子猫救出作戦 (6枚)

わたしとダンシリーズ 3

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わたしはカノン。
船の事故で歩けなくなってから、パパが買ってくれた要人警護用のロボットと一緒に暮らしている。
わたしはそのロボットに「ダン」と言う名前を付けた。
パパは仕事で、ママは趣味でいつも忙しくて、殆ど私の事はほったらかし。
ダンに任せておけば安心だと思っているんだから。
しばらく休んでいた学校にまた行くようになって数カ月が過ぎた。


学校からの帰り道。
わたしはいつものようにダンにお姫様抱っこされている。
10ブロック程歩いた所の車の行き交う十字路を、一匹の子猫が走り抜けるのが見えた。
わたしは思わず「危ない!」と叫んでいた。
何とか車に轢かれることなく歩道にたどり着いたと思うと、更に橋の方へ走り続けた。
わたしとダンは後を追いかける。
橋の上も交通量が多いんだ。
見ていると子猫は、なんと橋の手すりの外側のわずかなスペースを歩き出した。
歩いて行く先の方はさらに狭くなる。
そして、子猫は気が付いた。
体をひねってUターンが出来ないと言うことに。
立ち止まってあたりを見回している。
橋の向こう端ははるか何百メートルも先で、さらに狭くなっている。
もうそれ以上進めないようだ。
私たちは子猫のいる場所まで走り、手すりから下を覗き込んだ。
ダンは私を橋の上に降ろして手すりに掴まらせてくれると、子猫に長い腕を差し出す。
猫はダンの姿に驚いてじりじり後ずさりをして、後ろ足を踏み外し、落ちそうになった。
橋の下は川だけれど、それまでに橋の構造物がいくつも張り出している。
もしも落ちて加速度が付いてぶつかるといくら身の軽い猫でも助からないだろう。
奇跡的にどこかに引っ掛ればいいのだけれどそれはたぶん望めない。
橋は鋼鉄製なので爪が立たないと思う。
ダンではだめだ。
そう思った私はダンに私の服のベルトを持たせた。
そのまま体が横になった状態で猫の方へ降ろしてもらった。
あまりの高さに背筋が冷たくなった。
頭の中で自分と子猫が落ちて行く映像がフラッシュバックした。
でもダンは絶対私を落としたりはしないと思い直すと落ち着いた。
「さあ、いらっしゃい。猫ちゃん」
私は子猫に呼びかけた。
出来るだけ優しく話しかけた。
「うちにも猫ちゃんがいるのよ。名前はカノン。私と同じ名前のね」
すると子猫はまるで透明な紐が付いてでもいるように歩き寄って来て私の手の中に納まった。
橋の上に引き上げられて一安心すると子猫の小さな体がひどく震えているのに気が付いた。
「もう大丈夫よ。私のおうちに来る?」
子猫の耳元で囁くといくぶんその震えが治まったような気がした。

その時、一台の車がすぐそばに停まった。
中から出て来たのはわたしと同い年ぐらいの女の子だった。
運転席にいるのは、その母親のようだ。
「お前は本当に、しょうがない猫ね。何で逃げちゃうわけ?」
女の子はそう言いながらわたしの方へ近づいて来た。
ブランド物の子供服を着た、可愛いけれどちょっと生意気そうに見える女の子だ。
「捕まえてくれてありがと」
女の子はそう言うとわたしから子猫をひったくるようにして自分で抱え、車から降りて来る母親を振り返って言った。
「ママ~もういやだわ、こんな猫。ロボット猫に買い替えてもいい?」
頭にきた私はダンに抱っこされたまま、その子に近づいた。
「何、かわいそうなこと言ってるの?」
わたしはそう言いながら、女の子の顔を思いっきりぶってやった。
女の子は頬を手で押さえて、きょとんとしている。
「一度飼い始めたんだったら最後までちゃんと面倒見てやんなさいよ!その子は生きてるんだからね!」
わたしはそう言いながら、涙が溢れるのを止められなかった。
女の子は母親に駆け寄った。
わたしとダンの方を見て二人で何かを話している。
母親が近づいてきた。
「あなたたちカノンさんとロボットのダンですね」
と彼女は言った。
「ええ、そうですけど」
「あの子がテレビで見て、すっかりあなたたちのファンになったんですよ」
「わたし達の?!」
「ええ。ロボットと美少女探偵コンビのね。あなた達がそうだって、ぶたれてから気がついたんですよ。あの子、何て言ってたと思います?あなたにぶたれて」
「怒ってらっしゃる?」
「いえいえ、ますますファンになったって。『かっこいいわ!』何て言ってね」
わたしは呆れて、その女の子に手を振ってあげた。
「恥ずかしがらずにこちらへいらっしゃい」
と、母親は女の子を呼んだ。
「さ、お友達になっていただきなさいな」
女の子はおずおずと手を差し出した。
わたしはその手を握り返す。
「私はカノンよ。よろしく」
「私は花蓮(カレン)て言うの。ペケを大事にするわね」
ペケ。
それがその子猫の名前だった。




おわり




事故で足の不自由な少女カノンと要人警護用ロボットダンの物語の第三弾です。
この作品の元になったのはツイッターで毎日のように書いている物です。
この作品中に「ロボットと美少女探偵コンビ」と言う言葉が出てきますが、これはツイッターで書いたエピソードに、二人が殺人事件を解決したり爆弾テロから人々を救ったりと言うエピソードがあるからです。
二人はテレビのニュースで取り上げられたりして、ちょっと有名になっています。

このシリーズは何しろ毎日のように書いているので、どんどんエピソードが貯まっていますよ。
ちゃんと全部この作品の様に書き直せば単行本2~3冊ぐらいになるかもしれませんね。

わたしとダンシリーズ 1  わたしのロボットたち

わたしとダンシリーズ 2  猫のカノン

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by marinegumi | 2013-06-05 21:48 | 掌編小説(新作) | Comments(0)