まりん組・図書係 marinegumi.exblog.jp

海野久実が掌編小説やら短編小説を書いています。タイトルの後に原稿用紙換算の(枚数)があるのが小説です。


by marinegumi
プロフィールを見る
画像一覧

ネコジャラシ (6枚)

a0152009_1352978.jpg

マロン…マロン…
わたしが飼っていた、まだ子猫だったマロン。
知り合いのおばさんちで生まれて、お父さんがもらってきたマロン。
栗色と白の混じったきれいな猫で丸くなるとケーキのモンブランみたいだったマロン。

マロンはネコジャラシが好きだった。
ペットショップで買ってきたおもちゃの猫じゃらしはあまり見向きもしない。
庭に生えているネコジャラシを取って来て、それを見せると目の色が変わった。
とてもよくじゃれて遊んだ。
ふわふわチクチクするあの感触はわたしも好きだった。

ネコジャラシで遊んでやっているとマロンはそれに飛びつき、威嚇し、手招きし、両手で挟もうとする。
時々やりすぎて茎が折れてしまうと、またわたしは庭に取りに出た。
庭のネコジャラシがなくなると近くの空き地に取りに出かけた。

部屋にはいつもネコジャラシがあった。
折れてしまったネコジャラシの穂の部分だけが転がっていたりした。
それを手に持ってもぞもぞ動かすと生き物のように上に出てくる。
マロンはそれに猫パンチを繰り出した。
それからヒゲの様に鼻の下に挟んでマロンと同じ目線になるとマロンは片手で落とそうとする。
わたしの顔に当たらないように、そっと優しくだけど。
ネコジャラシのあの青臭さが好きだった。

そのマロンが死んでしまったのはネコジャラシがどこにでも生えていた秋の事だった。

ある日、掃き出しの窓を開けているときにマロンは急に庭へ走り出た。
たぶん庭に生えていたネコジャラシが風に揺れるのを見つけたのかもしれない。
「マロン!」
わたしは悲鳴のような声で名前を呼んでいた。
その声に驚いたのか、マロンは向きを変え道路に飛び出してしまった。
運が悪かった。
マロンは走ってきた子供の乗った自転車に引かれてしまったんだ。
たかが、自転車だと思っていたのでまさか死んでしまうとは考えもしなかった。
自動車に轢かれたのではなかったのでマロンはきれいだった。
口から少しだけ血を流していただけだった。

わたしはお父さんがマロンを庭に埋めるのを泣きながら見ていた。

お父さんはマロンを埋めた上に「マロンの名前を書いた十字架を立てようか?」と言ってくれた。
でもわたしはうんと言わなかった。
そのお墓を見るたびに悲しくなると思ったからだった。

マロンが眠っているすぐそばにネコジャラシが揺れていた。

冬になり、庭が殺風景になった。
部屋のソファーの下から、枯れて茶色くなったネコジャラシが出てくるとまた泣きたくなってしまう自分がいた。

春になると庭に雑草がたくさん生えてきた。
雑草を抜くのはわたしの役目だったけれど、マロンが死んだあとは何となくやる気が起きずほったらかしになった。

夏が来ると更に雑草が増え、マロンの眠っている場所を覆い隠すぐらいになった。

わたしは元気をなくし、庭を眺めることもなくなっていたので、それに気がついたのは夏の終わりだった。
夕立で濡れたビニールのつっかけを履いて庭に出ようとした時だ。
ネコジャラシだった。
庭一杯にネコジャラシの穂が揺れていたんだ。
どうしてこんなにたくさんのネコジャラシが生えたのかわからなかった。

風が吹いて一斉にネコジャラシが揺れた。
どうしてもマロンの事を思い出さずにはいられなかった。
そのたくさんのネコジャラシの穂の下にたくさんのマロンがいるような気がした。

穂の一つ一つにマロンはじゃれていた。

まん丸い目で穂の動きを追うマロン。
手で引掛けようとするマロン。
飛びつこうとするマロン。
両手で挟もうとするマロン。
姿勢を低くして威嚇する様子のマロン。
穂を足で押さえつけるのに成功したマロン。

たくさんのマロンがネコジャラシで遊んでいるのが見える気がした。

「何してるんだ?」
お父さんの声が後ろから聞こえた。
すぐそばに立っているのが判った。
振り向けなかった。
涙が一杯あふれていたからだ。
そのままでわたしは言った。
「マロンに十字架、立ててあげようか?お父さん」




おわり




気がつけばブログを更新しないままそろそろ一か月が過ぎようとしているではありませんか!?
うっかりしていました。
いえいえ決して創作意欲が低下しているわけではありません。
ツイッター小説が好調の裏返しなのですね。

今、ツイッター小説がどんどん書けています。
一日に十本以上書くこともありますからね。
それだけで創作意欲が満足してしまっているのかもしれません。
まあ、ツイッター小説と言うのはアイデアのストックでもありますから、書けるときには書いておこうと言う感じですね。

で、今回の作品は昨日の夜に書いたツイッター小説を書きのばした最新作です。
これからはブログの更新も忘れずに続けて行きたいと思います。

なるべくね(笑)

ランキング参加してます。
クリックであなたに幸運が(笑)
    ↓
にほんブログ村 小説ブログ 掌編小説へ
にほんブログ村
[PR]
by marinegumi | 2015-10-16 14:01 | 掌編小説(新作) | Comments(0)