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タイムマシンと卵焼き (2枚)

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そのタイムマシンは卵の形をしていた。

わたしが草原を歩いているときに足元に丸い影が映ったんだ。
目を上げると、風でさらさらと草の穂が揺れている少し上に、ふわりとそれは浮かんでいた。
その大きな真っ白い卵は音もなく横半分にひび割れ、パカンと開き、中からお母さんが出て来た。
わたしにはその卵がタイムマシンだということがなぜかわかった。
おかあさんはにっこりとほほ笑み、わたしにハンカチで包んだものを差し出した。
「はい、お弁当よ。忘れちゃダメじゃない」
そう言ってお母さんは黄色いオシロイバナのようにほほ笑んだ。
すぐにタイムマシンは元通りに閉じると風に吹き消されるようにゆらりと見えなくなってしまった。
わたしはあまりに突然のことに一言も声を出せなかったんだ。

草原にそのまま座って、お弁当を開いた。
いろんなおかずの中の卵焼きを一つ頬(ほう)ばる。
おいしかった。
食べていると卵焼きがしょっぱくなった。
涙が知らないうちにこぼれていたんだ。

あれは亡くなるずっと前の若い頃のお母さんだった。
何もしゃべれなかったのが悔(くや)しくてまた涙が出た。
泣きながらお弁当をただ食べ続けた。
あとにして来たはるか遠い地球のことを思いながら。




おわり



「こえ部」で朗読していただきました。
タイムマシンと卵焼き 深海☆umiさん
「こえ部」と同時投稿です。
というか、「こえ部」に投稿して、ちょっと考えてブログにもという感じです。

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Commented by haru123fu at 2013-04-02 18:52
こえ部での朗読聴かせてもらいましたよー!
うん。すごく可愛くて優しい朗読に。
作品が一段と光ましたね。そうなんですよね。朗読することで
作品に命が吹き込まれるようなそんな朗読が大切ですね。
勉強になります。
Commented by marinegumi at 2013-04-03 10:03
haruさんこんにちは。
この朗読はとてもいいですよね。

>そのタイムマシンは卵の形をしていた。

の後に一拍あって、音楽が始まる感じも素敵です。
まるで泣きながら読んでるんじゃないかと思う後半が特に胸に迫りますね。
こう言うのを聞かされると文章何て言うのは音声化、動画化されて初めて完成するのかなと、ちょっと無力感を感じたりしますが、いやいや、文章でなければいけない物も絶対あるんですけどね。
Commented by 齊藤想 at 2013-04-06 07:51 x
これ、最初の一行がとてもいいです。
タイムマシンと卵という異色の組み合わせが、読者を(こえ部の場合は聴衆でしょうか)引き付けてくれます。
海野さんらしい、不思議な感じがする物語だと思いました。いいなあ、こういう感じの作品って。
こえ部はオンライン声優スクールを開校もしているのですね。
レベルの高さに納得です。
Commented by marinegumi at 2013-04-06 13:14
斎藤さんおはようございます。
ありがとうございます。
すてきな朗読になったので、ぜひ聞いていただきたくて押し売りしてしまいました。
最近は毎晩最低4本はツイッター小説を書いています。
それがどんどん小説の元になっている感じですね。
この作品もそうです。
by marinegumi | 2013-03-31 17:50 | 掌編小説(新作) | Comments(4)