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ふたご座流星群の日 (4枚)

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真冬の夜中に庭に出てみた。
大きなミモザの木の根元に座って星空を見上げる。
パジャマにカーディガンを羽織っただけなので、体は少し震えていた。
さすがに裸足にサンダル履きでは足の指が凍えた。
そしてかすかに頭痛がしていた。

その時、一筋の流星が夜空に美しい線を引いて流れた。
そしてまた一つ。
今日は12月14日だ。
あの日、見る事の出来なかったふたご座流星群の日なんだ。
あれから十年以上が過ぎてしまったけれど、あの日のあなたとの電話のやり取りは、みんな覚えている。
いや、覚えていると言うよりも、今でもそのままの声が耳に残っているんだ。

「きょうさあ、頭が痛かったんだよわたし」
そう言うとあなたはちょっと間を置いてから答えた。
たぶん寝ころんでいて、置き上がったような気配だった。
ベッドのはじっこに腰かけているあなたがありありと想像できた。
「なんだよ。風邪か?」
「そうかもしんない。今はお布団に入ってる」
「いい子いい子」
「でね、さっき庭へ出て空を見上げてたんだよ」
電話を持ち直した気配。
声が少し大きくなった。
「なんでだよ?頭痛いんだろ?なのに、こんなに寒いのに、なんで庭なんかに出るんだよ」
「だってさ、今夜はふたご座流星群の日なんだよ」
「だからって……」
「どうしても見たかったんだもん、流星群。でもさ、10分間だけだよ」
「まったくもう。それで見えたのか?流星」
「見えなかった」
「それじゃあ、寝てた方がましじゃん。頭痛いの、ひどくなったらどうすんだよ」
「でもさあ、ふたご座流星群の日なんだよ?」
「結局、流星は見えなかったんだろ?だったら見上げなかったのと一緒だろ?」
「それって違うと思うよ。空を見上げずに見えなかったのと、10分でも見上げたけど見えなかった、と言うのは大きな違いだよ。全然違うわよ!」
「………」
彼は黙って、座り直すような音がかすかに聞こえた。
「もしもし。聞いてるの?」
「ぷっ。お前ってへんなやつだなぁ。まあ、そんなとこが好きなのかもしれないけどさ」
「次の流星群の日には二人でどこかに見に行きたいね。今度がいつか知らないけどさ……」

そう、あれから私達はずっと恋人同士で、いろんな場所に遊びに行った。
お互いの誕生日やクリスマスを一緒に祝った。
でもなぜかふたご座流星群を一緒に見る事はなかったんだと今気が付いた。
流星群は毎年同じ時期に見られると言うのに。

結婚してほんの1年足らずで、あなたは交通事故で死んでしまった。

夜空をずっと見上げている。
もういくつ流星を数えただろうか?
あなたの最後の言葉を思い出した。
「ごめんね。まだまだこれからだったのに……」
いいよ、大丈夫だよ。
少しの間だけれど、あなたの奥さんでいられたんだから。
「空を見上げずに見えなかったのと、10分でも見上げたけど見えなかった、と言うのは大きな違いだよ」
あの日の自分の声が聞こえた気がした。



おわり



さてさて、予定通りなら仕事も一段落、そろそろブログ更新、ツイッターでも毎晩ツイノベざんまい……と思いきや、仕事は相変わらずハードで忙しいまま。
もうなんか、キーボードをたたくのも面倒な日々が続いています。
まあ、忙しくても涼しくなってくればちょっとは違うんでしょうけどね。

下の記事の「角川Twitter小説」も、予定通り最優秀賞とはなりませんでした。
「最優秀賞」とは別に、募集の時にアナウンスはされていなかった「優秀賞」と言うのが選ばれています。
うわあ、この中には選ばれたかったな~
「優秀賞」には賞金はないんですけど、なんか角川書店と繋がりを持っていたかったというか、そんな感じ。

受賞結果発表

さて、この「ふたご座流星群の日」は4月ごろに「こえ部」に投稿したものの、誰も読んでくれなかった作品を膨らませたものです。
コミカルなセリフだけの元の作品に風景描写を入れ、感傷的な作品にしてみました。



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Commented by haru123fu at 2013-09-13 19:47
海野さん、スゴイよ!最優秀賞ノミネート作品にまで残ったんだから。
こえ部でも、きっといつかこの作品を朗読する人が現れると思うけど、
私が朗読させてもらってもいいですか?お願いします。
Commented by marinegumi at 2013-09-13 20:11
haruさんこんばんは。
「こえ部」の方は既に削除しています。
それはこの作品の電話での会話の部分だけだったのです。
それのバックグラウンドを考え、頭としっぽを付けくわえたんですね。

これは矢菱さんの「ペルセウス座流星群の夜」とペアになる感じでharuさんに読んでもらいたいなと思って書き直したんですよね。
ですからぜひお願いします。

角川ツイッター小説の方は、応募総数が1000編を超えている中での30作品ですからきっとすごい事なんだとは思いますけどね。
うーむ。
Commented by 齊藤 想 at 2013-09-14 06:59 x
惜しかったですね。海野さんにはぜひとも受賞してほしかったのですが。
七歩さんもあともう一歩だったのですね。もっとも、ここまでくると、選者たちの趣味の部分が強いのかもしれませんね。
Commented by marinegumi at 2013-09-14 21:49
齊藤さんおはようございます。
そうですね。
惜しかったな~と、いまさら思います。
「最優秀賞」が1本選ばれるだけだと思っていたら、5編の「優秀賞」と「特別賞」
この中から出版されるかもしれないと言うことですからね。
せめてもうちょっと頑張って書いて、完成度を高めておいて「優秀賞」に入ってればな~と言う感じでした。
Commented by りんさん at 2013-09-16 14:09 x
最終選考に残るなんてすごいです。
1000以上の中で30作品でしょう。
きっと、あと1歩だったんでしょうね。
出版もしてもらえるんですか。
それは惜しいですね。
次はきっと!!応援しています。

Commented by marinegumi at 2013-09-17 19:48
りんさんこんにちは。
まあ、数で言えばそうなんでしょうけどね。
手軽に応募できるのでちょこっと書いてみようかと言う人が多かったんでしょう。
ツイート一つでも応募は応募ですからね。
最優秀賞を含めて、選ばれた7作品は出版の可能性もあると言うことですね。
必ず出版されるとは限らないのです。
でも、その中に入っていたかったな~と。
by marinegumi | 2013-09-13 00:26 | 掌編小説(新作) | Comments(6)