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レモンライム (4枚)

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おしゃれなショットバーの椅子席で彼女は待っていた。
ピンクのお酒を前にして何となく居心地が悪そうにしている。
それは僕も一緒だった。
二人きりでお酒を飲む店に入るのは初めてなのだ。
それも、夕方とは言え外はまだ明るい。
彼女は僕の服がぬれているのに気がついた。
「あ、雨が降って来たの?」
「そうだよ。空が急に薄暗くなってさ、もうすぐ本格的に降りそう」
その時、ウエイトレスがやって来た。
「ご注文はお決まりですか?」
「あ、そうだなー」
そう言いながら僕はメニューを広げた。
その時、雨音が大きくなったと思うと店の窓の外が白く光った。
数秒後にびっくりするような雷の音がした。
彼女もウエイトレスも外を見ている。
歩道に雨の粒が白く跳ねていた。
ウエイトレスが向き直ったので、僕はメニューのチューハイの写真を指差して言った。
「レモンライム」
その時ウエイトレスが「プッ!」と噴き出した。
「ご、ごめんなさい」
そして笑いながら僕の肩をゆるくポン、と叩いて行ってしまった。
彼女の目がマジになった。
「知ってる人?」
と聞いた。
「い、いや。知ってる訳ないだろ?初めての店だし」
「じゃあ、なんであんなに馴れ馴れしいの?」
彼女の顔が見る見る曇って行く。
さっきの夕立の来そうな空のようだ。
本当に訳が解らないので僕はうろたえていた。
その僕の顔を見て彼女は誤解したらしい。
「わたし帰る!」
そう言うといきなり立ち上がり、殆ど飲んでいなかったピンクのお酒を一気に飲み干すと、小走りに出て行ってしまった。
あっけに取られていた僕は気を取り直し、彼女の後を追う事にした。

傘を持っていなかった彼女は駅前のフルーツショップのテントの下で暗くなった空を見上げていた。
そっと近付いてまた走り出さないように彼女の服の袖をつかんだ。
一瞬それを振りほどこうとしたけれど、思い直したのか僕に横顔を見せて目を伏せた。
言い訳を「聞くだけなら聞いてやる」そんな感じの横顔だった。
「ちがうんだよ。あのウエイトレスが笑ったのは」
彼女はもじもじしている。
「いい?僕が飲み物を注文するときに雷が鳴ったろ?僕がメニューを指差して『レモンライム』って言ったのをあのウエイトレスってさ、『レモン雷雨』って聞きちがえて、僕がダジャレを言ったと思ったんだって」
彼女の顔が赤くなった。
「あの人に聞いてきたの?」
もう笑顔だ。
「そうだよ。だって何であんな態度するのか、ぜんぜん訳わかんないんだもん」
彼女はフルーツショップに入るとレモンを3個買った。
二人で並んで歩きだすと、間もなく雨は上がり、空には星が見え始めていた。
彼女は濡れた歩道を走って僕との距離を少し開けた。
そして急に立ち止まり振り返ると、袋の中のレモンを掴み、一つを僕にぶつけた。
「レモン雷雨だ!」
それは僕の胸に当たった。
彼女はあのピンクのお酒を一気に飲んで走ったもんだから酔っているらしい。
足もふらついている。
「痛いだろ。やめろよ!」
二つ目を取り出した。
「レモン雷雨を食らえ!」
二つ目は外れ、三つ目は右手で受け止めた。
ひとつふたつと、僕はレモンを拾い、部屋に帰ってから二人でレモンティーを飲もうかと考えていた。



おわり



ひさびさに、もとツイッター小説ではない物を書いてみました。
と言っても、ツイッター小説を犬の散歩中に考えてると、どんどん長くなったと言うだけの事です。
パソコンの前で考えたとしたら140文字以内になっていたわけですね。

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Commented by haru123fu at 2013-02-23 11:15
可愛らしいお話。。。朗読いいですか?。。。でも、可愛らしい声がもう
出せなくなりました。(';')ショボン
Commented by marinegumi at 2013-02-23 11:54
haruさんおはようございます。
はいはい、朗読お任せします。
十分かわいい声は出てますよ。
ただちょっと声が裏返るところだけ気を付けてね(笑)
たった今少し修正しました。

こんなかわいらしい恋の話いいなー
キュンキュンしながら書きました。
Commented by りんさん at 2013-02-25 19:23 x
すごく可愛い彼女ですね。
勘違いでヤキモチ焼いたり、レモンを投げつけたり。
素直で可愛い。
ちょっとしたショートムービーになりそうですね。
Commented by marinegumi at 2013-02-25 22:01
りんさんこんばんは。
いいですねー
かわいいですねー
こんな彼女が過去にいたらどんなに良かったでしょう。
ショートムービーの主役は…
と考えたんですが、相武紗季の顔がぽっと浮かびました。
まてよ、もっとふさわしい女優さんがいる様な気がするんですが相武紗季しか浮かびません。
しか、ってなんか失礼かな。
相武紗季は好きなんですけどねー
なやむ―(勝手に悩めば…)
by marinegumi | 2013-02-22 22:50 | 掌編小説(新作) | Comments(4)