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海野久実が掌編小説やら短編小説を書いています。タイトルの後に原稿用紙換算の(枚数)があるのが小説です。


by marinegumi
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おやすみなさいの魔法使い (3枚)

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わたしが幼い頃から、眠るときには必ずおやすみなさいの魔法使いが来てくれた。
必ず毎日、決まった時間にやって来たんだ。
それでわたしはじゅうぶん睡眠をとることが出来て健康に育ったんだと思う。
おやすみなさいの魔法使いの姿をわたしはまだ見たことがない。
まだ眠くならないままベッドに入っているといつの間にかおやすみなさいの魔法使いは枕元に立っている。
気配でわかるんだ。
そしてなにやら聞こえない声で呪文を唱えているように思う。
間もなくわたしは幸せな眠りに落ちる。
そんな無邪気だった頃を思い出していた。

風の音が聞こえる。
あたりは白い光に満たされている。

そう、でもわたしが大人になるにつれておやすみなさいの魔法使いはだんだん気まぐれになった。
受験勉強に追われ、一晩中起きていたりすることがよくあった。
それからまた、友達の家に泊まりに行ったりした時は眠いのを抑えつけ、一晩じゅう騒いだりしたこともある。
そうだ、好きなアーティストのライブでも幾度も徹夜をした。
そんな事が多くなったのでおやすみなさいの魔法使いにも、呆れられてしまったのかもしれない。
でも時間は不規則にはなったけれど今でも必ずちゃんと来てくれるんだ。

さっきまで寒かった体が暖かくなってきた。
風の音も少し遠ざかったようだ。

仕事を始めてから数年。
最近はちょっと困ったことがある。
時間が不規則な職場なので、おやすみなさいの魔法使いがやって来た時にもわたしがちゃんと眠れない。
学生時代と違って、寝てしまうわけにもいかず、無理やりに起きていたりすることがもっともっと多くなったので、すねてしまったのかと思う。
たぶんそうなんだ。
おやすみなさいの魔法使いのやつ、昼間、仕事の最中に急にやってきたりすることがある。
机に座って書類に目を通しているとき、後ろに立っている気配を感じるんだ。
そして一度、完全に寝てしまったことがあった。
大事な会議中だったんだ。
もうあの時は最悪だった。
どんなにおやすみなさいの魔法使いをうらんだか知れない。
一人、自分の部屋で思い切り大声で悪口を言ってやった。
それからはちょっと大人しくしている様子なので安心してたんだけれど。

お前はやっぱりあれからわたしに腹を立てていたんだね。
まさかこんな時に。
雪山で遭難している時にやって来るなんてさ。

ほら、もう風の音も聞こえない。




おわり



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Commented by りんさん at 2014-03-23 17:25 x
ああ、まさかのブラックオチでした。
面白い!
おやすみなさいの魔法使い、車の運転中には来ないで欲しい。
Commented by marinegumi at 2014-03-24 21:39
そうですよね。
タイトルや、冒頭の雰囲気からしてまさかのブラック。
主人公にはちょっとかわいそうでした。
Commented by haru123fu at 2014-03-25 21:11
朗読のお願いです。できれば明日UPしたいので……
画像にちょっと悩んでいます。
よろしくお願いします。(._.)ペコリ
Commented by marinegumi at 2014-03-25 21:34
はるさんこんばんは。
はいはいよろしくお願いします。
あー、そうですね。
僕も結構画像に悩みました。
結局なんだか分からない画像にしちゃった。
by marinegumi | 2014-03-23 16:16 | 掌編小説(新作) | Comments(4)