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雪の街 (4枚)

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そこは見渡す限りの雪原だった。
夜空の下に横たわるどこまでも広い雪の荒野だった。
見渡す限りの雪の世界に、更に新しい雪が降り続いている。
白一色の世界を更に白く塗りつぶして行く。
次第に風が強くなり、一帯は吹雪になった。
風で吹き寄せられた雪によって、ところどころに吹き溜まりが出来始める。
それは広い雪原のあらゆる所に同時に出来ている。
みるみるその雪の塊は大きなビルの形になっていく。
いくつもいくつも。
二階建てや三階建の住宅らしい物も無数に形作られて行く。
またある所ではうねうねとつづく広い溝ができる。
そしてそれを渡る大きな橋が出来上がる。
それは川だったのだ。
川と並行して大きな橋脚が出来、その上に高速道路が見る見る伸びて行く。
その雪で作られた街のメインストリートの広場にはこれもまた雪で作られた大きなもみの木らしい物が出来上がっている。
電柱が伸び、電線が走り、駅らしい物が出来、線路や電車の姿も全てが雪によって作られて行くのだ。

ひとしきりの吹雪の後にやがて雪は止み、真っ暗な空の下には見事な街が姿を現した。
どこまでも白く、見渡す限りがそれ自体の白さで輝く雪の街だ。
物音一つしない動く物のいない街。
風は地上ではほぼ止んだけれど、空高くでは僅かにまだ吹いているようだった。
その風がまだ空高くに残っていた雪をまきあげ、何かの形を作っていた。
くるくる渦巻きながら雪の粒は集まり、トナカイの引くソリの形になった。
そのソリの後ろにはサンタクロースらしい人が乗っている。
地上からそれを眺めると、きっと間違いなくサンタクロースのソリに見えただろう。
しかし、上空でのそれはただのまばらな雪の集まりだった。
サンタクロースは雪で出来た街の上を円を描いて飛びまわるとやがて姿を消した。

その日は12月24日。
クリスマスイブと呼ばれていた日だった。
そう。
もう今はいない人々の暦ではそう呼ばれていた。
その人々が暮らした今はもうない街がこの日だけ、毎年雪によって形作られるのだ。
それがなぜかは解らない。
街に暮らした人々の思い出がエネルギーとしてこの星を彷徨っていると言う事かもしれない。
人々の思いが選んだ、たった一日の美しい日。
それがクリスマスイブなのかもしれない。

やがて再び風が強くなる。
12月24日も日付けが変わった。
再びの吹雪によって奇跡のような街は形を失い、吹き飛ばされ、雪の粉になって舞いあがり、新たに降り積り、ただの雪の平原へと姿を変えて行った。
春は再び来る。
雪もやがて溶けるだろう。
しかしそこにはただ荒野が広がっているだけなのだ。




おわり



今年はどんだけクリスマスストーリーを書くことやら(笑)

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Commented by haru123fu at 2013-12-21 23:35
こんな雪の街が本当にあったらすてきでしょうね。
あ、北海道のどこかにそんな町が確かあったはず。
冬の間だけの町。。。ホテルもベットも雪で出来ていて。。。
TVで見たはずだけど忘れちゃった。。。(笑)
でも、それは人口的に作られた雪の町。このお話は、人の魂と
風が一つになってクリスマスイブだけの幻の街。
儚く美しいですね。
Commented by marinegumi at 2013-12-22 00:38
はるさんこんばんは。
あ~なんだかテレビで見た記憶がありますよ。
北海道?
外国だったような。
あ、あれは氷でできたホテルだったかな。
別物かもしれません。

またまた「#聖なる滅亡」系のお話でした。
Commented at 2013-12-22 23:05 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by marinegumi at 2013-12-22 23:10
カギコメさん大丈夫ですよ~
はるさんちで間違われ慣れていますからね(笑)ちがうか~
今回の事で、名前を間違われるのをネタにしてショートショートを1本書けそうなんです。
おかげさまです。
ありがとうございました。
by marinegumi | 2013-12-21 22:15 | 掌編小説(新作) | Comments(4)