逃げ出した獏 (2枚)

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わが研究所では、獏の遺伝子を組み換え、様々な獏を誕生させている。
哺乳類ウマ目の「バク」ではなく、夢を食べると言われるあの「獏」の方だ。
交配だけでは特徴的な獏はまず誕生しない。
獏の受精卵の遺伝子を操作することによって多種多様な獏が生れて来るのだ。

普通の獏は灰色だが、この真っ白い獏は良夢しか食べない。
人の見る良い夢だけを好んで食べるのだ。
こちらの真っ黒の獏は、そう、お察しの通り悪夢を好んで食べる。
またこの体毛が銀色の獏は悪夢を食べるのだが、その後悪夢を消化し終るとその夢を見ていた人の夢の中に良夢を排泄する。
つまり悪夢を良夢に変えてくれると言うわけだ。
そしてわが研究所の最高傑作は何と言ってもこの金の獏だろう。
この獏は好んで良夢を食べるのだが、その良夢を現実に反映させる。
人々の見る良い夢を現実のものとする能力を持っているわけだ。

そうやって様々な獏を創り出して来たのだが、ある日、偶然に大変な獏が誕生した。
これまでの全ての獏たちは夢しか食べなかった。
しかしこの獏は現実を食べるのだ。
現実を食う獏によって研究所が食い荒らされ、ぼろぼろになってしまい、その隙間から全ての獏達が外へ逃げ出してしまった。
そして彼らは現実を食う獏との間に子供を作り、何百頭にも増えて行った。

いまや全ての獏は現実をものすごい勢いで食い荒らしている。
ほら、この世界の現実感の乏しさはどうだ?
現実の壁がほぼなくなり、人々は昼間から夢の世界に遊んでいる。



おわり



昨日書いた三本のツイッター小説のうち二本目を長くしてみました。
また明日も続けて三本目を書いてみたいと思います。

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by marinegumi | 2014-03-03 22:18 | 掌編小説(新作) | Comments(0)