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ハートのペンダント (3枚)

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お母さんが死んでから、ぼくは毎日のように泣いて暮らした。
さみしくてさみしくて、どうしようもなかったんだ。
お母さんがいなくなってぼくはただのぬけがらになったような気がしていた。
涙ばかりでふくらんだぬけがらだ。
一日がすぎるのが長かった。
こんな日がずっと続くのはたえられないと思い始めていた。
 
ある日、お父さんが中古の主婦ロボットを買ってきてくれた。
「死んだお母さんの事は忘れるんだぞ」
そう言いながらロボットのスイッチを入れた。
小さな機械音がしてロボットは目を覚ました。
「よろしくおねがいします」
と、やさしい声で言った。
「お前が好きな名前を付けなさい」
ぼくはお父さんにそう言われてロボットに名前を付けた。
「マーミー」と。
それは「お母さん」でも「ママ」でもない。
代わりになんてなれないと言うぼくの思いからだった。

ロボットは家事の合間にぼくと遊んでくれたのでたいくつはしなくなった。
顔はとても良く出来ていて、本当の女の人のように見えた。
ぼくにやさしい言葉もかけてくれる。
でも声も顔もぜんぜん無表情だからぼくのさみしさは少しもまぎれなかった。
ふと一人になったとき、またすぐに涙が出てしまうんだ。
ロボットはやっぱりロボットなんだと思った。

ある日お父さんがハートのペンダントを買って来た。
「ほらプレゼントだぞマーミー」
そう言いながら箱から出してロボットの首にかけてあげた。
すると急に動かなくなり、首をうなだれた。
ぼくが心配していると、数十秒後に小さな機械音がして目を開け、マーミーはすごい笑顔になった。
「再起動したんだ」とお父さんが言った。
マーミーはぼくの方にくるんと向き直るとはしゃぐように言った。
「まあ、うれしいわ。なんて素敵なペンダント。似合うかしら?ぼうや」
マーミーはその声もその顔も見違えるように表情豊かになっていた。
ぼくは胸がチクリとした。

そのペンダント型の物は、ロボットに感情を入力するオプションだったんだ。
ただのロボットだったマーミーは、その日からぼくの、ぼくたちのマーミーになった。
お母さんでもなくママでもなかったけれど。




おわり



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Commented by 雫石鉄也 at 2016-11-14 13:50 x
 最近、ぼくはマーミーのペンダントを外そうかと思うようになった。
 マーミーがやたら口うるさくなった。
「ご飯の前は手を洗いなさい」
「学校の帰りに寄り道しちゃだめでしょ」
「ほら、また、着替えを脱ぎっぱなし。ちゃんと洗濯カゴにいれなさい」
「トイレの電気つけっぱなしです」
「夕食前に帰ってこなくてはいけません」
「なんですか、このテストの成績は」
マーミーは「かあちゃん」になってしまった。

なにごとも「副作用」はあるのではないでしょうか。
Commented by marinegumi at 2016-11-14 20:39
雫石さん、続きをありがとうございます。
感情を入力するオプション。
そうか〜
優しい感情だけではなかった訳ですね。
とんだ勘定(計算)違いかも。
Commented by りんさん at 2016-11-15 19:03 x
ぼくはすっかり大人になった。
でもマーミーはロボットだから変わらない。
このままではマーミーの年を越えてしまう。
そうしたらぼくたちの関係はどうなるのだろう。
そんなとき、お父さんが新しいペンダントを買ってきた。
中に数字が入っている。
「ダイヤルで合わせた数字が、マーミーの年齢になるんだ。お母さんが生きていれば50歳だから、マーミーも50歳にしよう」
お父さんが数字を50にして首にかけようとしたら、マーミーがすごい勢いで拒否した。
感情を持ったマーミーは、年を取るのがイヤみたいだ。
(おそまつ)
Commented by marinegumi at 2016-11-15 20:39
りんさんも続きをありがとうございます。
何だかお話がコメディーっぽくなって行くのが楽しいような、ちょっと悲しいような(笑)
でもでもお二人ともさすがです。
by marinegumi | 2016-11-12 19:12 | 掌編小説(新作) | Comments(4)