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海野久実が掌編小説やら短編小説を書いています。タイトルの後に原稿用紙換算の(枚数)があるのが小説です。


by marinegumi
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お食事の時間 (3枚)

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獏(ばく)は人の夢を食べると言うけれど、一度も食べているところを見たことがない。
想像すればするほど、どうやって食べるのか想像がつかないんだ。
もうどうしようもなく、気になって眠れなくなってしまった。
それで知り合いの獏に夢を食べているところを見せてくれるように頼んでみた。
「そればっか考えてしまって眠れないんだ。ぼくが眠れないと夢も見ないからお前も困るだろ?」
そうやって獏を説得した。
なかば脅迫だね。
それで夢を食べているところを今夜見せてくれることになった。
友達のこのみちゃんの夢を食べるらしい。
獏に乗っかってこのみちゃんの家に着く。
すると獏はふんわりと浮き上がり二階のこのみちゃんの家の閉まっている窓を抜けて入ってしまった。
このみちゃんは気持ちよさそうにベッドで眠っていた。
かわいい寝顔だ。
獏はこのみちゃんの枕元に回ってぺろりと舌なめずりをした。
すると突然このみちゃんの頭にかぶりついたんだ。
がりがりと頭をかじっている。
頭をかじられているのに、このみちゃんは変わらずにかわいい寝息を立てている。
やがてこのみちゃんの頭からは脳みそがあらわになった。
獏はその脳みそを半分ほど手に取ると、肩にかけていたバッグから出したお皿の上に乗せた。
更に何やら怪しげな機械を床の上に置くとコードを部屋のコンセントに差し込む。
その機械の中にこのみちゃんの脳みそを入れるとスイッチオン。
どうやらそれは遠心分離器のようだ。
脳みそからはキラキラした重い気体のようなものが遠心分離されてゆく。
それは小さなガラスの容器に溜まって行く。
獏はスイッチを切った。
中に残った脳みそ(絞りかす?)を獏は手で取り出してこのみちゃんの頭に戻した。
そして手際よく糸と針で縫ったのだ。
またたく間にこのみちゃんの頭の縫いあとはきれいになった。
傷口は全然残っていない。
なに事もなかったようにこのみちゃんは安らかに眠ったままだった。
獏はと言うとさっきのガラス容器に溜まった美しく光る気体のようなものを飲んでいる所だ。
多分それが夢なんだろう。
このみちゃんの夢ってこんなにきれいなんだと妙に感動していた。
獏がぼくの方にこのみちゃんの夢が少し残ったガラス容器を差し出した。
「え?ぼくにくれるの?」
ぼくは恐る恐るそれを飲んでみた。
ホンワカ不思議な気分になって行く。


目が覚めるとすこし頭が痛かった。
起き上がって洗面所に行って水を飲んで、なんとなく鏡を見た。
ぼくの頭から、覚えのない縫い目が消えて行くところだった。



おわり



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Commented by りんさん at 2015-05-20 18:01 x
なんてグロテスクなお食事でしょう。
私も朝、縫い目を確認してしまいそうです。

だけどキラキラしてきれいで、飲んだらほんわか温かい。
いい夢だったんでしょうね。
悪夢だったらどうなるんだろう。
Commented by 雫石鉄也 at 2015-05-21 13:28 x
なんか痛い夢喰い話しですね。
この獏、獏は獏でも夢枕獏ではないでしょうか。
格闘技小説をいっぱい書いてる夢枕の獏さんなら、こんな夢を見そうですね。
Commented by marinegumi at 2015-05-21 23:58
りんさんこんばんは。
最後の三行はその前まで書いてきてこのまま終わるとインパクトがないなあと思って思いついたものです。
結構気に入った終わり方になりました。
Commented by marinegumi at 2015-05-22 00:06
雫石さんこんにちは。
なるほど。
夢枕獏さんのペンネームは、なぜ夢枕なんでしょうね。
夢枕に獏が立つというのはあまり聞かないですからね。

ところでこの獏が「夢を食べているところを今夜見せてくれることになった」と言うアイデアは米朝さんの「饅頭こわい」からですよ。
怖いものの言い合いをしている若い衆の中に狐に騙された話をしているやつがいて、それが狐に「人を化かしているところを見せてやる」と言われてだまされる、あのエピソードが頭にありました。

by marinegumi | 2015-05-18 22:02 | 掌編小説(新作) | Comments(4)