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海野久実が掌編小説やら短編小説を書いています。タイトルの後に原稿用紙換算の(枚数)があるのが小説です。


by marinegumi
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イチゴのショートケーキ (3枚)

写真は、フリー写真の「ぱくたそ」さんでお借りしました
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気がつくとぼくは暗い部屋に立っていた。
何となくの雰囲気と匂いで自分の部屋だと分かった。
ひょっとしてぼくは立ったまま眠っていたんだろうか?
でも、眠りから覚めたという感じはしない。
ただ、そう、気がついたとしか言いようがないんだ。

部屋は真っ暗ではない。
どこからともないほのかな光が部屋全体に満ちている感じだった。
ぼくはなんとなく壁に掛けてある大きな鏡の前まで歩いた。
この鏡はぼくのおばあちゃんが残したものだ。
床の上から2メートル近くも高さがある。
ちょうどこの部屋のドアぐらいの大きさだった。
そう、この部屋は前にはおばあちゃんが使っていた。
おばあちゃんが死んでから間もなくぼくの部屋になった。
家具もベッドも、すっかり入れ替えたけれど、この鏡だけはそのまま残っている。
夜中に目が覚めてトイレに行く時なんかは、必ずこの鏡の前を通る。
そしていつも暗い部屋にいる鏡の中のぼくと目が合うのだ。
なんだかその鏡の中のぼくは、ぼくとは違うもう一人のぼくのような気がした。
今にも、ぼくの動作に縛られず勝手に動き出すのではないかと不安混じりの不思議な気持ちになった。
でも、決してそれは怖いと言う感じではなかった。
薄暗い部屋の中にいる鏡の中のぼくが昼間のぼくとは違う存在のような気がしたのだ。

いつもするようにぼくは鏡の前に立ち、横目で鏡の中のぼくを見ようとした。
でもそこには誰も映っていなかったんだ。
ただ薄暗い部屋がぼうと映っているだけだった。
手を伸ばしてみた。
その伸ばした手も鏡に映る事もなく、鏡の表面に触りもしなかった。
勢い余ってぼくの体はするりと鏡の向こうにすり抜けてしまった。
振り返って手を伸ばすと冷たく硬いガラスの感触があった。
閉じ込められた?
一体どうやって鏡は扉を開き、また閉じてしまったんだろう?
鏡の外側の薄暗い僕の部屋が見える。
窓際に置かれたテーブルの上に見なれない物があった。
それは額に入ったぼくの写真らしかった。
その写真の前には、お皿に乗ったぼくの大好物のイチゴのショートケーキが見えた。



おわり



ブログ「ゆっくり生きる」のはるさんが朗読の動画にしてくださいました。


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Commented by haru123fu at 2016-05-15 22:35
海野さんの作品をずっと待っていました。
私では、チョット無理があるかなと思いながらも、
ずっと待っていたので、朗読させて下さいますか?
お願いします。<(_ _)>
Commented by marinegumi at 2016-05-16 11:33
はるさんこんばんは。
おまたせ~(笑)
小説はすでに書き上がったものもあるんですが、例の「SSスタジアム」に参加しているので、これはブログに上げずに取っておこうかな、なんて感じになってしまうんですよね。
こっちも忘れてはいません。
朗読宜しくお願いします。

一部分だけちょこっと修正しました。
間に合ったかなあ?
Commented by haru123fu at 2016-05-16 19:09
ごめんなさい。音にすでに音楽をかぶせているので、
修正が効きません。これから画像をつけるよていでいます。
海野さんが更新されたのが嬉しくてつい先走ってしまいました。
Commented by りんさん at 2016-05-17 23:13 x
切ないですね。
最後の最後にショートケーキが出てきましたね。
写真に備えてあったなんて悲しい。
こういう雰囲気のお話は、海野さんならではですね。
Commented by marinegumi at 2016-05-18 00:16
はるさん大丈夫ですよ。
手を伸ばしただけで、勢い余って体がすり抜けると言うのは不自然かなと思って、鏡の表面に触りもしなかったと言うのを入れました。
Commented by marinegumi at 2016-05-18 00:24
りんさんこんばんは。
そうなんです。
最後の最後にイチゴのショートケーキを出すのが効果的かなって思って。
タイトルが「イチゴのショートケーキ」なのにちっとも出てこないな~なんて思って読んで行って出て来た時に真相が判る。
Commented by haru123fu at 2016-05-26 20:56
海野さん、雫石さんのブログが、5月14日を最後に更新が途絶えています。雫石さんの身に何かあったのではないかと、心配しています。
海野さんは、雫石さんとお知り合いなので、何かご存じではありませんか?お元気ならば良いのですが・・・
Commented by suguri_madarao at 2016-05-26 23:29
はるさんこんばんは。
雫石さんはお元気なようですよ。
ただ、入院されているようです。
間もなく退院、ブログも再開されると思います。
まあ、その辺の事情はご自身がブログに書かれると思います。
僕ならタブレットで病院から更新するんですけどね(笑)
Commented by haru123fu at 2016-05-27 09:39
♪♪ sugri madaraoさんへ
そうでしたか。わざわざありがとうございます。
おかげ様で、少し安心しました。
間もなく退院とはウレシイです。
本当に、ありがとうございます。
Commented by marinegumi at 2016-05-27 12:05
あらあら。
suguri madaraoは漫画を描いていた頃のエキサイトIDです。
一度コメントを書いて、suguri…になっていたので慌てて消して、ログインしなおして書き直したはずだったんですけどね。
何やってんだか。
by marinegumi | 2016-05-15 18:42 | 掌編小説(新作) | Comments(10)