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年末大入り福袋 (13枚)

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いらっしゃいませ〜
年末のなんでもありの福袋ですよ。
ショートショートが12本。
読むのがいやになっちゃうほど(笑)てんこもりです。




一、痛いの、痛いの
 
逃亡中の銀行強盗に幼い女の子が人質になっていた。
強盗は警官に拳銃で足を撃たれながらも追手を振り払い、路地の奥に逃げ込んでいた。
「痛い、痛いよ。くそ、あのポリ公め。どうにかしてくれ〜もう歩けねえよお」
後ろから抱えられナイフを突き付けられている女の子が言った。
「痛いの、痛いのとんでけ〜」
「あ、痛くなくなった。こりゃいいや。ようし、車でも盗んで逃げてやる」
「痛いの、痛いの、戻ってこーい」
「いててて〜」
実は女の子は魔女っ子だったのです。
「おい、もう一度痛いのを飛んでかすんだ!」
強盗は女の子のほっぺをペタペタとナイフでたたきながら恐ろしい顔で言いました。
「痛いの、痛いの、怖い顔、怖い顔、飛んでけ〜」
強盗の顔はイケメンのお兄さんになりました。
頭ごと入れ替わったので、もう強盗ではありません。
そのまま警察へ行って、もう一度イケメンお兄さんと強盗の顔を入れ替えましたとさ。
 
 
 
 
二、目覚し時計

目覚し時計が叫んでいる。
「起きろ! 起きるんだよ! このものぐさ野郎」
え? 僕の目覚ましはアナログ時計だぞ。
しゃべる機能なんてついてないはずだ。
「おらおら、起きないと遅刻するだろ!」
でも確かにあの時計が喋ってる。
だけどなんて口の悪いやつなんだろう。
「起きろって言ってるのがわかんねえのか! このおたんこなす!」
「なんだその言い方は! もうちょっと言い方があるだろ!」
「やかましいわい! お前にはこれぐらい言わないと……」
僕はムカついてその時計を壁にぶつけてやった。
時計は壊れて外装は床に落ち、脳みそや内臓や血が壁にぶちまけられた。


 
 
三、よく伸びる靴下
 
クリスマスの朝、枕元に下げてあったはずの靴下がなくなっていた。
大きなプレゼントでも入るように、せっかくよく伸びる靴下を買ってきてたのに。
プレゼントもないし、靴下もなくなってるなんて。
誰かに盗られたんだろうか?
ため息をつきながらカーテンを開けた。
でも窓の外がぼんやりしている。
霧がかかったように見える。
下へ降りて玄関のドアを開けようとしたけれど抵抗がある。
何か柔らかい物が押さえているみたいだ。
目の荒い布の様だ。
ハサミでそれを切り裂いて外へ出てみてびっくり。
大きく伸び切った靴下のその中、ボロっちいわが家の代わりに新築の家があったんだ。




四、どんぶらこ 
 
むかしむかしに、お爺さんとお婆さんの暮らした村はもうありません。
大きなダムの底に沈んだのです。
お爺さんが芝刈りをした山から見下ろせば、そのダム湖がよく見えます。
お婆さんが洗濯をした川がそのダムに注ぎ込んでいます。
その川を今でも年に一回、大きな桃が流れて来るのです。
どんぶらこ、どんぶらこと。
大きな桃はそのダム湖に浮かんで流れ、やがてダムのコンクリートに堰き止められます。
それ以上下流に流れて行く事もありません。
やがてそのまま腐ってしまうのでした。
 
 
 
 
五、約束の木
 
夏のあの日、君と約束したね。
「転校するの」と涙ぐんだ君は、ぼくの目を一度もまともに見なかった。
小学校の裏の林の中。
一本の大きな、名前も知らなかった木の下で。
どんなに離れても遠くへ引っ越しちゃっても、今日と同じ日に、この同じ場所で会おうと。
来年は無理だとしても、再来年。
再来年がまだ無理なら……
必ずいつかここで会おうねと、そう言って別れた。

でもそれからしばらくしてうわさを聞いた。
君が交通事故で死んだって。
ウソだと思った。
そんなこと信じてやるもんかと。
 
雪深い街の小学校。
放課後にふと思いついて林の中へ入ってみた。
新しい雪を踏みながら歩いて行くとその木を見つけた。
雪で白くなった木の中に1本だけ雪をかぶっていない木があった。
みんな葉を落として丸裸なのになぜかその木だけが青々と葉を付けていた。
そうだ、それはあの日の約束の木だった。
不思議なことにその木の周りだけ地面に雪がなかった。
木に近づけば近づくほどそのあたりがほんのりと暖かくなった。
木にもたれて目を閉じた。
空気はもうあの夏のものだった。
遠く蝉が鳴いている。
夏の日差しさえ感じた。
誰かが近づいてくる足音が聞こえた。

目を開けても君の姿はなかった。
でもこれはきっと君の約束なんだね。
いつでもここへ来るとあの夏の日があるんだね。
 
 
 
 
六、夢のデート
 
夢の中で夢の中だけの彼といつものドライブデート。
まるで夢みたいなイケメンの彼とさ。
夢でしか見れない夢のような絶景スポットにいつも連れて行ってくれる。
まあ夢なんだけどね。
一晩中、夢のような夢の中のデート。
そろそろ起きる時間が近づくとその時間に合わせてまた車で送ってくれるんだ。
でも今日は道路が大渋滞してる。
眠りの国の羊さんの群れが道路を横切ってるんだって。
その群れがものすごい数なんだ。
ああ、もう学校、遅刻しちゃう。
 
 
 
 
七、竜宮城秘話 
 
「乙姫様、毎年の特殊エステの時間です」
「おお待っていました。この頃シミそばかすがひどくてな」

乙姫は裸になって透明なカプセル状のSFチックな装置の中に入ります。
するとその中では大量の水色の霧が発生して乙姫の体を包んで行き、霧の効果で体中の老廃物が排出され、さらに乙姫の体にはエネルギーが隅々まで行き渡ります。
20分後、乙姫は輝く様な美しさを取り戻しているのです。

回収容器には白い気体になった乙姫の老廃物が溜まっています。
その老廃物は玉手箱に貯蔵され、いつか再利用の時を待つのでした。

 
  
 
八、天使と悪魔 
 
受験勉強をしている。
頭の上の天使は「頑張れば合格できるよ」とささやく。
右耳の悪魔は「眠ければ寝ちゃえば」と誘惑する。
左耳の悪魔は「それよかゲームしようぜ」とそそのかす。
右肩の悪魔は「彼女と遊びに行かないか」と提案する。
左肩の悪魔は「そろそろタバコでも覚えようぜ」と煙を吹きかける。
右手の悪魔は「ドライブしようぜ、無免許でもいいじゃん」と警笛を鳴らす。
左手の悪魔は「万引きってスリルがあるぜ」と人差し指をぴくぴくさせる。
「こんなやつほっといて踊りに行こうぜ」と、たった一人の天使を誘惑している悪魔もいる。
 
 
 
 
九、読み聞かせ
  
眠る前、母親は毎晩少年に童話の読み聞かせをしていた。
優しく、強く、表情豊かに。
いつも飼犬のベルがそばでそれを見守っていた。
まるで同じ物語に聞き入っているように見えた。
 
ある日、母親が風邪をひいた。
その日は少年はベッドで一人きりで眠ろうとしていた。
でも、なかなか寝付けないようだった。
その手持ち無沙汰の少年の枕元に飼い犬のベルは座った。
そしていきなり鳴きはじめたのだ。
「ワオーンク~ンク~ンワンワン…」
優しく、強く、表情豊かに。
それは、読み聞かせのつもりだった。
最初はうるさそうにしていた少年も、やがて眠りについた。
 
 
 
 
十、生まれかわり
  
高い高い断崖絶壁の上。
ここは自殺の名所。
そんなあまりにもベタな所で、若いカップルが心中をしようとしていた。
「来世は一緒になれます様に」
二人で神様にお願いをした。
まさに飛び降りようとした時に神様が現れた。
「命を粗末にするやつの願いは聞けないぞ」
と、二人に言った。
「二人共、それぞれ自分の今の運命を受け入れて天寿をまっとうしなさい。そうすればその願いを必ず叶えてやろう」
と言った。
 
やがて二人は年老いて死に、生まれ変わった。
約束通り二人の魂は一人の赤ん坊に宿った。
これが二重人格の生まれるメカニズムだと言う。
 
 
 
 
十一、パラレル・シンデレラ
  
舞踏会が始まる前に王子様は一度シンデレラを見かけ、気になっていました。
ところがその後、踊る人々の中に同じ人を見つけることが出来ないでいました。 
舞踏会には豪華な食事も用意されます。
普段、ろくなものを食べてなかったシンデレラは踊るのも忘れ、食べるのに夢中になっていたのでした。
舞踏会の休憩時間に一度だけ王子様はシンデレラを目にしていたのです。
でも彼女の口の周りはソースやドレッシングだらけ。
ドレスも同じく汚れ放題。
それを見てすぐに目を反らしてしまったのです。
そう、最初に見かけた人だと気が付かなかったのでした。
十二時を過ぎる前にシンデレラは満腹になってお城をあとにしました。
 
シンデレラは、そのご馳走の想い出だけで一生幸せに暮らしたと言います。
ガラスの靴を宝物にして。
 
 
 
 
十二、物忘れ
 
最近よく物忘れをする
どうして? どうして?
そんな歳じゃないわよ。
嫁入り前のピチピチOLなんだからさ。
でもでも、バッグに入れたはずのスマホがなかったり。
お弁当がなかったり。
定期入れがなかったり。
化粧ポーチがなかったりするのね。
それがもっと不思議なのは、なくなったと思っていたものがいつの間にか、元どおりバッグの中に戻っていたりする事なんだよね。
もう、わけわかんない。
 
ある日、バッグを開いて捜し物をしている時に変な声が聞こえたの。
「どこでもドア~」
先の丸い手が中でゴソゴソ動いてる。
犯人はお前か〜!ヽ(`Д´#)ノ
 
 
 
 
 
おわり





最後まで読んでいただいて、お疲れ様でした。
全部で12本、なんでもありの福袋でした。
今年の更新はこれでおしまいでしょうか。
入院はもう少し続きます。
まさか年を越すとは思っていませんでしたね。
まあ、来年、早い時期に退院できると思います。

それでは皆さん良いお年を。

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Commented by 雫石鉄也 at 2016-12-31 09:46 x
海野さんも今年はたいへんでしたね。
私は来年早々入院です。海野さんと入れ替わりですね。
お互い、来年こそ無病息災な年にしたいと思います。
Commented by りんさん at 2016-12-31 17:12 x
すごい福袋、いただきました。
可愛い話、ブラックな話、笑える話、いろいろ詰まって楽しかったです。

今年もお世話になりました。
海野さんにとっては、大変な年でしたね。
来年は、よい年になりますように。
一年間、ありがとうございました。
Commented by 齊藤想 at 2017-01-02 05:12 x
あけましておめでとうございます。昨年は連載お疲れ様でした。
今年ももよろしくお願いいたします!
Commented by marinegumi at 2017-01-03 18:45
雫石さん、あけましておめでとうございます。
まあ、大きな事さえなければ、「無病」ではなく「一病息災」ぐらいで行けたらいいですね。
Commented by marinegumi at 2017-01-03 18:49
りんさん、あけましておめでとうございます。
この福袋の作品の元は、言わずと知れたツイッター小説です。
割りと最近の作品からえらんで、ちょいちょいと長くしてみました。

まあ、運良く大事には至らなかったのですが、筋が切れるとリハビリに時間がかかるんですよね。
その代わり本を読んだり、小説を書く時間がたっぷりあります。
Commented by marinegumi at 2017-01-03 18:53
斎藤さん、あけましておめでとうございます。
連載が終わってからの怪我で運がよかったかもしれません。
今でもまだ字さえまともに書けないですからね。
まして、絵はもう少し無理みたいです。
今年は、Web光文社文庫にいくつ作品を載せられるかと言うところですね。
by marinegumi | 2016-12-29 13:56 | ツイッター小説プラス | Comments(6)