約束(2枚)

a0152009_11243852.jpg

二人は霧でぼんやりかすんだ道を歩いてきた。
彼女はしっかりと僕の手を握っている。
やがて霧は少しづつ晴れて行き、一面のお花畑が見えてきた。
手前には簡単に飛び越せそうな小川が流れていた。
二人にはこの川を越せば向こう側なのだということが解った。
「三途の川なんていうものはなかったようだね」
僕が言うと、彼女は震える声で答えた。
「そうみたいね」
「いよいよあっちへ行くんだね僕たち二人で」
彼女は何も言わないでお花畑を見ている。
彼女は不治の病に侵されていた。
僕たちは一緒に死のうと約束をしていたので、もう一度その約束を確かめ、今日一緒に死んだのだ。
ふと彼女の顔の向こうの景色が彼女の皮膚を通して見えているのに気が付いた。
次第に彼女の体が透明になって行くのだ。
「さようなら」
彼女はそう言った。
え?どういうこと?
「あちらでお父様がわたしのクローンを作ってくれることになってたの。私はまだまだ生きられるのよ。あなたより好きな人がいたし。ほんとにごめんなさい」
消えてしまった。
彼女の手のぬくもりがまだ残っていた。
どうしてだ?
彼女は決して嘘をつくような人ではなかったのに。
そして思い出した。
「今日は4月1日じゃん」



おわり


これはたしかTome館長さんのコメント欄に書いたものですね。
こちらです。
Tome文芸館約束
ちょこっと手を入れて4月1日にふさわしいものにしました。

ランキング参加してます。
クリックであなたに幸運が(笑)
    ↓
にほんブログ村 小説ブログ 掌編小説へ
にほんブログ村

人気ブログランキングへ
[PR]
Commented by curatortome at 2013-04-01 14:32
せめて4月1日くらい、嘘をつかずに過ごしたいな。
Commented by marinegumi at 2013-04-01 18:35
Tome館長さんこんにちは。
>4月1日くらい、嘘をつかずに過ごしたいな
20歳になったら酒タバコやめようか
なんていうのも似たような冗談ですね。
Commented by りんさん at 2013-04-02 16:34 x
最後が急に軽くなって、ああ、これは暗い話じゃなかったと気づきました。
これって、二通りの解釈が出来ますよね。
1.彼女が最後に悲しいウソをついて、ひとりであの世に行く。
2.一緒に死のうとウソをついて彼だけを死なせる。
私は1だと思うんだけど、どうですか?
Commented by marinegumi at 2013-04-02 18:03
りんさんこんにちは。
あー、やっぱりリンさんは優しいですね。
でもでも、僕が考えてたのは2番です(笑)
だってもう二人は自殺しちゃってますから。
彼が帰ろうと思っても帰れない。
彼女は彼女の記憶を持ったクローンが生きているので彼女の魂はそっちに吸収されてしまうという感じかな。
by marinegumi | 2013-04-01 11:27 | 掌編小説(新作) | Comments(4)