カテゴリ:掌編小説(新作)( 245 )

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最新式のお手伝いロボットは頼りになる。
家事のことなら何でもおまかせだ。
掃除から、ゴミの分別、ゴミ出しまで。
洗濯から、乾燥から、たたんでタンスに仕舞う、出かける前にはちゃんと洋服一式揃えてくれる。
お買い物から、献立から、お料理、後片付けまで。
食事後に口の周りが汚れているとちゃんと拭いてくれるしさ。
料理もおやつもおいしい上にお腹いっぱい食べても太っちゃうということもない。
カロリー計算も正確だからね。
まあ、その代わりお母さんが勉強勉強とうるさく言う時間が増えたんだ。
でも、プラスマイナスすればプラスのほうが大きいかな。
日々の暮らしはメリーさん(ロボットの名前)におまかせで大丈夫。
今日も台所から軽やかな包丁の音が聞こえる。
今夜のごちそうは何だろうか?
さっき台所を覗いたんだ。
きっとあれはトンカツだと予想した。
今はキャベツの千切りを作っているのかも。
宿題を片付けて、おやつを食べて、眠くなったのでちょっとお昼寝。
 
目が覚めた。
台所から、まだ包丁の音が聞こえる。
トントントントン、軽やかな気持ちのいい音。
でもあんまり長くないか?
いつまでどんだけ作ってるんだ?
ちょっと嫌な予感がして、台所を覗いた。
台所に緑色の小山が出来ていた。
それはきれいにそろったキャベツの千切りだった。
もうすぐ天井まで届きそうに盛り上がっている。
メリーさんはそのキャベツの小山の中で、まだ千切りを作り続けている。
「太陽のフレア爆発の影響で強力な電磁波が地球を襲いました」
テレビの臨時ニュースが流れていた。



おわり



元ツイッター小説。
もう入院してから15本ほどショートショートを完成させました。
ブログ用や、あっち用や、そっち用にね(笑)

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by marinegumi | 2016-11-22 14:46 | 掌編小説(新作) | Comments(0)

瓶の中の手紙 (3枚)

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乗っていた船が沈んでしまった。
俺は海に放り出された衝撃で気を失い、救命ボートに乗り損なってしまったらしい。
気がつくと何やら大きな木箱に掴まっていた。
「遭難」と言う文字がズーンとクローズアップになった。
まさかのまさか、俺は遭難しているのだ。
自分の掴まっていた木箱の蓋を開けてみるとワインや調味料の空き瓶ばかりが入っていた。
おそらく空き瓶の回収用の箱だったのだろう。
そのたくさんの空き瓶のお陰で浮力は十分にあり、上に乗ってもひっくり返ることはなかった。
これで溺れて死ぬ心配はしなくて済みそうだ。
空き瓶の中には、まだ中身の残っている水のボトルもかなりあるようだった。
また、食料品は船の残骸と一緒に漂流しているものをそこそこ回収できたので、飢えて死ぬ心配もとりあえずなくなったわけだ。

漂流して二日目の朝を迎えた。
ポケットを探ると手帳とシャープペンがあった。
箱の中にはたくさんの空き瓶。
それでふと思いついた。
海を漂う瓶の中の手紙。
メッセージボトルというやつだ。
なんかそういう物語を読んだ記憶があったのだ。
何もすることがないので、なんとなくそれをまねてみる気になった。
コルク栓も瓶に混じってたくさんあったのだ。

一通目の手紙を書いてみる。
 
漕難二日目。船の残害に捕まって票流を続けている。私はこのまま稚にも見つけて貫えず冷たい限寒の海で死ぬのだろうか。
 
まあ、冬とは言え結構南の方なので水もそんなに冷たくはない。
箱の上に座っているので天気さえ良ければ暖かいのだが、こう書いたほうがドラマチックだし。
 
ポケットにあった手長のページを一枚づつ切り取り手期を知るし、瓦に入れて流すことにした。恐らく稚にも読んでは貫えないだろうけれど毎日流すつもりだ。
 
まあ、毎日流すとしてもコルク栓がなくなるとまでは行かないだろう。
昔と違って通信手段が発達している。
連絡を受けた船が何隻もこの辺に向かって来ているに違いない。
まあこれを書くのはちょっとした暇つぶしになればいいと思ってのことだ。

この手紙を海部で拾うのはどんな人だろうか?私はそんな貴片の溜めだけにこれを書いているかも知れない。助けを求めている釈ではない。稚かが私の思いを受け止めて暮れるだけでいいのだ。私の生きた詔を。
 
名前と日付を書いてと。
 
書き終わると、透明な瓶の中に入れコルクでしっかりと栓をして、力いっぱい、ポ〜ンと放り投げた。
波間にしばらく揺られていたそれはあまりに小さく、すぐに見えなくなった。
 
そこでふと、不安になった。
「誰」と言う字を「稚」と書いてしまったような気がしたのだ。
いや、待てよ。
もっと他の字も間違っていたかもしれない。
考えれば考えるほど、あの手紙は誤字だらけなのではないかと思えて来てしまう。
誰かに読まれたら、こんな恥ずかしいことはない。
 
俺は慌てて海に飛び込み、瓶を回収しようと泳ぎ始めた。

 
 
 
お割
 
 

ツイッター小説にちょいちょいと手を入れて、ショートショートの出来上がりっと。
入院中小説第5弾(笑)

画像はかわいいフリー素材集イラストやさんでお借りしました。
 
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by marinegumi | 2016-11-15 13:13 | 掌編小説(新作) | Comments(5)

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お母さんが死んでから、ぼくは毎日のように泣いて暮らした。
さみしくてさみしくて、どうしようもなかったんだ。
お母さんがいなくなってぼくはただのぬけがらになったような気がしていた。
涙ばかりでふくらんだぬけがらだ。
一日がすぎるのが長かった。
こんな日がずっと続くのはたえられないと思い始めていた。
 
ある日、お父さんが中古の主婦ロボットを買ってきてくれた。
「死んだお母さんの事は忘れるんだぞ」
そう言いながらロボットのスイッチを入れた。
小さな機械音がしてロボットは目を覚ました。
「よろしくおねがいします」
と、やさしい声で言った。
「お前が好きな名前を付けなさい」
ぼくはお父さんにそう言われてロボットに名前を付けた。
「マーミー」と。
それは「お母さん」でも「ママ」でもない。
代わりになんてなれないと言うぼくの思いからだった。

ロボットは家事の合間にぼくと遊んでくれたのでたいくつはしなくなった。
顔はとても良く出来ていて、本当の女の人のように見えた。
ぼくにやさしい言葉もかけてくれる。
でも声も顔もぜんぜん無表情だからぼくのさみしさは少しもまぎれなかった。
ふと一人になったとき、またすぐに涙が出てしまうんだ。
ロボットはやっぱりロボットなんだと思った。

ある日お父さんがハートのペンダントを買って来た。
「ほらプレゼントだぞマーミー」
そう言いながら箱から出してロボットの首にかけてあげた。
すると急に動かなくなり、首をうなだれた。
ぼくが心配していると、数十秒後に小さな機械音がして目を開け、マーミーはすごい笑顔になった。
「再起動したんだ」とお父さんが言った。
マーミーはぼくの方にくるんと向き直るとはしゃぐように言った。
「まあ、うれしいわ。なんて素敵なペンダント。似合うかしら?ぼうや」
マーミーはその声もその顔も見違えるように表情豊かになっていた。
ぼくは胸がチクリとした。

そのペンダント型の物は、ロボットに感情を入力するオプションだったんだ。
ただのロボットだったマーミーは、その日からぼくの、ぼくたちのマーミーになった。
お母さんでもなくママでもなかったけれど。




おわり



ツイッター小説にちょこちょこ手を加えるとショートショートの出来上がりっと。

写真はプリ画像さんにお借りしました。

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by marinegumi | 2016-11-12 19:12 | 掌編小説(新作) | Comments(4)

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真っ暗い空から雪が降っている。
この町では雪が降るのさえ珍しいのに、今夜はまたちょうどクリスマスイブだった。
しかし積もるほどには降らないだろう。
「おねえちゃん。覚えてる?」
「何をよ?」
その枯れかけた生け垣に囲まれた狭い瓦礫だらけの土地に二人は立っていた。
少年は12歳ぐらい。
少女はそれより1〜2歳年上に見える。
二人とも真冬にしてはずいぶん薄着だった。
マフラーも手袋もしていない。
「昔のクリスマスイブさあ。ここにあった家に住んでた頃、サンタクロースが来たっけね」
「ウフフ、あんた覚えてんだ」
「あの日もこんなふうに雪が降ってたもん」
「そうだよね。ホワイトクリスマスだ〜ってみんなはしゃいでた。思い出してみるとさあ、たぶん雪の降ったクリスマスなんて、あの日と今日と二回だけじゃないかなあ?」
少女は掘り返されたコンクリートの塊(かたまり)に腰を下ろして、今はない我が家を思い描いた。
「うちには煙突があったよね。細くて今にも折れちゃいそうな煙突。あんたったらあんな煙突からサンタさんが入って来れるか心配してさ。何度も何度も、ねえおねえちゃん、どうしよう?どうしたらいい?ってしつこいの。あたし、もういやんなっちゃってさ、あんたの頭げんこでなぐっちゃった」
少女はぺろりと舌を出す。
「ひ、ひどいなあそれ」
「あんた、それは覚えてないのね。ああ、そうか。たぶんそのすぐあとにサンタさんが入って来てびっくりしたからでしょ。急にバターンってドアが開いてさ。雪が吹き込んでサンタクロースが立ってたんだもん」
「サンタさんにもびっくりしたけど、ドアが外れて倒れちゃってさ。花瓶が壊れるし、カーテンは破れるし、サンタさんぼーぜんとしてたよね」
「ボロっちい家だったもんね。平屋のさあ、二軒長屋の半分を切り取った家だったから」
「あのあとどうなったかよく覚えてないんだ。プレゼントもらって嬉しかったのは覚えてるけどさ。そうだ、このサンタはお父さんが化けてるかもしれないって思ってジロジロ見てたら、奥の部屋からお父さんが出てきて、ご苦労さんって言ったような……」
「あれはきっと本物のサンタさんだったんだよ」
「なつかしいよね、あの頃が」
「何言ってんの、年寄りみたいに」
笑いながら二人は空を見上げた。
もうしばらく雪は降り続きそうだった。
取り壊された家のあとに残されている瓦礫の上に、うっすらと雪が積もっていた。
その時、隣の土地に建っている家の掃き出し窓のカーテンが開いた。
女の人らしい人影が見え、その人はサッシのガラス窓を開いて叫んだ。
「あんたたち!そんなところで何してるのよ!」
二人は顔を見合わせた。
「そんな薄着じゃ風邪引いちゃうわよ。早く入りなさい!」

二人が家族と住んでいた家は取り壊されたが、それに先立って隣の土地に新しい家が建てられていた。
古い家のあった土地は来年にでも整地され、新居の裏庭になる予定だった。
「暖房きかせすぎるからさあ、ちょっと涼んでたんだよな。へ〜クション!」
「あ、ほら、言わんこっちゃない」



おわり



はるさんともぐらさんのクリスマスパーティー用に書き下ろした作品です。
病室からの更新3本目〜(笑)

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by marinegumi | 2016-11-09 09:48 | 掌編小説(新作) | Comments(6)

僕の天使 (5枚)

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僕は天使の写真を撮った事がある。

それは僕がほんの子供の頃だった。
父親の大事にしていたカメラを庭に持ち出し、色づき始めた柿の葉っぱや、母親が育てている草花へレンズを向けていた。
そう、ただレンズを向けるだけで、決してシャッターを切るなどと言う大胆なことはしなかった。
一眼レフカメラはまだまだ高価な時代で、フィルムもまたしかり。
父親は一枚一枚の写真を慎重に大事に撮っていたものだ。
当時はまだ珍しかったカラーフィルムだった。
ファインダーに被写体を映し、ピントを合わせ、「カシャッ」とシャッター音の口真似をするだけ。
「カシャッ。カシャッ」
そうやって遊びながら、そろそろその遊びにも飽きてきた頃、縁側に座って庭全体の景色をファインダーで切り取り、最後の一枚のつもりシャッターを切りかけたとき、景色が全体に白っぽくなった。
そう、ちょうど逆光のように。
でも太陽は反対側にあり、決して逆光ではなかった。
不思議に思いながらカメラを覗き続けているとファインダーの真ん中にふわりと白いものが降りてきた。
白いゆったりとした服を着て、顔や手足もそれに負けずに白い、それは少女のようだった。
少女は実にゆっくりと庭の雑草の上に降り、その足を着けた。
「天使だ!」
僕はとっさにそう思った。
羽根らしいものは見えなかったものの、その子は天使だと思った。
僕の指は無意識のうちにシャッターボタン押してしまっていた。
そして、カメラから目を離し、自分の目で庭を見た。
するともうそこには天使の姿はなく、ただ雑草の多い見慣れた庭があるだけだった。
カメラを縁側に置き、庭に出て空を見上げた。
ただ、もうすぐ暮れようとしている空があるだけだった。

ある日父親がフィルムを現像に出した。
僕がシャッターを押した続きに近所の祭りや集会の写真を撮り、そこでフィルムは終わったのだ。
机の上に現像から返ってきた写真を並べて選り分けていた父親が「あれ?」と声を上げた。
「なんだこの写真は? 撮った覚えはないんだが……」
僕は後ろから覗き込んだ。
「お庭の写真だね」
そう言いながら写真を手に取った。
僕は精一杯何も知らないお芝居をした。
「誰も写ってないや。どうしてこんなの撮ったの?」
「いやあ、わしは撮った覚えはないんだが……」
そう、その写真には庭の風景以外何も写っていなかった。
あの天使はなぜ写ってないんだろう。
ぼくはちょっとがっかりしながら言った。
「この写真僕にくれる?」
「いいとも。何にするんだ?そんな写真」

その写真は今も僕の机の上にある。
二面が蝶番でつながった小さなフォトフレームに入れ、陽に色褪せないように普段は閉じている。
一面に庭の写真と、もう一面には僕の子供の頃の白黒写真。
見るからに腕白そうなそんな僕ももう大人だ。
子供の自分から見ると信じられないことに、ちゃんと奥さんまでいる。
毎日の様に夜遅くまで働いてくたくたになって帰ってくる。
時々そういう生活が嫌になることもある。
そんな時はこの写真を手に取った。
そっと開くと誰もいない庭の写真と子供の僕。
でもしばらくすると写真の中の庭に、あの日見た天使が舞い降りてくる。
庭の雑草の上にふわりと裸足の足を着けて立ち、僕に向かって微笑むのだ。
すると僕はあの頃の、子供の頃の僕に戻っている。
疲れも何も知らない思い切り元気だったあの頃の僕に。
その天使は僕以外の誰にも見えない。
何度か人にも見せたことがあるけれど、その写真の中に天使を見るのは僕だけなのだ。
ずっとそうして僕は僕だけの天使を見ることで癒やされてきた。
誰にも見えない?
いや、そうではないかも知れない。
僕たちの間にできた女の子がその天使にそっくりなのだ。

いつの間にかこの写真にはもう天使は舞い降りてこなくなっていた。
それともまた違う天使がそのうち舞い降りるのだろうか?


 
 
 おわり
 



病院から更新、2作品目です。
なんとか両手が使えだして、キーボードで打ちました。
なんと打ちやすいこと。

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by marinegumi | 2016-10-30 20:17 | 掌編小説(新作) | Comments(5)

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著作者: avaxhome.ws


ただいまより、鶴女房反省会を行います。


✻男の反省

そうなんだよな。
何と言ってもおいらが悪いのは間違いがねえ。
あんなに何度も、開けちゃいけねえ、覗かないでくれと言われてた約束を破っちまったんだもの。
でもさあ、だんだん痩せてくかかあの事が心配だったつうのもあんだよ。
言い訳かも知んねえけどさ。
愛してたんだよな。
もう一度やり直したいと、そりゃー思ったさ。




✻鶴の反省

ええ、愛していました。
不器用でしたけれどとても優しい人でした。
いまから思えばお金の為に布を織る事などせず、貧しいままでいいから、ずっとあの人と一緒に暮らせばよかったと思います。
でも、約束をあの人が破った以上、もう戻れないのです。




✻もう一羽の鶴の反省

そうなんですよね。
ワナに掛かって怪我をしている所をあの人に助けてもらったんです。
手当てをしてくれて優しく見送ってくれましたっけ。
恩返しをしなくちゃと思いましたよ、そりゃね。
人間の娘に姿を変えてあの人の所へ押しかけ女房。

あの人は貧しかったので、お金になればと思って布を織りました。
自分の羽根を材料にして。
布を織っている所をあの人は決して覗いたりはしませんでした。
ええ、それは二人の間の約束でしたから。

ところが、ある日あの人はたくさんの鳥の羽根を持って帰って来ました。
そして、「これでもっと布が織れるだろ?」と言うのです。
いえ、あの人が部屋を覗いたりしていない事は私が一番よく分かっています。
私の正体を知っているのかいないのか。
もし感づいているとしても、約束を破ったのではないので家を出て行く訳にも行きません。

あの人は案外腹黒い人間だったのかも知れません。
ひょっとしてあの私の掛かったワナはあの人が仕掛けた……
いや、まさか。
そんな事は考えますまい。
今日も明日も、ひたすらあの人が持って帰るたくさんの鳥の羽根で布を織り続けます。
その中に鶴の羽根が混じっていないことを願いながら。

ああ〜、男なんてどうせ、約束破ると思ったのが間違いだったわね。
あら、つい本音が出ちゃったわ。

え?
あの人に、私より前にも鶴の女房がいた可能性?
そ、そんな事はあるはずないでしょ。
変な事言わないでくださいな。




✻男の反省(続き)

そうなんだよな。
やり直せてよかったさあ。
布をどんどん織ってもらえるしさ。
ほら、今日も都から商人がたくさん布を買いに来てるだろ?
もう、そりゃー儲かっちゃて、笑いが止まらないつーやつな。
そろそろでっかいお屋敷でもおっ建てるべか。

まあ、ひとつ言やあ、前のかかあと比べて器量の方がさ。
いやいや、今のかかあも充分きれいさ。
愛してるさあ。
これって反省会だろ。
あえて反省すればって事だかんね。
わはははは。




おわり




え~、病院からの更新になります。
これはりんさんの「浦島太郎反省会」を受けて書いた物です。
まだ左手のマウスでポチポチですから、時間が掛かってしょうがない。
こう言う状態では本格的な小説はちょっと無理かなあ。
キーボードがあるので、早く両手が使えるようになればいいんですけどね。

イラストは「GATAG フリーイラスト素材集」さんでお借りしました。


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by marinegumi | 2016-10-19 21:09 | 掌編小説(新作) | Comments(4)

カキーン (2枚)

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少年は足を骨折して病院のベッドにいる。
静かな寝息を立てて眠っている。
その耳元に……

カキーン
と澄んだ音がする。
秋の青空を二つに切り裂くように白いボールが空を横切る。
少年は走る。
懸命にベースを蹴り次の塁をめざす。
そこにたどり着かないうちにまた打球の音。
カキーン
少年はまたもとの位置から走り出す。
バットが転がる音を聞きながら。
懸命に走り、ベースを蹴る。
カキーン
また澄んだ音が青空に響く。
その音のたびに少年の位置はリセットされる。
バッターボックスから駆け出す自分を見つける。
今度は一塁ベースを蹴る前に音が聞こえた。
カキーン
また少年は全速で走りはじめる。
砂埃を上げて。
カキーン
何度それを繰り返しても少年は不思議に思っていない。
カキーン
ただ一生懸命に、全速力で走りだす。

少年の学校の校庭は林の向こうで、病院からは見えない。
けれど距離は近いので野球部の練習の打球の音はよく聞こえた。
カキーン
カキーン
ふたつの音が重なった時、少年はどんな夢を見るのだろう。



おわり



初めての手術なので、不安です。
でも、病院へ行ってると、腕や足を骨折した少年少女の姿を見ます。
恐がってる場合じゃないよな~

前の記事で「しばらく更新できませんが」と言いながらの更新です(笑)
いよいよ明日から入院です。
この数日、仕事は出来ないけれど、仕事場に来て電話番をしています。
時間があるので書いてみました。

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by marinegumi | 2016-09-26 11:57 | 掌編小説(新作) | Comments(6)

夏の時計 (11枚)

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  かいすいよくも、キャンプも、花火もみんなあきてしまった。
  夕立やカミナリの音、どこまでも青い空、大きなにゅうどう雲、セミの声。
  そんな夏らしいものはもうたくさんだった。
  たいくつしのぎに始めたしゅくだいも、もうすっかりおわってしまった。
  なんどもなんども見なおしたので答えはカンペキだ。
  絵日記はちゃんときれいにかきなおした。
  夏の思い出であふれかえっている。

  夏休みはもういい。
  新学期よ、どうかはじまってくれ。


長い長い特別な夏休みが始まるその日、いつものように準(じゅん)の心はときめいていた。
これでもう永遠に学校なんかに来なくてもいいような気がした。
そう、一か月以上の休みなんて小学校4年生の少年にとって、ほぼ永遠に等しいのかもしれない。
準は学校の校門を出て後ろを振り向くこともなく下り坂を走って駆け抜けた。
坂の下の広い道に出る時には足に急ブレーキをかけた。
早足で歩く帰り道の通りの両側にはいくつかの商店が点在している。
電気店や、駄菓子屋、文房具店など、みんなおなじみの店だ。
淳の足が止まったのは小さな時計店の前だった。
毎日通っていた道のはずなのに初めて見る店だったけれど、新しく出来たにしてはとても古びた店構えをしている。
木で作られたガラスのはめ込まれた引き戸の向こうは暗かった。
その時計店の小さなショーウインドウの中に見なれない置時計があった。
むっくりと丸いその時計の色は緑がかった青色をしている。
微妙な楕円形の文字盤。
はめ込まれた文字盤のガラスも青みがかっていた。
緑色のデザインされた針は夏の若葉を思わせた。
秒針は滑らかに動き、夏の爽やかな風を思い起こさせた。
「夏の時計だ!」
準は何故かそう思った。
その時計をどうしても手に入れたいと思った。
家に帰ると急いで二階の自分の部屋に駆け上がり、貯金箱を抱えて再び家を飛び出した。
「準くんお帰りなさい」
母親がそう声をかけた時にはもう姿は見えなかった。
人気のない路地の奥で貯金箱を壊し、お金を取り出すと陶器のそれを近くにあったゴミ集積場所に置いた。

時計店の主人は分厚いレンズのメガネをかけたエプロン姿の老人だった。
恐る恐る準が店に入って行くと店の隅で机の前に座って何やら作業をしていたらしい老店主は顔を上げ、メガネをずり下げ、裸眼で彼を見た。
「いらっしゃい、ぼうや」
そう声をかけると老人は準が口を開くのを待った。
「あの。時計が欲しいんです。あの緑色の……」
「ああ、夏の時計だね」
本当に「夏の時計」と言う名前がついているのかと準は思った。
偶然にその時計の値段は、準の貯金箱の中身と同じ金額だった。
店主は奥の棚から緑色の箱を取り出して来て、ショーウインドウのその時計を入れてくれた。
箱にはアルファベットと数字の後に(夏)と文字があった。

準は自分の部屋の机の上にその時計を置いた。
丸っこいその時計を手で触ると不思議な感触がした。
粗悪なプラスチックではなく、しっとりと手になじむ気がした。
音もなく滑らかに動く秒針。
まるで生き物のように息づいている感じがある。
夏の若葉のみずみずしさ。
強い日差しの熱も感じ、手をはなすと爽やかな風を感じた。
この時計は夏の時間を刻んでいる。
それは準が最初にその時計を見た瞬間に思ったことだった。

麦わら帽子の香ばしさ。
夕立の爽快感。
強い日差しを避けた木陰のさわやかさ。
友達の声や笑顔。
セミ取りをする木立の下の期待感。
カブトムシを見つけた時の狂喜乱舞。
浮き輪の中で海の上を漂っている浮遊感。
そんなものを残して、夏の時間は過ぎて行った。
夏の時計は正確に時を刻んでいた。

そしてある日気がつく。
宿題がまだたくさん残っていることに。
絵日記は日を追うごとに簡単な絵になり最後の方はもう適当に思いついたことを描いた。
科学研究は図書館で見た本の、どこかの誰かさんの丸写し。
国語や算数のプリントの半分ぐらいはまだ手つかずだった。
宿題をいやいややっている机の上で、夏の時計は時を刻んでいた。
その時計の色の変化に準はまだ気がついていなかった。
しっとりとした若葉の色だったそれは夏休みの中ごろには鮮やかな深い緑に変わり、間もなく9月を迎える今ではやや黄色味がかっているのだった。

夏休み最後の一日。
窓から見える青空には遠くうろこ雲が浮かんでいた。
半ばやけくそで宿題を消化していた準はとうとう感情を爆発させた。
「もういやだ~!」
と叫ぶなり、机の上にあったものを手で払ったのだ。
部屋の隅まで飛んで行ったノートやプリント。
筆箱の中身はあちこちに散らばっている。
大声を出して少しすっきりしたのか、準はため息をつくと散らばったものを集め始めた。集めて行くうちにあの夏の時計も一緒に払い落としていたのに気がついた。
慌てて床の上から拾い上げたそれを手に取った時、わずかにへこんでいるのを準は見つけた。
そして見ているうちにそのへこみが直るのを不思議に思いながら見ていた。
色は買った時のままの若葉の色に戻っていた。
夏の初めと終わりの変化に気がついてなかった準は当然それにも気がつくはずもなかった。

いやいややる宿題ははかどるはずもなかった。
途中で飽きてしまい、机に突っ伏したり、ベッドに寝転んでマンガ本を読んだりしながらも、また机に向かい、適当に片付けて行った。
何枚かは白紙のままにしたり、いい加減に文字を埋めて行った。
「こんなじゃ、先生におこられちゃうかもな~」
などと呟きながら。

あくる日、準が目覚めるとあたりはやけに静かだった。
準は無表情で、何かに操られているようにベッドから起き上がった。
カーテンを開けると街の家々の向こうに大きな入道雲がわいているのが見えた。
準は出来そこないの宿題を詰め込んだ手提げバッグを持つとふらふらと家を出た。
人気がなく、車も走っていない街を不思議にも思わずに通り抜けて学校にやって来た。
準が学校の校門の前に立った時、彼の後ろで町は元通りの活気を取り戻したが、気がついていなかった。
車の往来が戻り、人々の姿も復活した。
木々のざわめきや小鳥の声も元通りだった。
そして準もその表情を取り戻していた。
校門の門扉はしっかり閉じていて職員室にだけに灯りが点いていた。
先生は来ているようだけれどけれど子供たちの姿はなかった。
準は気がついた。
今はまた夏休みが始まったばかりなんだと。
待ちに待った夏休みの始まりに心をときめかせたたくさんの友達の、そのうきうきした気持ちがまだ校庭のあちこちに残っている。
そんな気配がある夏休み最初の一日だった。

準は坂道を駆け下りるとあの時計店の前にやって来た。
建物はそこにあったけれどガラスのはまった木戸の向こうには白いカーテンが引かれ、ショーウインドウには何もなくホコリが降り積もっているばかりだった。
時計店の看板があったはずの壁にはわずかに白くその跡が残っているばかりだった。

自分の部屋に帰ってくると机の上の時計を手に取った。
両手でそれを包むとわずかな振動を感じた。
そしてなんとなくしんどそうな、かすかなノイズを。
「時計が壊れてしまった」
何故かそうなんだと分かった。
「直してくれる時計屋さんはもういない」

  海水浴も、キャンプも、花火もみんな飽きてしまった。
  夕立やカミナリの音、どこまでも青い空、大きな入道雲、セミの声。
  そんな夏らしい物はもうたくさんだった。
  退屈しのぎに始めた宿題も、もうすっかり終わってしまった。
  何度も何度も見直したので答えは完ぺきだ。
  絵日記はちゃんときれいに描き直した。
  夏の思い出であふれ返っている。

  夏休みはもういい。
  新学期よ、どうか始まってくれ。




おわり




仕事の合間にちょこちょこ書いて、ひとまず出来上がり。

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by marinegumi | 2016-09-19 13:49 | 掌編小説(新作) | Comments(0)

ドーナツ (1枚半)

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僕らの世界なんて、そうだなあ、ドーナツの穴みたいなもんさ。
みんな、ドーナツの穴の中に暮らしてる。
僕らの住んでいるこの空間を宇宙と言うドーナツが取り巻いている。
ところがこのドーナツを食べるやつがいるんだなあ。
食い意地の張ったやつだけどあまりガツガツはしていない。
静かに静かに喰い進むんだよね。
僕らは宇宙がいつの間にか、どんどんかじられて無くなって行ってるのにちっとも気がつかないんだよね。
その中の空間だけが自分たちの世界だからその外の事には関心がないからさ。
僕らの宇宙がそうやって喰い滅ぼされて行ってるとしても、まだ穴は確固として残っているので安心してるんだね。
気がついた時には宇宙はほとんど残っていない。
僕らの世界の外側にごくわずかに、薄っぺらになっちゃった宇宙があるだけさ。
最後の最後にわずかに残ったその宇宙は、気がついた時には一瞬で消えちゃうんだ。
そ。
まるでマジックショーの出し物みたいにね。
ただ重要なのは、宇宙が消えるときに僕らの世界も一緒に消えちゃうと言う事なんだ。



ほらね。
































おわり




連日の更新ですね。
長くなりそうな作品はまだ完成していません。
書きかけの小説ばかり入れているフォルダーを見ていると、完成した作品が。
あれ?
これはまだブログにアップしてなかったかな?
ちょっと調べると、まだみたいだったので上げておきます。

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by marinegumi | 2016-09-13 18:37 | 掌編小説(新作) | Comments(4)

夢の果実 (1枚半)

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あなたが夢を見る時。
その夢のどこかにあなたが見ている夢を果実としてつける夢の成る木があります。
夢に見る街角の思いがけない路地の突き当り。
それとも夢であなたが迷い込んだ森の奥。
それともひょっとして夢の中のあなたの家の庭の真ん中にあるかもしれません。

その夢の成る木はあなたが見つけた時からあなたの見ていた夢の果実をはぐくみます。
その夢の成る木の果実はやがて熟して落ちると、あなたの見た夢をふたたび再現するのです。
その夢は夢の成る木が夢の果実をつけると言う夢です。
その夢の中でまた夢の成る木は夢の果実をつけます。
そしてまたその果実は熟して落ち、夢を再現します。
くりかえし、くりかえし、夢のまた夢またその夢の果実。

そう言う風にこの夢を見はじめると終わりのない夢の連鎖にあなたは陥ります。
そしてもうあなたは目覚めることはないのです。



おわり



しばらく更新していないので、なんか書いてみようと思って、書きかけるとどんどん長くなってしまってまだまだ終わりません。
それじゃあちょこっと短いのを上げとこうかと言うわけで、小説とも散文詩ともつかない物を書いてみました。

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by marinegumi | 2016-09-12 18:32 | 掌編小説(新作) | Comments(0)