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海野久実が掌編小説やら短編小説を書いています。タイトルの後に原稿用紙換算の(枚数)があるのが小説です。


by marinegumi
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見知らぬ鳥 (2枚)

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見知らぬ鳥が窓の外の木の枝に舞い降りた。
体の色は濃い灰色で、大きさはカラスぐらいだ。
でもカラスよりは嘴が長い。
その嘴はぬめっとしたピンク色だ。
灰色の中にそのピンクの嘴だけが嫌に目立つ。
自分の知識の中にはその鳥の名前はなかった。
かと言って鳥類図鑑を調べてみようかという気にもならないのだ。

見知らぬ鳥はそれからずっと何をするでもなくそこにいる。
殆ど身動きもせず時々羽毛を繕うだけ。
日に日に私はその鳥の存在が気になって来る。
朝も晩もただそこにいるのだけれど、なぜかその存在が気になってしょうがないのだ。
あの鳥だって生き物だから何か食べなければいけないはずだ。
だとすれば私が眠っている時だけあの木から飛び立って餌を探しているとでもいうんだろうか。
そうでなければおかしい。
私が目を覚ませば必ずそこにいるのだから。

私は夢を見ているようだ。
あの見知らぬ鳥の夢だった。
鳥は大きく羽ばたいて不気味な声を上げて鳴いたのだ。
長いピンクの嘴を大きく開いて、そして飛び立った。
木の葉っぱをまき散らしながら、その中に自分の羽毛を飛ばしながら青空に飛び立った。
今まで見たこともないほど青い青い空に見知らぬ鳥は小さくなって行った。

麻酔から覚めた私は集中治療室にいた。
癌の手術が終わったばかりだった。
病室に帰っても窓の外にはもうあの鳥はいないのだろう。



おわり




気が付けば長い間小説による更新をしていませんね。
ご存知の通りWeb光文社文庫の「ショートショートスタジアム」用の作品を日々頑張ってるからなんですね。
それ以外にも小説の発表の場が2~3あるので、お話を思いついても、これはあそこ用のに取っておこう、これは今度のあの作品にと言う感じで、なかなかこのブログにと言う事にならないんですよね。
作品はこれまで以上にたくさん書いていますので、そういう意味ではご心配なく。

写真はフリー写真素材のぱくたそさんでお借りした写真を加工したものです。

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Commented by りんさん at 2017-05-20 16:55 x
なるほど。
この鳥は、体に巣を作った癌だったのですね。
きれいに取り切れたことで飛び立っていったのですね。
よかった、よかった。
Commented by marinegumi at 2017-05-25 23:35
りんさんいらっしゃい。
そう言う事ですね。
ひょっとして自分がそうなっちゃったらこんな夢を見るかもしれない、と思いながら書きました。
Commented by hitoyasumi-hiro at 2017-06-12 19:20 x
うまい!
不気味な鳥を描写して、わずかの紙数でどう結末をつけるんだろうと思っていたら……
見事なラスト3行ですね。
知的な面白さと同時に、感覚的な鋭さがとてもいいと思いました。
Commented by marinegumi at 2017-06-15 23:09
ひと休みさん
ありがとうございます。
僕はツイッター小説をずっと書いているんですが、作品の多くがそのツイッター小説を元にして書いたものです。
この作品もそうです。
同じ140文字以内のツイッター小説でも、こんな短めの作品になるものもあれば、結構長い作品になるものもありますね。
中にはツイッター小説で完成しているものもあったりね。
by marinegumi | 2017-05-09 00:01 | 掌編小説(新作) | Comments(4)