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それぞれの物語 (十二支の動物たち)

ねずみ
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「あーまたやられちゃった~。あなた見てよ。電子レンジが動かないと思ったら、コードをネズミがかじってるのよ」
「あらら、ひでえな」
「ほら、このダンボール箱のジャガイモもかじられ……」
「ん?どうしたんだ?」
「あなた。今かじってるところよ」
「叩き潰してやる!」
「あなた。それがミッキーマウスなの。ほら、ミニーちゃんと一緒にジャガイモかじってる」
「か……かわいい」






うし
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「よく噛んで食べなさいよ。ほら、残さないのよ」
「ぼくもうお腹いっぱいだよ」
「もっと食べなきゃ大きくなれないわよ」
「食べられないもん」
「しょうがないわね~。パパ、食べてやってくださいな」
「またかよ。おれ、最近食べすぎだしな」
「だいじょうぶ。あなたはもっと太った方がいいの。あら、坊やどこ行くの?」
「お散歩してくる~」
「だめよ!すぐ寝なさい。食べてすぐ動くと人間になっちゃうわよ」






とら
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「やめろ!俺はトラだぞ。俺を食おうなんてとんでもないやつだ。やめろよ。キバもないし、するどい爪もないお前みたいなやつが俺にかなうわけがないだろ? ぐふっ!おおう!やりやがったな。そんな道具を使うなんてひきょうな奴だ。でもな、俺を食べたら食べたで後が怖いぞ。俺の体には毒があるからな。ふふふ、もうお前はおしまいだぜ……」

トラフグは、板前がフグの調理師免許を持っているのを知りませんでした。






うさぎ
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ぼくはウサギになった夢を見ていた。
月面を気持ちよく跳ねながら地球を眺めていた。
ぴょーん、ぴょーんと、軽くジャンプするだけで、低重力の月ではすごく高く跳ぶ事が出来る。
滞空時間がとても長い。
そう、跳ぶと言うより飛んでいる感じだ。

目が覚めてもぼくはウサギだった。
狭い薄暗いウサギ小屋の中だった。
ピョ~ンと一つ跳んでみるとしたたか頭を打った。






りゅう
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小鬼どもの手から救い出した姫様の話を聞くと、なんと異世界から来たのだと言う。
地球と言う惑星の日本とかいう異世界から迷い込んだのだと。
姫様は小鬼どもにひどい傷を負わされていた。
血がとめどなく流れ続けている。
この世界では姫様を救う手だてはない。
わたしは彼女を背中に乗せ、空高く舞い上がり、その地球とやら言う異世界を目指した。
そこにはビョウインと言う場所があると言うのだ。
そこに行けば助かると。

救急病院の前に大けがを負った少女が倒れていた。
すぐに手術室に運ばれて輸血と治療が施された。
その少女が倒れていたすぐそばに一匹のミミズらしい物が干からびて死んでいた。
誰も気が付くはずもなく。
さしものドラゴンもこの異世界では元の姿を保てなかったのだ。






へび
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雨の降る夜、蛇の目傘を差した女の人が家の前を通った。
二階から見下ろしていた僕の方を女の人は一瞬見上げ、そのまま通り過ぎて行った。
その傘が珍しかったので僕は見えなくなるまでずっと見送った。

その夜に夢を見た。
子供の頃に蛇を殺したことがある。
地面を這う蛇が恐ろしくて、大きな石を投げつけたのだ。
その蛇の苦しむ様子と僕を睨む目のおぞましさを夢の中で再体験した。

次の夜もまだ雨が降っていた。
蛇の目傘を差した女の人が家の前を通った。
二階の僕を女の人はまじまじと見上げた。
その目があの殺した蛇の目だった。

女の人は動かない。
僕も目を離すことが出来なかった。






うま
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僕は馬が嫌いだった。
なぜなのかは解らない。
僕よりもずっと体が大きいから恐ろしいと、そう言うわけでもない。
なぜか一緒にいたくないんだ。
一緒にいるのを見られるのが嫌なんだと思う。
なぜ嫌なのかがこれまたよく解らない。
じっと考えてみる。
そうだ、なぜか馬と一緒にいると蔑(さげす)まれているような気になる。
人間が僕と馬を見るその目がそうなのだ。

「あ~、馬と鹿がいる。馬鹿だ、馬鹿だ~」

何を言ってるのか人間の言葉は判らない。
何でそんな目で見るんだよ~






ひつじ
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ああ、また今夜も眠れない。
どこかで僕たちを呼ぶ声がする。
眠れないからっていちいち僕たちを呼んで、数え続ける人間よ。
僕たち羊もちゃんと睡眠を取らないと体がもたないんだぞ。






さる
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ぼくはナマケモノ。
毎日ただ木にぶら下がったまま殆ど動かない。
食べ物はぼくがぶら下がっている木の葉っぱだからあまり動かなくても済むんだけどさ。
でも時々あのサルのように木から木へものすごいスピードで飛び移ってジャングルを駆け回りたいと思う時もあるんだ。
そう、そう言う夢を見ることもよくある。

体中が風を感じ、木々を駆け抜ける。
風景が飛ぶように過ぎて行く。
ぼくはサルだ、ジャングルを疾走するサルなんだ~!
ああ、また夢を見ているんだなと思った。
でも、なぜか体が痛い。

そのナマケモノは、天敵のジャガーの口に咥(くわ)えられているのに気がつくまで、もう少し時間がかかりそうだった。






にわとり
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その小学校ではニワトリを飼っていた。
オスだったので、卵を産ませるためではない。
大きくなると家庭科の料理の時間に生徒の目の前で締めて、料理をしてみんなで食べようと言う事なのだ。
命の大切さ、食べ物の神聖さ、生きて行くことの大事さ、残酷さを学ぼうと言う事だった。
その事を許せなかった少女がいた。
「こんな可愛いニワトリを殺しちゃうなんて許せないわ!」
そう思った彼女は料理の時間割のある前日の放課後、鶏小屋からそのニワトリを学校の裏山に放してやったのだ。

その夜のうちにニワトリは野良犬の餌食となった。






いぬ
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「ゲップ。満腹で動けないワン」






いのしし
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「あんたが猟師の六太夫さん?」
「そうじゃ、わしが六太夫じゃが?」
「ほんまに六太夫さん?」
「えらい疑り深い人じゃな」
「わたい、猪の肉を分けてもらいに大阪から来ましてな」
「おお。なんじゃ、そうか客人かいな。ちょうどええとこに来なはったぞ。ほれ、これが今朝仕留めたばっかりの猪じゃ」
「うーん、猪の肉は新しいないと淋病には効かんと言うからなぁ。これほんまに新しいか?今朝仕留めた言うても仕留めるとこ見てへんし」
「ほんまに疑り深い客人じゃのう。ほれ、ここを見てみい。製造年月日が今日の日付になっとろうがな?賞味期限は30日までじゃ。バーコードもつけてあるしの」
「ひえ~恐れ入りました」






おわり





今年最後の作品として、何か書いてみたいと思いながら、今月末締め切りの応募作品があったので書かないつもりが思いついてしまいました。
十二支をそれぞれ題材にして12のお話を書くというもの。
まあ、仕事が31日まであるものの、30日ともなると暇な時間も出来るので、半分ほど仕事中に書けました。
残りは家に帰ってから書いて、画像を用意して、トリミングして、更に応募作品をほぼ完成に近づけるという、なんともちょっとハードな一日でした。

この十二支のお話は2本ぐらいが過去のツイノベをアレンジしたもので、残りは新たに考えたものです。
お楽しみいただけましたでしょうか?

それでは皆さん、よいお年を

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Commented by りんさん at 2013-12-31 15:05 x
十二支の動物で話を書くなんて面白いですね。
牛と馬、特に面白かったです。
あとは龍。なんとも悲しいラスト。これがいちばん好きです。
短い中にいろんなドラマが書けてすごいですね。

今月締め切りって、公募ガイドですか?
私も出しました。難しかったですよね。

来年もよろしくお願いします。
よいお年を^^
Commented by 雫石鉄也 at 2013-12-31 16:39 x
ことしも、ありがとうございました。
まったく、ずっと昔からですが、海野さんの創作力にはおそれいります。私など、うらやましい限りです。
また、来年も面白い作品を期待しています。どうか良いお年をお過ごしください。
三日の新年会は私は出席します。
Commented by かよ湖 at 2013-12-31 18:43 x
今年も、シュールな海野さんに楽しませていただき、ありがとうございました。
「とら」と「さる」は吹き出しちゃいました。「りゅう」の深さにも唸らされ・・・さすが海野ワールド!
来年もよろしくお願いします。
Commented by marinegumi at 2013-12-31 20:18
りんさんこんにちは。
>十二支の動物で話を書くなんて面白いですね。
りんさんが「ヘビとウマ」で書いてたから思いついちゃったんですよ~
最後の4つほどがちょっと苦しかったですね。
「いぬ」は楽でしたが(笑)

そうです、虎の穴です。
いままでなかったような小説って、難しいですよそりゃ。
ついさっきメールで送信しました。
これで3か月連続です。

来年もよろしくお願いします。
Commented by marinegumi at 2013-12-31 20:23
雫石さんこんにちは。
いやいやネットでもリアルでもありがとうございました。
僕のこのアイデアの元はツイッターですね。
毎晩のツイッター小説で訓練されているんだと思います。
雫石さんの作品こそ期待しています。

新年会ですか?
そんなの聞いてないよ~(笑)
いやいや聞いていたとしても行けないのでいいのですが。
Commented by marinegumi at 2013-12-31 20:27
かよ湖さん今晩は。
ありがとうございます。
楽しんでいただけたなら幸せであります。
シュールな作品にはあこがれますが、僕の作品はシュールと言うのかなぁ?

「りゅう」は長くして短編にでもできるかもしれませんね。

来年もよろしくお願いします。
かよ湖さんも創作に頑張ってください。
Commented by haru123fu at 2013-12-31 23:01
これって新年最初の朗読にしたら面白そうですね。
クリスマス企画では、沢山の作品をありがとうございました。
今年も本当にお世話になりました。
来年もあと一時間。どうぞよろしくお願いします。(._.)ペコリ
Commented by marinegumi at 2014-01-01 01:42
はるさんあけましておめでとうございます。
さっき近所の神社に初詣に行ってきました。
2014年最初の朗読にどうぞお使いください。
内容的に新春にふさわしいかどうかは判りませんが。
今年もよろしく。
Commented by 平渡敏 at 2014-01-06 21:36 x
これいいですね。
新年最初の朗読にふさわしい。
皆さん言っていますが、龍が一番よかったかな。
Commented by marinegumi at 2014-01-08 00:31
平渡さんこんばんは。
ありがとうございます。
仕事中に半分(こらこら)家に帰ってから半分書きました。
去年の12月はいつになく沢山書けましたね。
ツイッターで毎日3本ツイッター小説を書くと言うのが日課です。
それでアイデアが出やすくなっているようですね。
by marinegumi | 2013-12-31 01:31 | 掌編小説(新作) | Comments(10)