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一番最初に飼った犬 (5枚)

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犬が大好きだった。

私が10歳の時におばあちゃんが死んだ。
それでおばあちゃんが飼っていた柴犬をうちで飼うようになったのが最初の一匹だった。
犬にしてはだいぶ年寄りだったけれど、私はその子がかわいくて仕方がなかった。
散歩をしたり芸を覚えさせたり、毎日毎日を楽しく過ごした。

ある日、エサを買いに父とペットショップに行ったときに見た1匹のトイプードルから私は目を離せなくなってしまった。
そのケージの中の愛らしい生き物に魅入られてしまい、動けなくなった私のために父はその子を買うことを許してくれた。
お小遣いをはたいてまで。
やっぱり父も犬が好きだったのだ。

犬が2匹になっても私は前からいるおばあちゃんの柴犬をほったらかしにしたりはしなかった。
ちゃんと分け隔てなく2匹ともかわいがったのだ。

それから3年ぐらい経つうちに我が家の犬は5匹に増えていた。
ペットショップで買ったり、私が拾ってきた犬だったり、人からもらった犬だったりした。
庭で飼っていた犬もいれば、家に上げて飼っていたいわゆるお座敷犬もいる。
そんな犬たちみんなを、私は同じようにかわいがったと思う。

かわいがっていただけに、犬が死ぬときにはとても悲しい思いをした。
初めて自分の飼っていた犬が死んだ日には一晩中泣き明かしてしまった。
そんな時は私の周りにたくさんの犬たちが寄り添って寝てくれた。
それはまるで私を慰めてくれているようだった。

犬が7匹になった頃、私は結婚した。
一人っ子だった私の家に、彼は一緒に住むことになったのだけれど、彼も私に輪をかけた犬好きだったので、それから2年のうちに10匹にまで増えていた。

年月が過ぎていくうちに、更に1匹また1匹と死んで行き、そんな子たちの写った写真がサイドボードの上に増えて行った。
そして不思議な出来事が起こりだした。

死んだ犬たちの鳴き声が時々聞こえる事がある。
今いる犬たちの声との聞き間違いだったりは絶対にない。
私にははっきりとわかる。
声が聞こえたとき、今はもういないその犬の顔をはっきりと思い浮かべることが出来る。
たくさんの犬たちにも聞こえているようで、一斉に聞き耳を立てるのだから、空耳なんかじゃない。
彼にもそれはちゃんと聞こえていて、とても気味悪がった。
少しおびえている風でもあった。

さらに年月が過ぎ、死んで行った犬の数が増えると、あの世からの犬たちの声が聞こえるのも珍しい事ではなくなってしまった。
「ああ、あの子の声だわ」と思って懐かしい思いもあったけれど、その声が聞こえるのが真夜中だったりすれば、決して気持ちはよくなかった。
でも、その声を怖いと思ったことは一度もない。
そうなんだ。
おばあちゃんが飼っていた柴犬がもう80歳近くにもなると言うのに、いまだに生き続けていることに比べればどうと言うことはない。
何年も何も食べず、水も飲まず、やせ衰え、毛はあちこちが抜け落ちて目は白く濁っている。
そんな状態でも確かに生きている。
犬小屋の奥にうずくまり、腐臭を漂わせ、小さなうめき声を上げ続けているおばあちゃんの愛犬。
それに比べれば、死んだ犬たちの声が聞こえるぐらいは少しも怖くなかった。




おわり



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Commented by haru123fu at 2013-08-05 22:37
そ、そりゃあ死んだ犬の声よりも
おばあちゃんが飼っていた柴犬の方が怖っ!

人間も、死んだ人より生きている人間の方がよっぽど怖いって
言うよね。。。ん?ちょっと違うかな…( ̄  ̄;)
Commented by marinegumi at 2013-08-07 23:14
haruさんこんばんは。

あ、そういえばこの犬はバンパイヤ犬なのかもしれませんね。
永遠に生き続ける。
なんか、そんな話を前に書いたような気がしたんだけど。
気がするだけかな~?

調べると書いてないような。
Commented by りんさん at 2013-08-09 17:47 x
人間より長生きしますね、きっと。
化け猫ならぬ化け犬になってしまいそうです。
もしかして、おばあちゃんが生まれたときからすでにいたりして。
死んだ犬たちは、何かを訴えているのかもしれませんね。
Commented by marinegumi at 2013-08-11 22:31
りんさんこんにちは。
80歳だとしたら、人間だと400歳ぐらい?

これはツイッター小説を元にしているんですが、それをそのまま引き伸ばした感じですね。
何かもっと付け加えないと掌編小説としてはもの足りない気がします。
まあ、仕事の忙しさと、この暑さのなかではこんなものでしょうか?
by marinegumi | 2013-08-05 22:26 | 掌編小説(新作) | Comments(4)