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フィルム (3枚)

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少年はおじいちゃんの残したカメラを見つけた。
物置の段ボールの中の古い道具の中にそれはあった。
カメラはデジカメではなく、フィルムを入れて撮影するカメラだった。
フィルムの巻き上げも電動ではなく指で巻き上げるものだ。
巻き上げは最初の2、3回は重かったものの、すぐに軽くなり、シャッターも軽快に切れた。
ファインダーを覗きながらレリーズボタンを押すと一瞬視界が暗くなってシャッターが切れる。
いわゆる一眼レフカメラだった。
レンズは28ミリ~200ミリの望遠レンズがついていた。
少年はそれを両親に言って自分の物にしてもらった。
「それフィルムを入れなくちゃ写らないわよ」と、お母さん。
「いまどきフィルムなんて売ってるのか?」と、お父さん。
「いいよ、別に写らなくたって」と、少年。

少年は毎日のようにカメラを持ち歩いた。
街の風景をカメラのファインダーで切り取り、シャッターを切る。
隣の庭の花を、昼寝中のネコを、水たまりに写る空の雲を、そのファインダーにとらえ、シャッターを切るのだ。
それは心ときめく瞬間だった。
広角でとらえた広い空間。
望遠でとらえた柔らかい映像。
少年はすでにカメラマンだった。
フィルムのないカメラを持つカメラマンだ。

ある日、少年は道路際で自動車を撮っていた。
いろんな種類の車をその動きに合わせて流し撮りをしていた。
背後の風景は流れ、自動車はくっきりと写る。
その時、横断歩道を渡る一人の少女が目に入った。
少年はその少女にレンズを向け、ファインダーにとらえる。
「かわいい」と、少年はつぶやいていた。
軽やかに長い髪の毛をなびかせて歩く、笑顔の少女。
何度もシャッターを切った。
その時、大きなトラックが現れ、少女を一瞬のうちに跳ね飛ばす。
少女は血だらけになって道路に横たわった。
少年はカメラを持ったままその場に立ち尽くすだけだった。

少年が撮影した写真は一枚もフィルムには残っていない。
しかし、彼の心のフィルムに焼き付けられたあの少女の映像はいつまでも消えなかった。




おわり



ちょっと残酷でしたね。
この少年は将来カメラマンになりたいと思っていたのかもしれませんが、もうカメラを見るのも嫌になっているのでしょうか。
いやいやそうとは限りません。
この少女が死んでしまったとは書かれてないでしょ?
ひょっとして少年が急いで公衆電話から救急車を呼び、少年が同乗して少女は病院へ運ばれ、命を取り留めたかもしれません。
そして少年と少女は大きくなり……
少年はよきパパとなり、子供を毎日のようにデジカメで撮影をしている。
それを見守る女性は……

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Commented by りんさん at 2013-03-04 19:11 x
ファインダー越しに事故を見ちゃったら、それはショックでしょうね。ぜったいトラウマになりますよ。
あ、でも少女は助かった可能性もあるのか。
ちょっと安心。。。
Commented by marinegumi at 2013-03-05 10:51
りんさんこんばんは。
あまりの結末に(自分で書いててねぇ)ちょっとフォローしたくなってしまいました。
ちなみに僕は衝撃の瞬間をファインダー越しに見たことはありません。
by marinegumi | 2013-03-02 22:07 | 掌編小説(新作) | Comments(2)