都会のオーケストラ (2枚)

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みどり豊かなふるさとを後にして、この都会へやって来た。
初めはただただ、騒音にあふれた大都会に圧倒されるばかりだった。
とてつもなく大きく冷たい灰色のビルの間を歩く自分がとても小さく取るに足らない生き物の様な気がした。
晴れていても何となくかすんだ空。
街の底にわだかまる排気ガスのにおい。
慢性的な頭痛に悩まされながら身を小さくしながら毎日を過ごした。
そうやって何年も何年も灰色の年月を送った。
そして、十年が過ぎた。

体調不良で仕事を一週間休んでいた。
そんなある日、目覚めて窓を開けると、何となく心地よい音が聞こえて来た。
いつも聞いていた都会のざわめきが、あの不協和音が、今日は調和のとれたメロディーを奏でているような気がした。
甲高い子供たちの叫び声、人々の足音、車のエンジン音、電車の警笛や車輪の音、重低音の工事現場の音。
それは一つに混じり合い、力強い都会のオーケストラを奏でていた。
そして開け放った窓から部屋に流れ込んで来る空気も、とてもいい香りがした。

「聞こえますか?私の言っていることが聞こえますか?」
首を横に振る。
お医者さんの口の動きで何となくわかる。
「あなたはひどい聴覚障害です。どうして今まで放っておいたんですか?」
と、先生は紙に書いて見せた。
「嗅覚障害もあるようですよ」

ずっと聞こえている。
やさしく全てを包んでくれるあのオーケストラが。




おわり



ツイッター小説が好調です。
さっき書いた三本のうちの一つを書き足したものです。
後の二本も続けて原稿用紙二枚ぐらいの掌編にしてみようと思います。

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Commented by haru123fu at 2014-03-04 08:21
朗読させてもらってもいいですか?
まだ頭の中では、どう表現したら良いのかまとまっていませんが。
よろしくお願いします。(._.)ペコリ
Commented by marinegumi at 2014-03-04 20:51
はるさん、おはようございます。
朗読ぜひよろしくおねがいします。
なんてコメント書いてる頃にはもうできあがってるかもしれませんね。
さて、今夜も引き続き2枚の作品を書きたいと思います。
最近は2枚が書きやすいですね。
長くなるとちょっとしんどかったりします。
Commented by haru123fu at 2014-03-04 21:38
(*´σー`)エヘヘ…少し前に出来上がりました。
海野さんの作品を読んで感じた
主人公の心の闇を表現したかったのですが、
やっぱりイマイチでした。(^_^;)
Commented by かよ湖 at 2014-03-08 01:59 x
海野さんの、色々な角度や視点からそれぞれを感じ取れる感性には、本当に感心します。
新たな世界に触れたようです。
Commented by marinegumi at 2014-03-09 21:43
かよ湖さんこんばんは。
ありがとうございます。
こんなにバラエティーに富んだ作品を思いつくのはツイッター小説のおかげなんですよね。
さらにツイリミと言うやつの。
ツイッター小説をツイノベと言いますが、人の書いたツイノベを元にして新たにツイノベを書くのをツイリミと言います。
ツイノベリミックスと言うわけですね。
それをほとんど毎晩、一晩に3本書いています。
最近書いている小説は殆どがこのツイリミを元にしたものです。
by marinegumi | 2014-03-03 00:39 | 掌編小説(新作) | Comments(5)