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海野久実が掌編小説やら短編小説を書いています。タイトルの後に原稿用紙換算の(枚数)があるのが小説です。


by marinegumi
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60年後に再び (5枚)

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私たち一族は私が会社経営で手に入れた莫大な富によって製造した亜光速の宇宙船に乗って新天地を目指した。
私は私の一族に誓ったのだ。
お前たちだけの星を持たせてやると。
そして、それがいよいよ叶おうとしていた。
地球を発ってから8年。
光速に近いスピードで飛び続けたわが宇宙船は緑豊かな星の軌道上にあった。
星を周りながら地球時間で一週間、20数回観測を続けた。
地球にとてもよく似ているが知能の発達した動物は発見されなかった。
着陸船で数名ずつその星に降り始めて最後に私だけが残された。
いま、自動操縦で帰ってきたばかりの着陸船がこの船にドッキングを終えたところだった。
乗り込もうとハッチを開けるとそいつの姿があった。
「お、お前は!」
「やあ、お久しぶりで」
悪魔はおどけた調子で言った。
「なんで着陸船に乗っているんだ?」
私が聞くと彼は船をあちこち見渡しながら私の前を通り過ぎて止まった。
くるりと振り向く。
「地球からやって来たらちょうど着陸船が見えたので乗せていただきました」
「それでお前が何の用なんだ?」
「お約束通り魂をいただきにね」
「馬鹿を言うな。まだあれから35年しか経っていないぞ。約束まではまだ25年ある!」
私が巨万の富を築くことが出来たのは悪魔との契約のおかげだ。
私が20歳になったばかりのある日、そいつが現れ、私の願いを聞いた。
そして60年後の魂の譲渡と引き換えに人生の成功を手に入れたのだ
「うーん、そうですがね。地球ではもうすでに契約の期限は過ぎておりますです」
それは判っていた。
光速に近いスピードで航行するこの宇宙船の時間と地球で経過する時間には、ずれが生じる。
私たちの時間ではまだ、私がこの悪魔と契約をしてから35年だが、地球では約束の60年が過ぎているのだった。
わたしは悪魔というものは地球という存在と切っても切れないものだという思いがあったのでまさかこんな異星にまで現れるというのは計算外だったのだ。
計算外ではあったが、わずかにそういう不安も抱えてはいた。
「見ての通り、私はまだ55歳だ。お引き取り願えませんか?」
そう私が言うと、それまでずっとにやけていた悪魔は急に真顔になり、私の肩を鷲掴みにした。
周りの景色が一瞬光の線に変わったと思うと私は地球にいた。
そこは悪魔との契約後、すでに60年が経過した地球だった。
街は著しい変化を見せていた。
私の住んでいた街だと言うが、殆どの建物が高層ビルとなり、見た事のない乗り物が空をものすごいスピードで飛びまわっていた。
「お前が持っていた会社は、お前が身を引いてからもさらに発展を続けたのだ」
悪魔はそう言いながらひときわ高くそびえ立つビルを指差した。
「あれが本社ビルだ。そうだなー、いま目に見えている自己浮遊車の半分はお前の会社の製品だぞ」
「それがどうした?私が人を見る目があったと言う事だろう?」
「この街の変わりようを見ろ。もう60年は過ぎたのだ」
「大人しくお縄をちょうだいしろと言う事か?」
私はポケットから紙きれを取り出した。
それはかなり黄色く変色はしていたが、紛れもなく悪魔との契約書だった。
「同じ物を、お前も持っているはずだが……ここを読め」
そう言いながら差出したが悪魔はそっぽを向いていた。
「契約期限についてはこうだ。[私が今日から60年間生きた後]となっているだろう?私はまだそんなに生きてはいない」
悪魔はにやりと笑った。
「あのときは変わった文章を書くやつだと思ったが、やはりこれを見越していたのだな。気がついたのは契約を交わして15年後だった」
「そうだよ。恐らくあんたは私の会社が亜光速宇宙船用エンジンの開発に乗り出した時に気がついたのだろ?」
「ふん。あと25年なんて俺には一瞬の事さ」
唐突に少しのめまいを感じ、気がつくと私は宇宙船から着陸船に乗ろうとしているところだった。
中へ入ると座席に座り、あとは自動操縦に任せた。
亜光速宇宙船は軌道をずっと回り続ける。
夜には一つの大きな星のように輝くだろう。
下での生活に、これに積んである物や機材が必要になれば、また取りに戻って来ることもあるだろう。

着陸船は新しい世界を目指してエネルギーを数秒間噴射した。
「私の思惑ではこれからの25年よりだいぶ前に、わが社の新しいワープ航法エンジンを搭載した宇宙船がクローン製造機を運んでくる計算だ。私が違う体に入っているとしたらどう思うかな、あの悪魔は。それとももう気が付いているのかも知れん」

  私が今日から60年間生きた後
  私のこの体に宿る魂を引き渡す事に相違ありません

契約書にはそう書いてある。







おわり





もちろんツイッターで書いた物が元になっています。
なんかツイッター小説をすべてワードにコピベしているんですが、物凄い数です。
なんだか小説のアイデアの宝庫みたいな気がしている今日この頃。

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Commented by haru123fu at 2013-03-02 20:37
朗読させてもらいたい作品が沢山。。。
もう少し体力が回復したらお願いにきますね。
Commented by marinegumi at 2013-03-02 22:21
haruさんこんばんは。
あまり無理せずに十分休養を取って栄養を摂って健康に気をつけながらやっていきましょうね。
毎日毎日頑張ってるのを見ているとかえってハラハラしますからね。
ゆっくりゆっくり。
by marinegumi | 2013-03-01 21:53 | 掌編小説(新作) | Comments(2)