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ヘンゼルとグレーテルがんばる (5枚)

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グレーテルは魔女を後ろから思いきり突きとばしました。
火のついたかまどに転げ落ちた魔女は雷のような悲鳴を上げると、そのまま焼け死んでしまったのです。


グレーテルはヘンゼルが入れられている鳥かごのカギを開けました。
「ありがとう、グレーテル。さあ、早くお家に帰ろう」
「でもどうやって帰るの?お家がどっちにあるのかもわからないし」
「大丈夫だよ。何日かかっても、きっと帰ることが出来るさ。食べ物はいっぱいあるからね」
ヘンゼルはお菓子の家をゆび指しました。
グレーテルは魔女のお菓子の家の壁を細かく壊して袋に詰め込みます。
ヘンゼルは部屋の中を調べました。
薬草の束や瓶に入った粉や毒薬らしい物。
使い道の判らない色んな道具もありました。
その中からひとつだけ選んでポケットに入れました。

ヘンゼルとグレーテルは森を歩き続けました。
お腹が減ると袋の中のお菓子を少しずつ食べ、何日も何日もかけて歩き、やっと自分たちの家にたどり着いたのです。
お菓子がなければ、間違いなく森で飢え死にしていたことでしょう。

家のドアを開けるとやせ細ったお父さんとお母さんが大喜びで二人を迎えました。
「あれからお前たち二人のことが心配で、パンものどを通らなかったんだよ」とお父さんが言います。
「と言っても、もうパンも残ってないんだけどね」と、お母さん。
その夜は家族四人でヘンゼルとグレーテルが持って帰ったお菓子の残りを食べました。
するともう食べ物が何もないのです。
その夜、お父さんとお母さんは、またまたヘンゼルとグレーテルを森に置き去りにする相談をしました。
困ったことに他にいい考えがどうしても二人には浮かばなかったのです。
それを隣の部屋で聞きながらヘンゼルは考えました。
魔女の家にはお金になりそうな物が何もなかったのが不思議だったのです。
魔女なら何か宝物を持っているはずです。
どこか見つけにくい場所に隠していたのかもしれないと気がついたのです。

あくる日、ヘンゼルはお父さんとお母さんが二人を森に連れて行こうとする前に自分から言いました。
「僕たちはもう一度森へ行きます」
「そ、そうかい?お前たち、森へ行ってどうするつもりなんだ?」
三度も二人を森に置き去りにする事しか考えられない両親のあまりの知恵のなさにいやけがさしていた二人は適当な返事をして森へと出かけました。

森の奥深くの魔女の家はどこにあるのでしょう?帰って来るときも散々歩き回り、何日もかかったと言うのに、再びたどり着けるのでしょうか?

ヘンゼルは森の入り口を少し入った所で小鳥の死骸を見つけました。
「ほら、ここに小鳥が死んでるだろ?」
その死骸を拾うと、持って来た袋の中に入れました。
少し歩くと、また別の小鳥の死骸がありました。
それも袋の中へ入れます。

そうなのです。ヘンゼルは魔女の家から帰るときにポケットに入れた毒薬に、お菓子のかけらを浸し、落としながら帰って来たのでした。
その毒入りお菓子を食べた小鳥たちの死骸が道案内をしてくれていると言う訳です。
いつかパンくずを小鳥に食べられてしまい目印を失った事を思うと、ヘンゼルは、してやったりという気持ちになりました。
家に帰って来るときに迷いながら歩いた道をもう一度通るので、また何日もかかるのは覚悟の上です。
次々に死んでいる小鳥たちを拾い、おなかが減るとそれを焼いて食べ、残った骨を帰る時の目印に地面に突き刺しながら歩きました。
ヘンゼルは毒薬のラベルに「小動物用 人体無害」と書かれていたのをちゃんと覚えていました。

数日後、二人は魔女の住んでいたお菓子の家に戻って来ました。
そして家を壊し、そのお菓子を食べながら、まる一日かけて魔女の宝物を探しました。
見つかったのは床下でした。
絨毯の下に、見ただけではわからない隠し扉があったのです。
そこから宝石や金貨や銀貨がたくさん入った箱が出て来ました。

宝箱を持ち、さらにお菓子の家を壊して袋に詰め込み、二人はわが家を目指しました。
振り返るとお菓子の家はもう見る影もありません。
屋根も壁もほとんどなくなり、魔女が焼け死んだかまどが見えていました。

「さあグレーテル。この宝物があればこれから僕たち二人だけで暮らしてもいいと思うんだけれど、どうする?」
「わたしは家族四人一緒に暮らしたいわ」
「お前は優しい子だね。じゃあ、お家に帰る事にしようか?」

二人は小鳥の骨を目印に歩き出しました。




おしまい



公募ガイド第16回小説の虎の穴(課題:終わったところから始まる物語)に投稿していた作品です。
今回は没に終わりました。

お友達のりんさんの『慕情(その後のかぐや姫)』は没だったそうです。
同じく、かよ湖さんの『童話「うさぎとたぬき」(カチカチ山 後日談)』は佳作。

最近、ツイッターでフォローしていただいた村上あつ子さんの『 幸福 』が入選と言う事です。
おめでとうございました。

佳作作品一覧はこちらから読めます。
入選作品はネットでは読めません。
『公募ガイド7月号』を買って読んでください(笑)


 
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Commented by haru123fu at 2013-06-11 13:28
とっても、面白かったですがね。
Commented by marinegumi at 2013-06-11 23:16
haruさんこんにちは。
簡潔な感想の一言、ありがとうございます。
「面白かった」は最高のほめ言葉です。
Commented by りんさん at 2013-06-12 15:59 x
ヘンゼルとグレーテルのその後、楽しく読ませていただきました。
こんな人間ドラマがあったとは(笑)
最後のグレーテルの優しさも、童話っぽくなくて逆によかったと思います。めでたしめでたし…じゃない予感が…。
ボツは残念ですね。面白いのに。
選者の好みもあるのでしょうね。
鳥の死骸のあたりが、読む人によっては好みが分かれるかもしれません。
Commented by marinegumi at 2013-06-12 22:05
りんさんこんにちは。
ありがとうございます。
>童話っぽくなくて
そうなんですよね。
元のお話のヘンゼルとグレーテルの両親は、何の知恵もなく二度も二人を森に置き去りにするんですからね、たぶん醒めた目で両親を見るんじゃないかと思ったんです。
>鳥の死骸のあたりが
まあ、残酷と言えば残酷ですが、グレーテルが魔女をかまどに突き落として殺すと言う場面と比べればね~(笑)
Commented by shoko0505s at 2013-06-13 08:00
ヘンゼルとグレーテルを選ぶとは、マニアックで海野さんらしいですね。笑
私はどんなお話だったか?うろ覚えです。笑
童話の中にシビアな現実 海野ワールドが展開されていて、面白かったです。が、ラストのグレーテルの優しさにはほっこりしました。
今度こそ家族4人で幸せになれるといいですね。

佳作の宣伝、ありがとうございます。
虎の穴に海野さんも参戦開始で、来月以降の発表が楽しみです。
りんさんと3人で、名前を並べたいですね。
Commented by shoko0505s at 2013-06-13 08:02
上のコメント かよ湖 です。
なぜか娘のブログに.....???
Commented by marinegumi at 2013-06-14 20:15
しょ…
かよ湖さんおはようございます。
このお話は例によってツイッターで書いたものです。
小鳥が目印のパンくずを食べてしまって道が判らなくなった仕返しに毒入りのえさを撒いて、小鳥の死骸を道しるべにするという、それだけの内容でした。
それを虎の穴に応募するために膨らませたんです。
感想ありがとうございました。

小説虎の穴もこれからちょくちょく投稿して行こうと思っていますよ。

娘さんがログインしたままだったんですね。
よくある事です。
僕の場合複数のブログがあるので自分自身でやってしまうんですけどね。
by marinegumi | 2013-06-10 20:25 | 掌編小説(新作) | Comments(7)