどよく知らない女性が微笑んでいた。




おわり




ツイッターでツイッター小説(ついのべ)を書いています。
4本以上、ほぼ毎日。
それに満足してしまい、ともすれば掌編小説を書くのを忘れてしまいます。
ちょっと意識して長い物も書かないといけないのかな。
ついのべで掌編に出来そうなものは、いつになくいっぱいありますからね。


ランキング参加してます。
クリックであなたに幸運が(笑)
    ↓
にほんブログ村 小説ブログ 掌編小説へ
にほんブログ村

人気ブログランキングへ
[PR]
Commented by haru123fu at 2013-01-09 19:33
>ちょっと意識して長い物も書かないといけないのかな。

そうです。そのとおりです。私が朗読できる程度の作品も書いて下さい。(笑)
昔の作家さんの旧仮名づかいとか、けっこう大変で。
舌をかみそうになったりしています。現代文はありがたいです。(^^ゞ
Commented by りんさん at 2013-01-10 15:32 x
封印していた気持ちがよみがえっちゃったんですね。
彼女は何にも悪くないのに、どうしようもない気持ちなんですね。
金色のブレスレットさえ選ばなければよかったのに…。
これも運命かな。
Commented by marinegumi at 2013-01-12 13:30
haruさんこんばんは。
ツイッターで書きためた作品で長く出来そうなのが結構ありますが、毎日ツイッターで新しく書いているので、時間的な問題がありますね。

ふふふ…
今度は一度旧仮名づかいの作品に挑戦してみませうか?
Commented by marinegumi at 2013-01-12 13:34
りんさんこんにちは。
封印してしまった気持ち。
たくさんありますねー(笑)
小学生の頃の初恋の相手が今までで一番好きになった人だと言うのもある意味本当ですね。
初恋独特の甘酸っぱさが忘れられないと言うかね。
Commented by かよ湖 at 2013-01-13 16:13 x
海野さん、あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
お話を読んで、私の昔の引き出しも少し開いたような気がします。最近、甘酸っぱい感覚を忘れていたので…。
死はイヤですけど、いい思い出との出会いですね。
Commented by marinegumi at 2013-01-14 20:43
かよ湖さんこんにちは。
ことしもよろしくお願いします。
毎晩ツイッター小説を書いているとそれが当たり前になってどんどんお話の種がたまっていますよ。

そうですねー
甘酸っぱい思いのお話もどんどん書きたいですね。
Commented by 春待ち りこ at 2013-01-21 22:42 x
想い出には勝てませんよね。。。
ましてや、こんな想い出を前にしたら
リアルはかすんで見えてしまう。。。
彼女にとっては。。。そこは。。。
決して開けてはいけない引き出しだった。。。
金のブレスレットが鍵だということを知らなかったのが運のつき?
うっ。。。何が災いするかわからないですよね。コワイ。。。

毎晩、ツイッターで楽しませていただいてます。
先日の雪だるまのお話。。。
お父さんとお母さんを作ったはずが。。。というお話が
とっても気に入ってしまって、その夜の夢に出てきました。。。
弟と妹。。。(笑)
いつもありがとうございます。
Commented by marinegumi at 2013-01-23 09:20
りこさんこんばんは。
解ってもらえますか(笑)
彼女がいるのに子供の頃の思い出に縛りつけられている。
女の人にはそんな事は少ないのかなと思っていたんですが。

>先日の雪だるまのお話
雪だるまが夢の中に出て来るお話が夢の中に出てきたわけですね。
二重構造の夢。
これって絵本にでもするといい感じかな。
by marinegumi | 2013-01-09 19:05 | 掌編小説(新作) | Comments(8)