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海野久実が掌編小説やら短編小説を書いています。タイトルの後に原稿用紙換算の(枚数)があるのが小説です。


by marinegumi
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雨宿りの木 (3枚)

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学校帰り。
青空の下。
僕はビニール傘をステッキの様に持って、左右に揺らしながら歩いていた。
街を外れ、川に架かった橋を渡り、いつもの野原の中の道を歩いて行く。
女の人が怪訝そうな顔で僕を見送っていた。

やがて空に雲がかかり、間もなく雨が降り出した。
ビニール傘を開く。
雨は強くなりビニール傘の上を流れる。
しばらく歩くと小さな池のそばの一本の大きな木が見えてくる。
そしてその木の下には雨宿りをする映子ちゃんがいた。
「こんにちは」
僕が声をかけると映子ちゃんはにっこりとほほ笑む。
いつも胸がきゅんとするすてきな笑顔だ。
僕は今日、学校であった事をあれこれ映子ちゃんに話してあげる。
「へえ?そうなの」
「麻衣ちゃんが?」
「そんなのうそでしょ!」
映子ちゃんはそういう風に相槌を打ちながら楽しそうに聞いてくれる。
話し終わり、ふと沈黙が下りる。

僕はいつも迷っている。
映子ちゃんに告白するかどうかを。
こんなにも好きで好きでたまらない気持ちを打ち明けるかどうかを。
でも、いつも決心がつかないのだ。
映子ちゃんが僕の気持ちを受け入れてくれたら僕はどうなるのだろう?
君とずっと一緒にいられるのだろうか?
映子ちゃんは可愛かった。
まつ毛の一本一本さえ現実的に見えた。
幽霊だなんて信じられなかった。

あいつに振られただけで、雨の日にこの池に身を投げた映子ちゃん。
何でいつまでもここにいるんだい?
僕が会いに来るのを待っているの?
そして僕が告白するのを待っていてくれてるのかい?

木の下に幽霊が出ると言ううわさで、この辺りには誰も寄り付かない。
どんなに良いお天気の日でも年中雨が降っている不思議な場所。
毎日僕が学校に傘を持って来るのは映子ちゃんに会うためだ。

さよならを言って僕は歩き出した。
いつか映子ちゃんに告白する日が来るのだろうか?



おわり



この作品はりんさんのブログ「りんのショートストーリー」の作品「雨が嫌いになった日」のコメント欄に書いた僕のお話のアイデアを元にしてでっち上げた作品です。
こういうコメントをしたことさえ忘れていましたが、今日、ふと思い出してしまいました。
と言うか、長いコメントだったのでワードで下書きをした物が残ってたんですね。
それを見つけて、なんだこれはと思って。
それを元に一つ書いてみようと言う事になったわけです。

りんさんの「雨が嫌いになった日」は2013年6月の作品ですね。
そして、映子ちゃんはこの作品の登場人物と同じ名前です。

ブログ「ゆっくり生きる」のはるさんがこの作品を朗読の動画にしてくださいました。
いつもありがとうございます。


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Commented by りんさん at 2016-06-03 18:25 x
ああ、懐かしいです。
海野さん、いつも面白いコメントを書いてくれて、コメント欄だけではもったいないと常々思っています。
いつも雨が降ってる木なんて、神秘的でいいですね。
タイトルもいいです。
Commented by marinegumi at 2016-06-13 16:03
りんさんありがとうございます。
りんさんの作品からも、いろいろヒントをいただいています。
この作品、最近書いたものの中では気に入った作品になりました。
>いつも雨が降っている木。
あ、そうか。
木の周りのごく限られた空間にだけ降っている事にした方がいいかな。
Commented by haru123fu at 2016-06-13 23:24
素敵な作品ですね。
朗読のお願いです。どうぞよろしくお願いします。<(_ _)>
Commented by marinegumi at 2016-06-14 18:15
はるさん、朗読宜しくお願いします。

下の作品「食べ物」を書いた次の日にこの作品を書いていますが、その時は何となくこれくらいなら毎日でも書けそうな気がしていました。
まあ、他に何もすることがなければ毎日でも書けるんですけどね。
by marinegumi | 2016-05-29 16:58 | 掌編小説(新作) | Comments(4)