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しっぽ (4枚)

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人間にしっぽの生える病気が流行っていました。
これは空気感染らしくて、家族のうち一人でも罹(かか)ると全員に伝染してしまう事が多いと言います。
山岸さんちは小学生と幼稚園児の、男ばかりの七人兄弟でした。
そしてやはり学校や園でもらって来たのでしょう、全員が次々感染してしまったのです。
みんな同じような細い白いしっぽが生えてしまいました。
その「しっぽ伝染病」は、病原菌にもいくつかの型があるらしく、菌によってさまざまな種類のしっぽが生えると言います。
同じ型の病原菌に感染した人は同じしっぽが生えるようなのです。

日曜日の夕飯時。
みんなで食卓を囲んでいると、テレビでアナウンサーがしゃべっていました。
「しっぽの生える伝染病はその感染の勢いを増すばかり。このままでは日本国中に広まりそうな勢いです。ただし、この病気に罹ってもしっぽが生えるだけで、体に悪い影響があるものではないと言うことですので神経質になる必要はありません」
ここ数カ月は、ニュースと言えば、この「しっぽ伝染病」の話題ばかりでした。
「最近はこのしっぽをおしゃれに利用しようとズボンやスカートからしっぽを出して歩く若者も現れています。街にはしっぽにリボンをつけて歩くギャルもちらほら」
それを見ていた母親が言いました。
「わたしもしっぽにリボンでもつけようかしら?」
七人の子供たちがいっせいに母親の方を見ます。
「え~?お母さんもしっぽが生えてるの?」
「そうなのよ。恥ずかしかったから言わなかったんだけどさ」
「見せて、見せて」
子供たちはみんな母親の周りに集まりました。
「わ~!ほんとだ。僕たちと同じ、白い細くてかわいいしっぽだね」
「このしっぽは山羊型しっぽって言うらしいよ」
「学校の友達にはさ、お猿さんみたいな長いしっぽの子もいるし、毛がふさふさ生えたしっぽの子もいるんだよ」
子供たちの目がいっせいにさっきから何も言わない父親の方を向きました。
「お父さん。さっきからずっと黙ってるけど、お父さんはしっぽ生えてないの?」
「う、うん。まあな」
父親は新聞を読みながらもじもじしています。
「いやあ、生えてない事はないんだが……」
「ええ~!!お父さんも生えてるんだ?」
今度、子供たちは父親を取り囲みました。
「ねえ、見せてってば」
「見せて、見せて!」
「見せてよ~」
「ちょっと散歩に行って来る」
父親が新聞を置いて立ちあがります。
「怪しいぞ、お父さん。自分だけ生えてないので恥ずかしいんだろ?」
「そ、そんなことあるもんか!」
「それじゃあ、見せてくれてもいいでしょ?」
父親は家を出て行こうとします。
「みんなで脱がしちゃえ~」
子供とは言え、七人にも押さえ込まれてはたまりません。
たちまち父親はズボンを脱がされてしまいました。
そしてそこから出て来たのは大きなふさふさとした茶色のオオカミのしっぽだったのです。
「きゃああ~!」
子供たちはみんな廊下にある大時計の中に逃げ込んでしまいましたとさ。



おわり



これは去年書いたツイッター小説です。
改めてちゃんと全部のツイッター小説をワードにコピベした物を見てみると、けっこうたくさん、長く出来るお話が潜んでいるものですね。

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by marinegumi | 2014-04-20 19:32 | 掌編小説(新作) | Comments(2)

Commented by りんさん at 2014-04-25 19:25 x
これ、どんなオチなのかしらと思ったら、7匹のこやぎ^^
しゃれてますね。面白い。
だけどシッポが当たり前になったら、そりゃあリボンつけるでしょうね。
シッポ専用の美容室が出来たりするかも(笑)
楽しいお話でした。
Commented by marinegumi at 2014-04-26 00:25
りんさんこんばんは。
「7匹のこやぎ」を知らない人には、何のこっちゃ?と言うお話だったので、ちょっと心配しました。
>これ、どんなオチなのかしらと
まで読んで、しまった~と一瞬思いました。
さすがりんさん。
最近の若い人は(笑)たぶん知らない人も多いかもしれないな、と思っていました。