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海野久実が掌編小説やら短編小説を書いています。タイトルの後に原稿用紙換算の(枚数)があるのが小説です。


by marinegumi
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クリスマスイブの雪 (3枚)

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真っ暗い空から雪が降っている。
この町では雪が降るのさえ珍しいのに、今夜はまたちょうどクリスマスイブだった。
しかし積もるほどには降らないだろう。
「おねえちゃん。覚えてる?」
「何をよ?」
その枯れかけた生け垣に囲まれた狭い瓦礫だらけの土地に二人は立っていた。
少年は12歳ぐらい。
少女はそれより1〜2歳年上に見える。
二人とも真冬にしてはずいぶん薄着だった。
マフラーも手袋もしていない。
「昔のクリスマスイブさあ。ここにあった家に住んでた頃、サンタクロースが来たっけね」
「ウフフ、あんた覚えてんだ」
「あの日もこんなふうに雪が降ってたもん」
「そうだよね。ホワイトクリスマスだ〜ってみんなはしゃいでた。思い出してみるとさあ、たぶん雪の降ったクリスマスなんて、あの日と今日と二回だけじゃないかなあ?」
少女は掘り返されたコンクリートの塊(かたまり)に腰を下ろして、今はない我が家を思い描いた。
「うちには煙突があったよね。細くて今にも折れちゃいそうな煙突。あんたったらあんな煙突からサンタさんが入って来れるか心配してさ。何度も何度も、ねえおねえちゃん、どうしよう?どうしたらいい?ってしつこいの。あたし、もういやんなっちゃってさ、あんたの頭げんこでなぐっちゃった」
少女はぺろりと舌を出す。
「ひ、ひどいなあそれ」
「あんた、それは覚えてないのね。ああ、そうか。たぶんそのすぐあとにサンタさんが入って来てびっくりしたからでしょ。急にバターンってドアが開いてさ。雪が吹き込んでサンタクロースが立ってたんだもん」
「サンタさんにもびっくりしたけど、ドアが外れて倒れちゃってさ。花瓶が壊れるし、カーテンは破れるし、サンタさんぼーぜんとしてたよね」
「ボロっちい家だったもんね。平屋のさあ、二軒長屋の半分を切り取った家だったから」
「あのあとどうなったかよく覚えてないんだ。プレゼントもらって嬉しかったのは覚えてるけどさ。そうだ、このサンタはお父さんが化けてるかもしれないって思ってジロジロ見てたら、奥の部屋からお父さんが出てきて、ご苦労さんって言ったような……」
「あれはきっと本物のサンタさんだったんだよ」
「なつかしいよね、あの頃が」
「何言ってんの、年寄りみたいに」
笑いながら二人は空を見上げた。
もうしばらく雪は降り続きそうだった。
取り壊された家のあとに残されている瓦礫の上に、うっすらと雪が積もっていた。
その時、隣の土地に建っている家の掃き出し窓のカーテンが開いた。
女の人らしい人影が見え、その人はサッシのガラス窓を開いて叫んだ。
「あんたたち!そんなところで何してるのよ!」
二人は顔を見合わせた。
「そんな薄着じゃ風邪引いちゃうわよ。早く入りなさい!」

二人が家族と住んでいた家は取り壊されたが、それに先立って隣の土地に新しい家が建てられていた。
古い家のあった土地は来年にでも整地され、新居の裏庭になる予定だった。
「暖房きかせすぎるからさあ、ちょっと涼んでたんだよな。へ〜クション!」
「あ、ほら、言わんこっちゃない」



おわり



はるさんともぐらさんのクリスマスパーティー用に書き下ろした作品です。
病室からの更新3本目〜(笑)

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Commented at 2016-11-10 15:54 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by りんさん at 2016-11-10 19:26 x
お加減はいかがですか。

早いですね。もう書いたんですか、クリスマス。
この子供たちは、もしかして幽霊なのかなとか、いろいろ考えながら読みました。
生身の子どもたちだったんですね。よかった^^
サンタがドア壊したり、カーテン破ったりっていうのを想像したら笑えました。
Commented by marinegumi at 2016-11-10 21:20
カギコメの◯◯らさん。
朗読はたいへんなんじゃないかと思って早々と書かせていただきました。
Commented by marinegumi at 2016-11-10 21:36
りんさんありがとうございます。
もう後はリハビリに時間がかかりますが、日にち薬と言うやつですね。
キーボードで打てる様になって、更に時間はあるし、小説書くにはいい環境です。

身寄りのない姉弟と思わせといて……
と言う感じだったんですけど、幽霊かあ。
それでもよかったかも(おいおい(-_-;))
Commented by もぐら at 2016-11-12 00:57 x
あり??なぜかカギコメになってる。
ごめんなさい。

お気遣いありがとうございます。
はるさんと一緒にがんばります。
海野さんもリハビリがんばってくださいね。
ありがとうございます。
Commented by marinegumi at 2016-11-12 08:25
◯◯らさんいらっしゃい(笑)
もぐらさんて、前からカギコメ率が高いなと思っていたんです。
別にカギコメでなくてもよかったんですね。
なんでカギコメになっちゃうんでしょうかねえ。

ありがとうございます。
入院はリハビリ以外にすることはないので小説を書く時間がいっぱいあって、嬉しい。
by marinegumi | 2016-11-09 09:48 | 掌編小説(新作) | Comments(6)