食べ物 (3枚)

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旅の途中だった。
ある村を通り過ぎようとしていた時に、もう食料品がない事に気がついた。
もうそろそろ昼になる頃で、急に空腹を感じた。
そこに何やら小さな食料品店らしい小屋が見えて来る。
店先に立つと一人の黒づくめの服を着た老婆が中に座っているのが見えた。
いくつかある台の上にはかごに盛られた卵ぐらいの大きさの白いものが並んでいる。
多い少ないはあるものの、どのかごもみんな同じものだった。
「これは何ですか?タマゴかな?」
そう声をかけるとそれまで影の様に身動きしなかった老婆はのそりと体を動かした。
「食べ物じゃよ」
「ええ、何という食べ物なんですか?」
老婆はまじまじと私の顔を見た。
そしてよそ者だと気がついて納得したのか、小さくうなづいた。
「食べ物じゃよ。そう。タマゴだと思って食べればそれはタマゴだし、肉だと思って食べればそれは肉なのじゃ」
「ええ?そんな食べ物があるんですか?」
「そうじゃよ。だからこの村の者はみんなこれを買って帰るのさ。畑を耕す必要も、狩に出かける必要もない」
「それじゃあ私もいただきます。これぐらいでいいかな」
私は10個ぐらいが盛られたかごを指さした。
老婆は皿から紙袋にそれを移し替えると私に差し出して言った。
「12ハンスじゃ。一回の食事に1個でいいよ」
食事10回分ならそれほど高くもない。

しばらく歩いて村はずれの川のほとりで私は座って食事をすることにした。
白い丸いものは触ると軟らかくて不思議な感触だった。
しっとりしているようで乾いているようで、潰れそうでいてしっかり弾力がある。
「食べる時はこれが食べたいものだと想像して食べるんじゃよ」
老婆の言葉を思い出していた。
それを口に入れた時、変な想像をしてしまった。
「し、しまった」
またたく間にひどい吐き気とめまいに襲われた。
そして意識が遠のいて行く。
私はそれを毒キノコだと想像してしまったのだ。




おわり




ブログ「ゆっくり生きる」のはるさんがこの作品を朗読の動画にしてくださいました。
いつもありがとうございます。



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Commented by haru123fu at 2016-05-28 21:04
そんな食べ物があったら、食事の支度をしなくても良いので
凄い主婦の味方になってくれるでしょうね。
朗読のお願いです。よろしくお願いします。

追伸
雫石さんのこと安心しました。もぐらさんと二人でとっても心配していました。
でも、4コマ漫画とても面白かったです。
間違ってくれてありがとうございます。
今度は、朗読できる4コマ漫画を書いてもらいたいなあ~(^_-)-☆
Commented by marinegumi at 2016-05-29 00:17
はるさんこんばんは。
ショートショート講座の記事と記事の間に小説が一本だけしかないのに気が付いて、これではいかんと思って急きょ仕事中に書いてみました。
朗読よろしくお願いします。

4コマ漫画もねえ。
ストーリー漫画を描くのがしんどくなって描き始めた感じなんですよね。
今は4コマ漫画さえ描くのがしんどくなって小説を書いてる感じなんです。
小説だけは何とか書くのがしんどくなりませんように。
by marinegumi | 2016-05-28 18:47 | 掌編小説(新作) | Comments(2)