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海野久実が掌編小説やら短編小説を書いています。タイトルの後に原稿用紙換算の(枚数)があるのが小説です。


by marinegumi
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真夜中の図書館 (2枚)

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時々、ぼくの家の庭に図書館がやってくる。
真夜中に何かの気配を感じて目を覚ますと真っ暗な部屋のカーテンの向こうが何となく明るいのだ。
カーテンを開け、窓越しに庭を見下ろす。
紅葉した庭の木々の間にレンガ造りの大きな建物が、息をひそめているかの様に静かに重く佇んでいる。
それは図書館だった。
いくつもある小さな窓には明かりが点いている。
その灯りで真っ暗なはずの真夜中の庭が照らされていたのだ。
窓の中には大きなたくさんの書架に並んだ無数の本が見えた。
その本の前を静かに行き来する司書の姿も時々見えた。
ぼくは魅入られたようにそれを見続ける。
見続けるうちにいつの間にか眠ってしまい、不思議なことにちゃんとベッドで目が覚めた。
カーテンを開けてさらに窓を開く。
でもそこにはもう図書館はない。
庭の木々の向こうにはうっそうと茂った森の中に一本の細い道が続いているだけだ。

朝ごはんの時に、そのことをお母さんに話しても信じてくれない。
「素敵な夢を見たのね」と笑うだけだ。
ぼくは今、文字を覚えている。
どんな難しい文章でも読めるように勉強をしている。
またいつかあの図書館がやってきたら、必ず訪ねるために。
そしてそのまま図書館と一緒に旅をするんだ。

永遠にね。



おわり



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Commented by りんさん at 2015-09-23 14:10 x
移動図書館っていうのはあるけど、こんな風に建物ごと現れるなんて、不思議ですね。
中には、黒い手差しをした真面目そうな職員が黙々と働いていそう。
ただの夢ではなくて、この少年を選んで現れているような気がします。
Commented by marinegumi at 2015-09-25 16:52
りんさんこんにちは。
あーそうか、あの袖が汚れないようにかぶせる黒いやつ。
手差しっていうんですね。
印刷会社に勤めていたときに使ってたんですけど、名前は知りませんでした。

図書館側にしてみればある日突然外の景色が変わってる感じかな。
図書館が優秀な職員になりそうな人材を探して移動しているのでしょうか。
by marinegumi | 2015-09-20 11:45 | 掌編小説(新作) | Comments(2)