七つのクリスマス物語 (10枚)

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1 トナカクロース

サンタクロースはすっかり歳を取ってしまいました。
今ではもう世界中の子供たちにプレゼントを配りに行くことは出来ません。
だからこの時代では子供たちのお父さんお母さんがサンタの代わりにプレゼントを贈るようになっていたのです。
しかし、とサンタクロースは思います。
親のない子供たちもいるではないかと。
そんな子供たちにだけにでも、以前のようにプレゼントを配ると言うのはどうだろうかと。
そうは思っても体が付いて行きそうにありませんでした。

そこでサンタクロースは相棒のトナカイに行かせてはどうかと気が付きました。
あの頃のトナカイはサンタクロースと同じように年老いてはいましたが、子供や孫たちが大勢生まれ、数に不足はありませんでした。
暇を持て余していたトナカイたちもその話に大乗り気でした。
世界中の親のない子供たちの枕もとにそっとプレゼントをしのばせる。
それはとっても幸せな事でした。
プレゼントをもらう子供以上に幸福な気分になれるのです。
それはトナカイたちも一緒でした。

クリスマスも終わり、数日過ぎた頃から子供たちのお礼の手紙がサンタクロースの元へ届きはじめました。
その手紙をサンタクロースは目を細めながらトナカイたちに読んで聞かせました。
そしてその中にちらほらこういう手紙が混じっていました。
「プレゼントのおもちゃ、とってもうれしかったです。でも部屋の中が少し、けもの臭かったのはどうしてでしょう?」

もちろんそんな手紙はトナカイには読み聞かせはしませんでしたけどね。




2 プレゼント

わたしの彼ってさあ、ちょっと変わってるんだよね。
クリスマスに仕事が入ってさ、プレゼントが間に合わなかったのは、それはそれでしょうがないかも知れない。
その仕事がトラブっちゃって、しばらく会えなくって、渡すチャンスがなかったと言うのもあるかもしれない。
そのプレゼントを次の年のクリスマスのプレゼントに回すと言うのもまあ、百歩譲って許すとしてもさ。
食べ物には賞味期限と言うものがあるんだよね。

このスイートポテト、カビだらけじゃん。




3 サンタを訪ねて

誰だねそこに立っているのは?
ほら、雪が吹き込むからドアを閉めて入ってきなさい。
どうやってここまで来たんだい?
外はずいぶんひどい吹雪だったろ。
ああ、そうだよ。
私がサンタクロースだ。
正真正銘、本物のサンタクロースだよ。
え?なんだって。
君はプレゼントをもらえなかったと言うのかい。
それではるばるこんな所まで来たと言う訳か。
そうか、そうか、ご苦労だったね。
ふふふ、実は君へのプレゼントはここにあるんだよ。
君が来ることはちゃんと判っていたからね。
ほら、これだ。
メリークリスマス!

どうしたんだ?
こんなに大きなプレゼントの箱は見たことがないって?
そりゃそうさ。
これは特別なプレゼントだからな。
本当は君のパパとママがちゃんと用意してくれるはずだったものなんだよ。
君がクリスマス前に死んじゃったものだから渡せなかったのさ。

特別な、最後のクリスマスプレゼントだよ。




4 取扱注意

クリスマスの朝。
目が覚めてびっくりこん。
枕元にプレゼントの箱があった。
それも僕の背ぐらいある大きな箱だった。
持ち上がらないほど重い。
わくわくしながら開けてみると箱の中には半分ほど水が溜まっているだけだった。
包装紙にはさんであったメッセージカードを読んでみた。
「取扱注意。今年のプレゼントは雪だるまです。早めに冷凍庫に入れて下さい」

サンタさんお金がなかったの?
それともなにかの冗談?




5 使命

私がまだほんの子供だった頃。
クリスマスの朝、目覚めると枕もとには大きな靴下が片方だけ置いてあった。
毛糸で編んだ帽子にでもできそうな大きな大きな靴下だった。
その意味も解らず、かと言って捨てるわけにもいかず、なんとなく枕元の壁に掛けておいた。

その靴下はいつもそこにあった。
何度か家族は引っ越しをしたけれど、新しい家の私の部屋のベッドの枕元にはその靴下がずっと掛かっていた。
父を亡くし、母を見送り、子供たちはそれぞれ新しい家庭を作った。

ある日の鏡の中には白いひげを蓄えた私の姿があった。
ずいぶん年老いておかしいほどしわだらけだった。
自分でも驚くほど生気のない目をしていた。
その時、窓の外から鈴の音が聞こえて来たのだ。
今日はクリスマスイブだったのを思い出した。
枕元の大きな靴下がなぜか気になった。
孫が忘れて行った車のおもちゃを無意識のうちにその靴下の中に入れると、靴下は待ちかねたように消えた。

その時私は悟ったのだ。
これまでの人生が終わり、人のために尽くす新しい使命が始まるのだと。
ふわりと赤い防寒着がベッドの上に現れた。




6 いまどきのサンタ

雪深いフィンランドから世界中の子供達にプレゼントを発送する。
昔は世界中にいたサンタたちも今は私一人だ。
便利な世の中になったもので、すべての配達は赤く塗られたドローンが済ませてくれる。
私はプレゼントの発注をするだけだ。
運ばれてきた夥しい数のプレゼントはバーコードシステムで自動仕分けされ、自動でドローンに装着される。

おや?警報が鳴っている。
なに?ドローンが一機行方不明?
こんな時は赤外線カメラ搭載のトナカイドローンの出番だ。




7 クリスマスケーキ

クリスマスに残業だなんてほんとにもう嫌になっちゃう。
まあ、彼氏がいないのが幸いだね。
もしもいたとしたら喧嘩になっちゃうかもね。
寒~い。
早く帰ってテレビでも見て寝ちゃお。

あ、ケーキ屋さんがまだ開いてる。
そうだね。
今日は稼ぎ時だもんね。
この店でアルバイトしてたから知っている。
クリスマスには夜の十時まで開けてるんだよね。
そして、あのショーケースの中のたった一つ売れ残ったクリスマスケーキは、閉店後、つまりあと5分後には廃棄処分になるんだ。

気が付くと店の前にいた。
店員さんは見覚えのない人。
「これください」とクリスマスケーキを指差しているわたし。
どうしよう。
一人暮らしでは食べきれやしないのにさ。

ケーキの箱を持ってしばらく歩いて行くと後から覚えのある声が聞こえた。
「相変わらず優しいんだね、なっちゃん」
名前を呼ばれて驚いて振り返った。
あのケーキ屋さんで一緒にアルバイトをしていたケンジだった。
「そのケーキ。一緒に食べてやろうか?」
「あんた、彼女いたでしょ?」
「残念でした。去年のクリスマスに振られてさ」
「部屋に上がっても変なことしないでよ」
「しねーよ」


「あ、雪が降って来たよ」




おわり



おくればせながら、メリークリスマス

このクリスマスストーリーはツイッターで書いたものです。
クリスマスイブ、クリスマス、クリスマス明けと三日間で書きました。
どれも4~5分で考えて書いたものですが、今回長く書きのばしながら結末が違う物になったり、途中のエピソードがあれこれ浮かんで来たりして楽しく書けました。
一気に書き上げてしまいましたね。

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Commented by もぐら at 2015-12-30 13:33 x
読みに来ました~(*^^*)
七つともおかしかったりほのぼのしたりと素敵なプレゼントですね。

今年ははるさんとの朗読作品の時間がとれなかったのですが
来年はなんとかがんばりたいなぁと思っています。
来年はツイッター小説を七つ詰め込んでひとつのプレゼントにして
ダイヤモンドパヴェみたいにしても素敵だなぁ。

ツイッター小説を長く手を加えられた作品も良いのですが
元のツイッター小説の方も好きです。

プレゼント ありがとうございました。(*^^*)
Commented by haru123fu at 2015-12-30 17:07
海野さんがもぐらさんと私に下さったクリスマスプレゼントのような気がして
読ませて頂きました。
素敵な「七つのクリスマス物語」のプレゼントありがとうございます。
今年のクリスマスは体調が悪く、もぐらさんにおんぶに抱っこ状態でしたが、
来年は体調を整えて頑張りたいと思います。
Commented by marinegumi at 2015-12-31 00:05
もぐらさん、はるさん、読んでいただいてありがとうございます。
ツイッターって不思議なんですよね。
毎年、たくさんのクリスマスのお話を書いていたのに、今年は全然書く気がしなくて、書ける気もしませんでした。
でもクリスマスイブ、当日にパソコンの前に座るとぽっとアイデアが浮かぶじゃないですか。
それもまずまず、自分でも満足できるお話でした。
ぼくが毎晩のように書いているのは「ツイッターノベルミックス」略して「ツイリミ」#twremix と言う物です。
人の書いたツイノべを元にして新たな自分なりのお話を作る。
これは人のお話の一部をちょこっと変えるだけでもいいし、同じ言葉が入っているだけと言う感じでもいいし、テーマが同じで全く違う話でも構いません。
僕はなるべく違うお話にして、更にちゃんと落ちを付けて小説としてまとまったものにするように心がけています。
このツイリミは、ほぼ5分以内に考えて書いてしまうので、発想の訓練になっているようですね。
Commented by りんさん at 2015-12-31 12:16 x
それぞれに、いいお話ですね。
クスッと笑えたり、しんみりしたり、ほのぼのしたり。
特に4番が好きだな~
クール便で送らなきゃダメじゃん^^

来年もよろしくお願いします。
よいお年をお迎えください。

Commented by marinegumi at 2015-12-31 21:57
りんさんこんにちわ。
そうですね~
僕は3番と7番がお気に入りですね。
基本的にファンタジー系の悲しいお話が好きですが、ラブコメっぽいのも結構好きです。

良いお年をお迎え下さい。
by marinegumi | 2015-12-29 01:07 | 掌編小説(新作) | Comments(5)