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海野久実が掌編小説やら短編小説を書いています。タイトルの後に原稿用紙換算の(枚数)があるのが小説です。


by marinegumi
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瓶の中の手紙 (3枚)

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乗っていた船が沈んでしまった。
俺は海に放り出された衝撃で気を失い、救命ボートに乗り損なってしまったらしい。
気がつくと何やら大きな木箱に掴まっていた。
「遭難」と言う文字がズーンとクローズアップになった。
まさかのまさか、俺は遭難しているのだ。
自分の掴まっていた木箱の蓋を開けてみるとワインや調味料の空き瓶ばかりが入っていた。
おそらく空き瓶の回収用の箱だったのだろう。
そのたくさんの空き瓶のお陰で浮力は十分にあり、上に乗ってもひっくり返ることはなかった。
これで溺れて死ぬ心配はしなくて済みそうだ。
空き瓶の中には、まだ中身の残っている水のボトルもかなりあるようだった。
また、食料品は船の残骸と一緒に漂流しているものをそこそこ回収できたので、飢えて死ぬ心配もとりあえずなくなったわけだ。

漂流して二日目の朝を迎えた。
ポケットを探ると手帳とシャープペンがあった。
箱の中にはたくさんの空き瓶。
それでふと思いついた。
海を漂う瓶の中の手紙。
メッセージボトルというやつだ。
なんかそういう物語を読んだ記憶があったのだ。
何もすることがないので、なんとなくそれをまねてみる気になった。
コルク栓も瓶に混じってたくさんあったのだ。

一通目の手紙を書いてみる。
 
漕難二日目。船の残害に捕まって票流を続けている。私はこのまま稚にも見つけて貫えず冷たい限寒の海で死ぬのだろうか。
 
まあ、冬とは言え結構南の方なので水もそんなに冷たくはない。
箱の上に座っているので天気さえ良ければ暖かいのだが、こう書いたほうがドラマチックだし。
 
ポケットにあった手長のページを一枚づつ切り取り手期を知るし、瓦に入れて流すことにした。恐らく稚にも読んでは貫えないだろうけれど毎日流すつもりだ。
 
まあ、毎日流すとしてもコルク栓がなくなるとまでは行かないだろう。
昔と違って通信手段が発達している。
連絡を受けた船が何隻もこの辺に向かって来ているに違いない。
まあこれを書くのはちょっとした暇つぶしになればいいと思ってのことだ。

この手紙を海部で拾うのはどんな人だろうか?私はそんな貴片の溜めだけにこれを書いているかも知れない。助けを求めている釈ではない。稚かが私の思いを受け止めて暮れるだけでいいのだ。私の生きた詔を。
 
名前と日付を書いてと。
 
書き終わると、透明な瓶の中に入れコルクでしっかりと栓をして、力いっぱい、ポ〜ンと放り投げた。
波間にしばらく揺られていたそれはあまりに小さく、すぐに見えなくなった。
 
そこでふと、不安になった。
「誰」と言う字を「稚」と書いてしまったような気がしたのだ。
いや、待てよ。
もっと他の字も間違っていたかもしれない。
考えれば考えるほど、あの手紙は誤字だらけなのではないかと思えて来てしまう。
誰かに読まれたら、こんな恥ずかしいことはない。
 
俺は慌てて海に飛び込み、瓶を回収しようと泳ぎ始めた。

 
 
 
お割
 
 

ツイッター小説にちょいちょいと手を入れて、ショートショートの出来上がりっと。
入院中小説第5弾(笑)

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Commented by りんさん at 2016-11-15 19:08 x
こんなときにまで誤字が気になるなんて(笑)
だけどこのまま頑張って泳いで、岸にたどり着くかもしれません。

加納朋子さんの「トオリヌケキンシ」を読みました。
すごく面白かったです。
短編で読みやすいし、聞いたことのない特殊な病名が出てきたりして興味深かったです。
最後の話に、今までの登場人物がサプライズ的に登場するのも楽しいですね。
いい本を教えてくれてありがとうございます。
近くの図書館はしょぼくて、「トオリヌケキンシ」と「モノレールねこ」しかありませんでした。
Commented by marinegumi at 2016-11-15 20:28
りんさんありがとうございます。
普段文章を書くときは機械が変換してくれるので、実際はこんなものかも。
いやいや、ちょっと極端ですが。

「トオリヌケキンシ」はほんと、面白いですよね。
加納さんの本の最新刊だったかな。
「モノレールねこ」は僕が最初に読んだ加納さんの本です。
面白かった事だけは覚えているのですが内容をほぼ忘れてるようなので、今まさに読み返している最中です。
Commented by okuma at 2016-11-16 00:11 x
やられた!>正誤表を作りかけていた私(汗)
しかしこのオチ、そもそもは慣れないタッチパネル入力で打ち間違い続出したのを、そのまま活かそうとしたものと推量しましたが、如何(^^;
Commented by marinegumi at 2016-11-16 07:34
okumaさん。いらっしゃいませ。
>正誤表
そこまで引っ掛かっていただいて、ありがとうございます。
>打ち間違い続出したのを、そのまま活かそうとしたもの
ではないんですね、これが。
元は何年か前のツイッター小説です。
作品中では手書きで間違うので、変換間違いでは出てこない形の似ている漢字も調べて使用しました。
Commented by okuma at 2016-11-16 14:03 x
おや、そうでしたか。じゃあ二重に騙されてしまいましたね(^^;
by marinegumi | 2016-11-15 13:13 | 掌編小説(新作) | Comments(5)