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雨降りしきる森の中 (3枚)

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「赤ずきんや、おばあさんの所へお使いに行ってちょうだい」
「だけどママ、雨が降って来たよ」
母親がおばあさんのためにお菓子を作り始めたころにはまだ空は曇っていただけでした。
それがいつの間にか雲はどんどん厚くなり、雨が降り出していました。
間もなく雨は本降りになり、村の家々も見えなくなるほどでした。
「これじゃあお外に出られやしないわね」

雨はどんどん降り続きました。
おばあさんはリュウマチがひどく痛み、ずっとベッドの中です。
小さな冷蔵庫の中に一週間ほど前に孫の赤ずきんが持って来てくれたシチューやスープがまだありました。
それでなんとか自分で料理をしなくてすんでいたのです。
シーツから目だけ出しておばあさんは窓の外を見ています。
森の木々も雨の向こうにかすんでいます。

雨はどんどん降り続きました。
オオカミは腹ペコでしたが巣穴から出る気にもなりません。
雨に濡れるのが嫌だったのです。
雨の中を歩き回ってずぶぬれになり、体じゅうが泥だらけになるのを想像しただけで憂鬱になりました。
そんな目にあうのなら腹ペコのままの方がどんなにかよかったのです。
雨脚が強くなり、さらに風が吹いてオオカミの鼻先に雨がかかりました。
オオカミは巣穴の奥の方へもぐりこみました。

雨はどんどん降り続きました。
猟師の男は家で鉄砲の手入れをしています。
こんなに雨が続くと、うっかりすると銃身が錆びてしまうのです。
布に油をしみこませ、猟師は丁寧に鉄砲を磨き上げていきます。
季節は六月に入ったばかりで決して寒くはないけれど暖炉がよく燃えています。
その前には鉄砲の弾丸の箱が並べてあります。
火薬が湿気てしまうと使い物にならないからです。
雨が屋根に当たる音が大きくなり猟師はふとその手を止めます。

雨はどんどん降り続きました。
その夜、赤ずきんは雨の音を聞きながら夢を見ました。
それは、すっかり水に沈んでしまった森の中を、泳ぎながらおばあさんの家に行く夢でした。



おわり



梅雨時にふさわしい雨のお話。

最近、更新の頻度が著しく落ちていますね。
一か月に一度の「ショートショート講座」更新のお知らせが二回続かないように、つまり一か月も小説を書かない、なんてことのないようにと思って少々無理やり書いてみました。

まあ、5月末には仲間内で出す紙の本の作品二本の締め切りでしたし、TO-BE小説工房にも初投稿出来ましたから、書いてることは書いてるんですけどね。
一時よりは創作意欲が戻ってきている感じはします。


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Commented by りんさん at 2015-06-16 17:18 x
ああ、あのとき雨が降っていれば、おばあさんは食べられなかったし、オオカミは腹を切られなかったんですね。
こういうパロディの書き方もあったのか。
発想の展開ですね。面白かったです。
Commented by marinegumi at 2015-06-18 14:37
りんさんこんにちは。
ぼくは赤ずきんのパロディーはたくさん書いてますね。
元は殆どツイッター小説です。
最近書いたツイッター小説で、まだ長くしてない物に、赤ずきんや、登場人物がみんな幽霊(笑)と言うのがあります。
by marinegumi | 2015-06-09 16:00 | 掌編小説(新作) | Comments(2)