まごまご魔女 (5枚)

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ある森の奥深くひとりの魔女が住んでいた。
魔女の名前はマルゴ。
自分が何歳かさえ思い出せないと言う。
それぐらい長生きしている魔女なのだ。

魔女はホウキをどこに置いたか判らなくなった。
確か、ドア近くの壁に立てかけたはずだ。
掃除には大事なホウキは使わない。
魔法で部屋に風を起こし、ゴミを外へ吹き出す。
その時にホウキが一緒に飛ばないように部屋の奥に片付けようと思ったのだ。
それが記憶の場所にない。
魔女は外へ出るドアを開けて見た。
なんとホウキは小屋の外壁に立てかけてあったのだ。
「どうも最近、自分のやる事が自分でもよくわからんわい」
そうぶつぶつ言いながら魔女はホウキを部屋の隅のホウキ掛けにかけると、掃除の魔法の呪文を唱えた。
「トルノキトレキラマゴマゴマネリ。部屋のゴミよ外へいでよ!」
気が付くと魔女は小屋の外にいた。
いや、外のように見えてはいるがそこは部屋の中だった。
ドアを開けると世界が小屋の中にあり、ドアの外側が小屋の内側になっていたのだ。
恐るべし魔法の力。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

魔女は「ヘンゼルとグレーテル」と言う童話を読んで自分もお菓子の家を作りたくなった。
それではさっそく魔法で……
と、そう簡単にはいかない。
一見お菓子に見える材料で作った家ならすぐに出来るけれど、本物のお菓子を作った事のない魔女には魔法でそれを出す事は出来なかった。
まず作り方をちゃんと知っていないと魔法と言えどお菓子を出せはしない。
夜中に街までホウキに乗って出かけて行き、図書館に忍び込み、お菓子作りの本を借りた。
宿直室で眠っている司書を眠ったまま歩かせ、ちゃんと貸出カードを作らせ、正規に借りたのだ。
まあ、あくる日に貸出時間を見て、その司書は目を丸くする事だろうが。
こっそり持ち出して、こっそり返しておけばいいのだが、魔女にはそんな律儀な所があった。

それから二週間ほど、本を頼りにいろんなお菓子を実際に作ってみた。
家の外壁にするには長方形のクッキー。
屋根のカワラにするにはサブレ。
煙突にはバウムクーヘン。
窓にはポッキーを組み合わせて、ゼリーでガラスを作る。
ドアーは板チョコで、ドアノブはドーナッツ。
外側をホイップクリームで飾り付けるのだ。
まず普通の大きさのお菓子を作ってみてちゃんとおいしく出来たなら、今度は魔法で大きなサイズを大量に作るのだ。
材料がそろえば、あとは簡単。
あっという間に魔法の力で組み立てられる。

魔女は自分でもほれぼれするお菓子の家に満足だった。
ひょっとしてヘンゼルとグレーテルのような子供がやって来ないだろうかと考えた。
森のはずれまで歩いて行き、膝を抱えて村の方を何時間も眺めていた。
「まあ、そんなに早く誰も来る訳ないわな」
そう言うと「よっこらしょ」と腰を上げ、お菓子の家まで帰って来た。
するとあんなにおいしそうに出来上がった色とりどりの家が真っ黒だった。
日が暮れているとはいえ、あまりにも黒かった。
魔女が近づいて見るとそれは蟻(アリ)の群れだった。
数えきれない蟻がびっしりとお菓子の家を覆っていたのだ。
「トメノぺトルキネマゴマゴマネリ。蟻よ、去れ!」
魔法で追い払った後には、ぼろぼろのお菓子の家。
間もなくそれは音をたてて崩れ落ちた。
「蟻除けのおまじないを忘れておったわ……」



おわり



ツイッター小説を元に書きました。
僕は、ツイッター小説とは言え、ちゃんと落ちのあるショートショートを心がけて書いています。
だからちょいと魔法で引き延ばせば、ほら出来上がり。

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Commented by haru123fu at 2013-01-31 17:27
ふふふっ!ホント魔法みたいですね。
なんだか可愛い魔女さんです。こんな魔女さんの所へだったら
アリが来る前に子どもたちに行って欲しかったですね。

朗読よろしいでしょうか?お願いします。
Commented by haru123fu at 2013-01-31 17:53
追伸
>しかしそこはよく見ると小屋の中でもあったのだ。
ドアを開けると世界が小屋の中にあり、小屋の外側が小屋の内側になっていたのだ。

スミマセン。。。理解力不足で意味がつかめませんでした。
Commented by marinegumi at 2013-01-31 18:24
haruさんこんにちは。
朗読宜しく。

もうちょっとわかりやすいように書き直しました。
要するに、魔女の家のドアを境にして中と外が入れ替わってしまったんです。
ゴミだけを外に出すはずが、家の内側を全部外に出してしまったので、家の中に世界が入ってしまったということですね。
Commented by りんさん at 2013-01-31 18:55 x
人間味あふれる魔女さんですね。
何が面白いって、お菓子を手作りするところですよ^^
魔法使わないのかよ!ってツッコミが入りそう(笑)
まあ、よくよく考えれば蟻がたかりますよね。
お菓子なんだもん。
面白かったです。
Commented by marinegumi at 2013-01-31 20:33
りんさんこんばんは。
長生きしすぎて、そろそろボケてきた魔女のシリーズです。

>お菓子を手作り
魔法といえども知らない物は作れないと言う縛りを設定しているんですよね。
見た感じだけお菓子でいいなら魔法でも可能なんですが、食べてもおいしい家でなければと魔女はこだわったんでしょうね。
本物のお菓子を買ってきて、小さな家を作ってそれを大きくすると言う方法も有ったんでしょうが、なんせボケて来てますから、そこまで思いつかなかったという感じ。
Commented by かよ湖 at 2013-02-04 00:16 x
律儀な魔女さんですね。
家のパーツのお菓子の説明は本当においしそうで、想像しながら楽しく読みました。
メルヘンの可愛らしいラストを期待していたのですが、……そっか、海野さんの作でしたね。(笑)
Commented by marinegumi at 2013-02-06 10:40
かよ湖さんこんばんは。
>律儀な魔女
そうですねー
魔法なら何でもできると言うのはあまり面白くないと思うんですよね。
何か制限を設定しないと。
で、作り方を理解してない物、知らない物は魔法で出しても外観だけで本物じゃないと言う事にしました。
by marinegumi | 2013-01-30 18:47 | 掌編小説(新作) | Comments(7)