雨の日のピアノ (1枚半)

a0152009_14385632.jpg

ピアノの部屋には天窓がある。
今日は朝から雨が降っていて天窓のガラスを流れる雨が鍵盤の上に模様を描いている。
椅子を引き、ピアノの前に座る。
短くため息をついた。
今頃はピアノの発表会の真っ最中だろう。
わたしの出番がなくなり、今頃は順番が繰り上がった名前も知らないあの男の子が弾いている頃だ。
ソフトボールの練習で痛めた左手を膝の上に置く。
右手の人差し指でポツンポツンとメロディーを弾いてみる。
今日、舞台の上で弾くはずだった曲。
一生懸命に練習した曲だ。
雨が屋根を叩く音。
軒から水たまりに雨が落ちる音。
それを伴奏に聞いて、右手でメロディーを弾いてみた。
思わず左手を動かしてしまい、痛みに顔をしかめる。
もう一度雨のリズムに合わせて目を閉じてメロディーを弾く。
一人きりの部屋が雨の音楽に満たされ、わたしはいつのまにか舞台の上にいる。

弾き終わり、目を開き、天井を見上げた。
天窓からの光がスポットライトだ。
雨の音が、今度は拍手の音に聞こえた。

いつまでも鳴り止まない拍手だ。



おわり



ランキング参加してます。
クリックであなたに幸運が(笑)
    ↓
にほんブログ村 小説ブログ 掌編小説へ
にほんブログ村
[PR]
Commented by りんさん at 2017-02-08 17:15 x
短い話の中に、すごくドラマがありますね。
発表会に出られなかった女の子の気持ちが、ひしひしと伝わります。
雨の音を拍手に例えたところが素敵でした。
Commented by marinegumi at 2017-02-09 14:01
りんさんありがとうございます。
雨と音楽をモチーフにした作品をいろいろ書いていますね。
『雨のカノン』と言うタグでツイッター小説もたくさん書いています。
そして、まだまだ、ふと書きたくなったりしますね。

雨の音を拍手に聞くと言うのは、ブログにアップした後、ちょこちょこ直すうちに思いついた所です。
by marinegumi | 2017-02-03 14:39 | 掌編小説(新作) | Comments(2)