珈琲の木 (2枚)

a0152009_115024.jpg

おいしい珈琲が飲みたい

あなたはそう言った。
お湯はいつでも沸いている。
コーヒーカップももう温めてある。

そうねえ 目的の星に着いたら 飲めるかもしれないわね
まず炭化水素を星全体に散布して温室効果で気温を上げるでしょ
軌道上に巨大なアルミの鏡を浮かせて太陽の光を極地に当てるでしょ
そうすると地下の氷が解けて海になり川になり それが蒸発して雲が出来る
雨が降ってまた蒸発して 繰り返すうちにだんだん呼吸できる大気が出来る
それまでに15年ぐらいかな
土壌に菌類を蒔いて栄養豊富な土に変えてから育ちやすい樹木を植える
それが茂って更に大気を地球に似た環境にするわ
そこまでで更に20年ぐらいかな
その後ね 珈琲の木を植えるのは

あなたはうんざりしたような顔をした。
その顔を横目で見ながらインスタントコーヒーのビンからひとさじすくう。
温まったカップの中にそれを入れるとお湯を注いだ。

砂糖とミルクはご自由に
インスタントもそんなに悪くはないでしょ?

食事室が珈琲の香りに包まれた。
宇宙船が目的の星に着くのはまだまだ先の事だった。



おわり




ランキング参加してます。
クリックであなたに幸運が(笑)
    ↓
にほんブログ村 小説ブログ 掌編小説へ
にほんブログ村

人気ブログランキングへ
[PR]
Commented by 雫石鉄也 at 2014-06-06 13:29 x
いいですねえ。これ。珈琲を飲むためだけに、大規模なテラフォーミングを行う。
真正面からハードSFで書くとおもしろそうですね。
キム・スタンリー・ロビンソン
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AD%E3%83%A0%E3%83%BB%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%B3%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%83%AD%E3%83%93%E3%83%B3%E3%82%BD%E3%83%B3
にでも書いてもらいたいですね。
Commented by marinegumi at 2014-06-08 17:02
雫石さんこんにちは。
ああ、いいですね、それ。
この作品ではコーヒーを飲むためだけと言うわけではないのですが。
何十年も後にどうにか暮らせるようになって、やっとコーヒーの木が植えられる。
その初めてのコーヒーを飲むときには「あなた」はすっかり老人になっている。

キム・スタンリー・ロビンソンは聞いたことがあります。
「石の卵」はきっと持っていたはず。
「レッドマーズ」はひょっとして買ったまま読んでいないリストに入っているかも。
by marinegumi | 2014-06-06 01:03 | 掌編小説(新作) | Comments(2)