「ほっ」と。キャンペーン

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僕が菜摘(なつみ)にさよならを言われた日から、世界は変わってしまった。
街は現実感がなく、そこを歩いていても僕はそこにいないような気がした。
テレビを見ていても、ニュースで流れる出来事はどこか他の惑星の出来事のように思えた。
会社で働いている時には、僕じゃない誰かが僕の代わりに、僕の仕事を片付けてくれているようにしか思えなかった。
友達は「たかが失恋だろ?」と笑い飛ばすだけだった。
「失恋なんて一生の間に数えきれないほどするのが当り前さ」と。
友達のその声もどこか遠くで聞こえる意味不明な言葉だった。

街には出かけなくなった。
テレビなんかも見なくなった。
会社も休み始めて三日が過ぎた。
友達とは連絡をしなくなった。

そしてアパートの自分の部屋に閉じこもっている事が多くなった。

改めて自分の部屋を隅々まで観察してみた。
何もする気がせず、時間は有り余るほどあったのだ。
天井に張られたボードの模様を見て、初めてそんなデザインだった事に気がついた。
ベランダの掃き出しの窓のカーテンのカーテンレールと、西側の窓のカーテンレールの色が違っている事にも気がついた。
部屋の白壁には、セロファンテープの跡があちこちに残っていた。
それは部屋中に貼っていた色んなポスターの跡だった。
あの日以来、僕の部屋には、きらびやかなポスターの中の世界がとても似つかわしくなく思えて、全部はがしてしまったのだ。
僕はそんな白壁のテープ跡も、ほんの小さな汚れも、すっかりきれいにした。
ポスターどころか、いっそ何もない真っ白な壁がいいと思ったんだ。

そんな真っ白な壁を見ながら暮らしていたある日、ぼくは目の前を漂うゴミの様な物を見つけた。
白い壁を背景にふわりふわりと漂う、糸くずのような浮遊物。
思わず手を伸ばしてつかもうとした。
でもつかめない。
視線を右に動かせばその糸くずは右に動き、左に動かせば左に動く。
眼球を動かさずにじっと前を見ていると、重力でゆっくりと下の方へ移動した。
その糸くずは、目の中にある物だという事にすぐに気がついた。
丸い眼球を満たす硝子体の中を、それは漂っているのだった。
病院へ行った方がいいのか?
一瞬そう思ったが、まずネットで調べてみることにした。

「目の中のゴミ」「眼球内の浮遊物」などで調べて行くと、それは「飛蚊症(ひぶんしょう)」と言うのだという事が解った。
目の前を「蚊」が飛んでいるように見えるから付けられた症状名らしい。
おおざっぱに判った事は、活性酸素と言う、よく聞く物が関係しているらしい。
活性酸素の影響で、眼球の中の液体の硝子体に変化が起きて、言ってみれば水あかみたいなものが出来る。
「多くの場合生理的なもので、病的なものでない限り放っておいても問題はない‥、と言う事かー」
パソコンの画面を見ながら僕はそう口に出していた。
ふと、おかしくなってくすっと笑ってしまった。
久しぶりに自分の声を聞いたからだ。
そう言えば、この何日間は、独り言さえ言わなかったのだ。

壁のポスター類をすべて取っ払い、白一色になった壁を背景にすると、その目の中のゴミはよく見えた。
見方によっては、驚くほどくっきりとピントが合って見える。
目の中にある物がなんでそんなにはっきり見えるんだろう。
ぼやけて見えるのが当たり前のような気がするのだが。
そのゴミを注意深く観察すると、それは糸くず状に見えてはいるが、そうではない事が解った。
どうも平たい透明な不規則な形をした板状をしているようなのだ。
その板状の縁の形が糸くずのように見えているのだった。
ゴミは右目に一つ、左目に殆んど気がつかないほど小さいのが二つあった。

僕はその目の中のゴミで、遊ぶ事を覚えた。
眼球の動かし方で、ゴミはかなり思うような位置に持ってくる事が出来た。
すばやく眼球を動かせば吹き荒れる嵐の中で弄ばれるように動くゴミ。
微妙に細かく動かすことで、そのゴミをくるくると回転させる。
そう、いびつな小惑星が自転しているように。

そんな事をしながら何日も日は過ぎて行った。
そして、ある日驚くべき事に気がついた。
そのゴミを、眼球を動かすことによってではなく、動かせる事に気がついたのだ。
眼球は動かしていないのにそのゴミが思った位置に来るようになったのだ。
つまり、考えただけでそのゴミを動かせるようになっていた。
「超能力」という言葉が浮かんだ。
そんな馬鹿なと思ったが、意志の力で動かせるとしたら「超能力」と言うしか言葉がなかった。

「目は脳の一部だ」という言葉を聞いた事がある。
「脳の一部が外界にむき出しになっている所、それが目だ」というのだ。
脳に少しでも超能力、(この場合はテレキネシスと言うのだろうか)そう言う物があるとすれば脳に一番近い、目の中のゴミぐらいはごく弱い能力でも動かせるのではないだろうか?
とてもテーブルの上のコインなど動かせなくても、それぐらいは出来てもいいような気がした。
そして実際に出来ているのだ。

動かせるだけではなく、それの形を変えることもできた。
頭で考えてそのゴミを「へ」の字に曲げたり。「し」の字に曲げたり出来た。
そして何日か後には、そのゴミを分割する事を覚えた。
一つのゴミを細かくちぎってしまい、それを並べて蟻の行列のように目の中でぐるぐる走らせたりもした。
そんな小さなゴミを並べて文字を作った。
文字を作る事を覚えて、初めて作ったのは「ナツミ」だった。
菜摘。
いまだに忘れられない事に気がついた、君の名前だったよ。

部屋のソファーに身を預けて白壁を見ながら目の中のゴミで遊んでいる僕。
ナツミ、なつみ、君の名前で遊んでいるんだ。
意志の力で部品を並べて「ナツミ」の文字を作っては壊し、自分の名前を作っては壊し。
そうするうちに、今度は君の顔を作ってみようと思い付いた。

最初はごく簡単な落書きのような似顔絵だった。
輪郭に目、鼻、眉毛、そして一本の線の口。
この口をほほ笑むように曲げて動かしたり、怒ったようにへの字にしたり、本当の君が僕に見せたいろんな表情をその似顔絵にさせようとした。
とても菜摘には似ていなかったが、そう思い込む事で、それはちゃんと菜摘だった。
そのうちに、だんだん慣れてくると、かなり思った通りに似顔絵が作れるようになった。
輪郭だけだった顔には髪の毛を描き、目はちゃんと瞳があり、1本の線だった口は楕円になり、閉じたり開いたり出来るように作った。

目の中のゴミをもう自由自在に操れるようになると、今度は菜摘の顔だけではなく体全体を作ってみたくなり、そうするともう作るための材料がない事に気がついた。
そこで僕は、眼球の内側の細胞をはがす事を覚えた。
水晶体を通った光が像を結ぶ網膜の部分をなるべく避けて、視力を保つために関係のないところの細胞を意志の力で削って、菜摘を作る材料にした。
もともと大きなゴミが浮遊していたのは右目で、似顔絵を作っていたのも右目だけだったが、自分で材料を用意する事が出来るようになると、左目にも何かが作れるんだと気がついた。

僕はそれから3日かかって一睡もせずに菜摘を組み立てた。
右目と左目にそれぞれちょっと角度を変えて、菜摘の全身を細かく細かく再現したのだ。
両目に菜摘を作る事で、これまで平板だった菜摘が立体に見えるようになった。
まるで本当の菜摘がそこにいるように。
ただ、まだモノクロで半透明な体を持つ菜摘。
僕の目の中の硝子体の海に浮かんだ菜摘は、僕に微笑みかける。
くるくる回って、はしゃぐ菜摘。
想い出の場所の話をすると、そうだったわねと相槌を打ってくれる菜摘。
僕だけの菜摘がそこにいたんだ。

それから僕はさらに2日間眠れなかった。
眠ってしまうと目の中の菜摘が、ばらばらに分解してしまうのを恐れたんだ。
起きている間は意志の力でその形を保ってはいるが僕が眠ってしまうと、そうなるのではないかと心配したのだ。
ここまで時間をかけて細かく作り上げた菜摘を失うのが怖かったのだ。
しかし、さすがに6日目になるとどうしようもなくなり、気がつかないうちに眠ってしまった。

目を覚まして眠ってしまった事に気がついた。
ほぼ24時間眠ってしまっていた。
すぐに菜摘を探した。
菜摘は、ばらばらにはなってはいなかった。
眼球の中、下の方に沈んで横たわっていた。
そう、菜摘も僕と一緒に、ちゃんと眠っていたんだ。
目を覚ました菜摘は僕に微笑んで、口は「おはよう」の形に動いた。

菜摘は裸だった。
僕の目の水槽の中で、いつも寒そうだった。
菜摘に服を作ってやりたいと思ったが、もう最小限の視力を保つための網膜を残して眼球の内側の材料は使い果たしていた。
ごめんね菜摘。

チャイムが鳴った。
玄関へ出て行くと友人が立っていた。
僕が菜摘に別れを告げられた事を「たかが失恋」と言った奴だ。
「どうしたんだ。会社にも出て来ないで。みんな心配しているぞ」
そう言うと僕の目をのぞき込んだ。
僕は一瞬ドキッとした。
目の中にいる菜摘を見つけられたかもしれないと思ったからだ。
でもそんな事はなかった。
「会社、どうする気だ?」と続けた。
「わかってる。近いうちに出て行くからそう言っといてくれ」
と言って友人を追い返した。

僕は久しぶりに出かけることにした。
さっき、友人の肩越しに見た屋外は、よく晴れていて温かそうだった。
あの日差しの中に出れば菜摘もきっと温かいだろうと思ったんだ。

外へ出てみて、初めて自分の視野が思った以上に狭くなっているのに気がついた。
部屋を出るときにけつまづいたり、肩をドアにぶつけたりした。
菜摘のために網膜細胞を、ちょっと使い過ぎてしまったのかも知れない。
でも、行こうとしている公園までの道は歩き慣れた道だった。
目の中では菜摘も楽しそうにしている。
久しぶりのデートをしている気分だった。
いつも公園へ行く時は少しでも早く着くように、信号のある交差点まで歩くのを避けて、かなり手前で道路を横断する。
今日も同じようにそこで横断しようとして道路に一歩足を踏み出した。
クラクションとブレーキの音が聞こえた時に、いつもなら見えていたはずの道路の左右が全く見えてなかった事に気が付いた。
そして顔面を強打して、あたりが一瞬真っ暗になった。

薄れていく意識の中で、顔面が押しつぶされたのを感じていた。
壊れてしまった眼球の中から硝子体の液といっしょに、菜摘が出て行くのが見えた。
両目の菜摘が一緒になり、ちゃんとした体を持った小さな小さな菜摘になって歩き出した。
菜摘はしばらく道路に倒れている僕の方を心配そうに見ていたが、やがて時々振り返りながら遠くへ歩き去るのが見えた。

本当に見えたんだ。




                    おわり




新作です。
これぐらいだと掌編小説と言うより、短編小説と言った方がいいのかな?
例によって、書き上げてすぐにアップしてます。
細かな校正はこれから、時間の合間を見てという感じです。

写真は、ネット上の2枚の写真をコミックスタジオで合成して作りました。

あと、作品のタイトルの後に原稿用紙換算の枚数を全部の作品に入れました。
これは読んでくれる人の心構えのためです(笑)
その日の気分によって、短いものなら読めるかなーとか、ちょっと長めのものもいいんじゃない、とかあると思うので。


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by marinegumi | 2010-11-10 17:14 | 短編小説(新作) | Comments(0)

夢の話

これは小説ではなく、実際に見た夢のストーリーです。
それも、今朝見たばかりの夢なんですよね。
こんな夢を見ていて、危うく遅刻しそうになりました(笑)
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こんな感じの建物がありました。(あくまでイメージです)

この建物は、郵便局が運営しているらしいのです。
そこへ僕はインフルエンザの予防注射を受けに行きます。
仕事の車に乗って、一人で行きました。
その建物の前には地面が土のままのロープで仕切っただけの空き地があって、それが駐車場です。
車を止めて外に出ると、郵便局の単車が数台止まっていて、郵便局員が2~3人立ち話をしています。
目が合ったので会釈をしても、向こうは反応せずに話を続けています。
建物の左側の空き地ではテントが5張りほどあって、机を並べていろんなものを売っているようです。
主に、漢方薬などがあって、結構買って行く人がいます。
それを横目で見ながら、僕は建物の中に入ります。
写真の建物は、入口が一つですが、そんな入口が3つ4つ並んでいて、その一番奥の入り口から入りました。
中ではインフルエンザの予防注射の接種が行われています。
僕のほかに2~3人の人がいます。
係の人が、普通のインフルエンザのほかに新型インフルエンザの接種も受けるかどうか聞いたので、受けますと答えました。
「そうですかー、2~3日後に出血するかもしれませんよ」
と、係の人は言います。
どういうこと?と思いながら従来のインフルエンザの予防注射を受け、新型の方を打ってくれるのを待ちます。
新型の方は打つ人が変わって、眼鏡をかけてひげを生やして頭の禿げた小柄なお医者さんでした。
その接種の仕方がめちゃくちゃ変わっているんですね。
気が付くと、右手の手のひらの手首の上、親指の付け根の横あたりの皮膚を5ミリの円形に2か所並べてはがされていて、そこへ薬を塗るんですね。
左側の皮膚をはがした部分に、からし色の塗り薬をのせます。
からしっぽいけれど、全然ひりひりはしません。
それを、耳かきを幅広くしたような金属の器具の頭の丸くなっている部分でぺたぺたと薬を伸ばしているとおもったら先生が。
「ちょっとがまんだよー」
と明るく言いながら、その金属の器具を皮膚の下へ差し込んで中指の手前あたりまで、一気に押し込みました。
「痛い痛い痛い!先生」
言ってもそのまま、抜こうとしません。
「先生!いつまで‥」

と言うところで目が覚めたんです。
目が覚めてからも、器具を差し込まれたあたりにいやーな違和感が残っていましたね。

その後、眠っては違う夢、眠っては違う夢の繰り返しで、本気で目が覚めると出勤20分前でした。
久しぶりに夢をよく覚えていたので、書いてみましたよ。

イメージの写真は、長沼中央農業試験場にある「農試記念館」という建物だそうです。
「ほっかいどう・寄り道紀行」より
このサイトをも少し見ていると、もっと夢の中の建物に似ている写真がありました。
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こんなにしゃれた椅子などはなかったんですが。
写真は似ている部分だけトリミングしました。
これをもうちょっと古びさせて、ペンキなんかあちこちはげたりして、木々をもっと鬱蒼と茂らせると、イメージぴったりです。
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by marinegumi | 2010-11-06 22:16 | わたくし事 | Comments(0)

継承  (25枚)

リュウが目を覚まして外を見ると雨が降っていた。
濃い灰色の空からの冷たい雨は風にあおられて、バラバラと窓を叩いていた。
「仕事」に出かけるには最低のコンディションだった。
しかしリュウは雨に対して、いやな感情は持っていなかった。
核戦争で荒廃し、汚染された地球を長い長い年月をかけて浄化してくれたのは、この雨なのだから。

背後で衣擦れの音がした。
ふり向くとルネが毛布にくるまったままリュウを見つめていた。
「行って来るよ」
と、声をかけると小さくうなづいた。
最近はやっと止める事をしなくなったが、以前は泣いて行かないでくれと困らせたものだった。
でも決して、リュウが行くのを止めたい気持に、変わりはないはずだ。

リュウは着替えを済ませると、腰のベルトに昨日の晩に手入れをした剣を差した。
フード付きの上着にそでを通し、大きなリュックを背負った。
ドアを開けると雨が降り込んで来て、暖かだった部屋が瞬く間に冷気に満たされてしまった。
「気をつけてね!」
ルネは黙っているのに耐えられなくなった様にリュウの背中にそう叫んだ。

ドアを出るとすぐその山が目に入ってくる。
殆んどの植物が緑色である事をやめ、山全体をどす黒く覆い尽くしていた。
うす暗い空の下の、暗闇その物のような山。
それはリュウを呼んでいた。
リュウ自身にはどうする事も出来ない強迫観念のようなものに急かされて、また今度もその山に登ろうとしていた。
決して登りたいのではない。
しかしその「仕事」のために登らなければならないのだった。
「仕事」を続けるのには明確な理由はなかった。
なぜかあの山に登ってそれをやり遂げないと、とんでもない事が起きる。
言ってみればそんな気がすると言うだけの事だ。

リュウの父親が40歳で寿命を全うして死んだ時から、その「仕事」はリュウに受け継がれた。
普段はやせた土地にわずかの農作物を自分たちが生きて行くだけのために作り、ある特定の日だけにその「仕事」のために山に登る。
危険極まりないあの山の頂上へ。
リュウの家族は、そういう使命を代々背負わされた家族なのだった。

山のふもとの、まだ勾配がゆるやかなあたりでもすでに山の一部だ。
足を踏み入れた途端に雰囲気が一変する。
降り続いている雨は少し粘性を増したように感じられ、空気にも人を不安に陥れるような独特の獣っぽい臭いが漂う。

行く手の左側の土壌が雨に洗われ、核戦争前の植物の地下茎がむき出しになっている場所がある。
そこは地下茎によって支えられた入り組んだ地下の迷路になっていた。
得体の知れないものが棲みつき、夜な夜な這いだして来て、獲物をあさりまわるのだ。
リュウも一度だけ子犬が、何か黒っぽい動く塊にとらえられ、その棲家へと引きずり込まれるのを見た事があった。
噂では人間の子供が犠牲になる事も少なくはなかった。

その時、ぬかるんだ地中から黒い手が伸び、リュウの足首をつかんだ。
リュウは素早い身のこなしで剣を抜き、その手を手首から見事に切り落とした。
わずかに自分の靴の先と一緒に。
一瞬、地下に潜んだ何者かと眼が合った。
手も、その目も人間に似てはいたが、もはや人間であることをやめた醜悪な生物の物だった。
昔は地上高く葉を茂らせていただろうその植物の地下茎は勢力を伸ばし、この登山道の下にまで広がって来て、それと共に怪物たちの棲家も広がっているのだ。

しばらく歩くとかなり最近まで、巨大な樹がそびえていた場所までやってきた。
その樹はどんなに気候が悪い時にも変わらずに、大きな甘い実を年中実らせた。
食べ物が少なくなると、人間はもとより、異形の者たちもその実を目指して集まって来た。
不作が数年続いた時にその実は採り尽くされ、あくる年には枯れ、二度と実をつける事は無くなった。
そして今はその直径8メートルほどの根の跡が大きな穴になって残っていた。
穴には水がたまりいつからかそこにも奇怪な生物が棲みついていた。
小型だったが、多くは毒を持っていたので危険だった。

山頂までの行程で一番恐れられている場所、黒の洞窟が見えて来た。
その洞窟の前を通らずには進む事は出来なかった。
前回は何もなくあっさりと通る事が出来たのだがそんな時ばかりではない。
その前は、その前は、と記憶をたどって行くと、左手の中指がズキンと痛んだ。
今はすでに失ってしまった、痛むはずのない中指が。
そう、この洞窟に潜むあいつに持って行かれたのだ。
それは人間の変異した物ではなかった。
もっと巨大な邪悪な存在だった。

しばらくはどうしても洞窟の入り口へ向かって歩く事になる。
その間に洞窟の怪物は十分に獲物を吟味して、狙い定める事が出来るというわけだ。
リュウは、そこに潜む怪物があの怪物と同じ奴かどうか判断しかねていた。
あの日リュウは剣の手応えで、薬指と引き換えにそいつの命を確実に絶ったと思ったのだが、時間と共にその自信は揺らいだ。
また、あの時と同じ奴ならリュウを敬遠しようとするだろうか?
それとも復讐心に燃えて今度こそリュウを、そのすべてを物にしようと待ち構えているのだろうか。

リュウは剣を抜いて構えたまま進んで行った。
前回来たのは3週間ほど前だった。
その時には奴は姿を現さなかったが、何者かの気配をいやと言うほど感じた。
リュウは洞窟を目指して小走りになった。
どうせなら早く終わらせたかったのだ。
そしてあっけなく通り過ぎた。
後ろ向きで洞窟を気にしながら道を進んでいった。

間もなく小さな縦穴がある。
いつも水がたまっている小さな、岩に穿たれた穴。
そこには何も棲んでいないはずだった。
そっと覗き込むと、意外な事に水がたまっていなかった。
こんなに雨が降っているのに、穴はぽっかりと口を開けて、流れ込む雨を受け入れていた。
その時、ごぼごぼっという不気味な音と共にそれは姿を現した。
リュウの左手の中指を物にしたそいつは、油断して穴を覗き込む彼の首に触手を巻きつけた。
とっさにリュウはそばに落ちていた木の枝をつかんでいた。
縦穴に引き込まれかけたリュウはその枝が竪穴の外側にしっかりかかっているのを確かめると剣を抜き、振り払えないので縦にざっくりと触手を切り裂いた。
枝に両腕で体を引き上げ、穴の外に飛び出した。
リュウはリュックをおろすと中からガソリンの缶を取り出し、その穴へ中身をありったけ注いだ。
そして雨を体で遮りながらライターでガソリンを染み込ませたぼろ切れに火をつけ、竪穴に放り込む。
ドン!と言う音とともに穴の奥の方で火の手が上がる。
「そうか、そういう事だったのか」
と呟きながらリュウは先ほどの洞窟まで引き返し穴の上によじ登って待った。
間もなくその怪物は、体の一部に炎をまとい、洞窟から姿を現した。
怪物はいつの間にか、この洞窟からあの縦穴まで通路を掘っていたのだった。
全身を現した怪物はたくさんの触手を持つ巨大なハダカネズミと言った所だった。
触手は10本以上ありその何本かが短く切断されていた。
そのうち1本はずっと前にリュウが切り落とした物、もう1本がさっき切り落としたばかりで、オレンジ色の血を滴らせていた。
リュウは飛びおりながら迫ってくる触手に目もくれず、その本体の頭部めがけて剣を振り降ろした。
低いけれど、ネズミに間違いない鳴き声をあげてそれは崩れ落ちた。
痙攣するそれは悪臭を放ち、雨の中、湯気を上げながら次第に静かになって行った。

岩場に差し掛かると道のりは半ばだったが、あの怪物を殺した今となってはもう頂上へ着いたも同然だった。
この岩場では、上の方から何者かに岩を落され危うく転落しそうになった事があり、もちろん油断はしなかった。
ずっと登りだった道がわずかに下り坂になる。
ここは以前、鬱蒼と木々が茂っていたが、山火事ですっかり焼けてしまい、その後新しい木が生えてくる様子がなかった。

巨大な水晶が輝く谷を見下ろした時、やっと気持ちが緩んだ。
頂上はすぐそこなのだ。
いつの間にか雨は止んでいた。
そして曇り空にぽっかりと小さな湖のような青空が見えると、少しづつ広がって行った。
リュウは頂上にあるステンレスのポールの下へ座り込むとリュックを降ろし、中からサンドイッチを取り出して食べた。
さらにビニールに包まれた布を取り出して広げると、ポールから下がっているロープに結び付けたのだった。
ロープを引いて行くとその布切れは一度大きくバサッと音を立てて風になびきながら上がって行った。
黄色く変色しているが、元々は真白な布だったに違いないそれの真ん中には、これも色あせて殆んど色の残っていない赤い丸が染められていたのだ。
それを掲げるのは今日一日だけだ。
危険な道をもう一度引き返して、またこの旗を取りに来るという事はしない。
あのハダカネズミの化け物以外にどんな危険が潜んでいるかも知れないからだ。
リュウはあすの朝までここで過ごすことにしていた。
夜が一番危険だったので、リュックにはチタン製の組み立て式野宿カプセルを持って来ていた。
これは崩壊した街へ行ったときに拾ったものだ。
これを壊してまで、リュウを傷付ける事はどんな奴にもできないだろう。

その「日の丸」の旗は、まだまだ青空よりも雲の多い空に気持ち良くはためいていた。

こんな布切れを一枚風にはためかせるだけのためにあれほどの危険を冒してまでこの山にやって来なければならないのはなぜなんだろう?
リュウは何人もの親族が、この「仕事」のために命を落としたのを聞いていた。
誰も「仕事」の意味をちゃんと説明できる者はいなかった。
自分が「仕事」を始めてから、その事について何度も考えたが、今ではこれを「おまじない」だと思うようになった。
世界に良くない事が起こらないように。
十分良くない事だらけだが、これ以上悪くならないように願をかけているんだと思っていた。
そう思うともうやめるのが怖くなった。
やめる訳には行かないと思い込むようになった。
永遠に。

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「お父さん何ですか?こんなに朝早く」
「あ、ごめんごめん、起こしてしまったね」
啓一はパジャマから服に着替えながら妙子にほほ笑んだ。
「今日は文化の日だからね」
「そうだったわね。行ってらっしゃいませ」
妙子の普段は使わない馬鹿丁寧な言葉に啓一はふと笑顔になる。
妙子は布団を鼻の下まで引き上げて、向こう側へ寝返りを打った。

啓一がその「仕事」を引き受けてからもう十年は過ぎただろうか。
「仕事」と言っても、ボランティアだが。
祝祭日限定で、日の丸の旗を宮山(みややま)という小高い山の頂上の掲揚ポールに揚げに行くというそれだけの「仕事」だった。
今は亡くなってしまったが、当時の町内会長に頼まれてから、旗日には必ずその「仕事」を果たして来た。
啓一の町内では、定年で退職後の男性は、殆んどが働き口を見つけて仕事を持っている。
仕事を持っていず、足腰が丈夫という条件を満たしたのが啓一だったと言うわけだ。

「子供のころはよく登ったもんだな」
と、いつものように当時を思い出しながら家を出て、宮山を見上げた。
手には国旗の入った箱を持っている。
子供の足でも20分もあれば頂上まで行ける。
頂上手前あたりで、小さいけれど水晶が採れるのでそれを目当てに登ったのだ。
子供の足とは言うが、今、自分の足では30分かかっているのを思い出して啓一は苦笑いをした。

空はよく晴れていた。
登り始めは肌寒かったが、少し汗ばんで来た時には道のりの半分まで来ていた。
途中の岩場で一休みをして、再び登り始める。
この登山と言うほどでもない道程には子供には面白い場所がいくつかあった。
竹藪があり、甘い実のなるあけびの木があり、子供でもとても入れない小さな洞窟や、縦穴もあった。
この縦穴は今は金網でふさがれているが、当時は安全のための物は何もなく、子供心にも近づくのが不安だった。
誰かが落ちて死んだと言うもっともらしい噂を口にする友人がいたが、大人になってからいろんな人に聞いてもそんな事実はなかったようだ。
一休みした岩場は花崗岩がむき出しになっている場所で、表面はすべりにくく、その上を無謀にも走ったりしていたが不思議に転んだ経験はなかった。
頂上まであと3分の1ぐらいの所にはわずかの下り坂があり、そこは木々のトンネルになっている。
ツタ植物が垂れ下がり、それにぶら下がって遊んだ。
頂上の手前には、その水晶の採れる小さな谷があり、後ろ向きに降りながら血眼で友人達と水晶を採る競争をしたものだった。

頂上には岩場に穿たれた穴にポールをコンクリートで固定した旗の掲揚台がある。
これに取り付けてあるロープも子供の遊びの道具だった。
これには苦い思い出があった。
ぶら下がってポールに足をかけて登りかけて靴が滑り、思いきりポールに鼻を打ちつけて鼻血を出したのだ。
そのロープも、もう当時の物ではなく、何度か取り換えられていた。
啓一は国旗の入った箱を開けた。
ロープにくくりつけ、途中で引っかからないように注意してロープを引くと、一度ふわっとひるがえり、風になびいた。
一番上まで引き上げ、ロープを固定して「仕事」は完了だ。
11月3日文化の日、秋の澄み渡った青空に、日の丸はくっきりと気持ち良くはためいていた。
啓一はその時には夢にも思っていなかった。
宮山のふもとに住んでいる自分の末裔たちが代々この「仕事」を続けていく事になるのを。

「さて、今月はもう一回、23日だな」
そう言うと啓一は山を降り始めた。
下りはずっと早く、15分もかからないだろう。





                  おわり





今日は文化の日ですよー(勤労感謝の日と間違ってまして、小説本文も修正しました)
今朝、山の上にある日の丸を見て、この話を思いつきました。
こちらではその山の頂上に祝祭日は必ず日の丸が揚がっているんですね。
誰が揚げに行ってるんだろうと時々思っていましたが、それからこんな話を思いつくとは。
即書き上げて、即アップ‥と言っても、もう夜ですが。
新作も新作、とれたてですね。

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by marinegumi | 2010-11-03 19:24 | 短編小説(新作) | Comments(0)

車はどんどん都会から遠ざかって行く。
住み慣れた、お気に入りの場所がいっぱいある大好きな街。
通い慣れた学校がある、いつも遊んだ公園がある、仲のいい友達がいっぱいいる街。
そして何より、港がある。
僕の大好きな海へと続く大きな港のある街から、僕はどんどん遠ざかるばかりだった。

なんでこんな時に僕は病気になってしまったんだろう。
もうすぐあの船に乗れることが決まっていたのに。
海洋少年団の巡視船体験乗船だ。
僕は体が弱くて、海洋少年団には入っていなかったけれど、お父さんの知り合いのおじさんが海洋少年団の世話をしていて、僕が船を好きなのを聞いて、特別にその日に乗せてもらえる事になったばかりだったのに。
「そんなことは関係ないさ」と言いたげに、車は渋滞の街中を外れ、郊外の道をすごいスピードで走り続けていた。
一緒に乗っているお母さんの顔を僕は見られなかった。
お母さんが楽しそうな顔をしていても嫌だったし、悲しそうな顔をしていたら、もっといやだったから。

車の窓から見えるものは山ばかりになってしまった。
僕は退屈をして、しばらく眠った。
何時間か経って目を覚ましても車はまだ目的地には着いていなかった。
窓の外の景色は、またすっかり変わって見渡す限りの草原の中を車は走っていた。
もちろん細いけれどちゃんとした道を走っていたけど、道の右も左も、行く先を見ても、来た道を振り返っても一面の草原だった。

そして、やっとその病院が見えて来た。
僕が入院する病院の建物は2色に塗り分けられていた。
5階建てのうち、3階ぐらいまでが薄い青色で、それより上の方は真っ白だった。
そして、ところどころの窓は丸かった。
「船だ!」
僕はその建物を初めて見た途端に船に似ていると思ったんだ。

お母さんが入院手続きをしている間に僕は早速屋上に上がってみた。
その屋上よりも高い所、建物の一部分だけど、一番高い所は、塔屋(とうおく)と言うのだそうだ。
5階建ての四角く細長い上下2色の建物の、屋上へ出る為の階段の部分で、そこだけが屋上からひときわ高くそびえている。
アンテナや避雷針が船のマストのように高く立っていて、船橋のように見える。
船橋は船の指揮をする場所。
そこには船長がいて、一等航海士がいて、操舵手がいて…
船長がときどき双眼鏡で、広い海の向こうを眺める所。
屋上から見渡せば、本当にこの病院は草原の真ん中に建っているのがよくわかった。
船のような病院がいるのは、ただの草原だ。

ベッドが半分以上を占める病室に落ち着いても、僕はベッドには横にならずに窓の外を見ていた。
病院が船だと強く思い込むと、草原が海に見えない事もないと思った。
手すりに顎を乗せて眺めていると、遠いところから風が吹いて来て、途切れることなく緑の草の葉を波打たせている。
その波打つ様子は規則正しく、同じような波の繰り返しに見える。
近くの草原だけを見ているのでは気がつかない。
遠くの方から、全体を大きく眺めると、本当にその草原が海のように波打っているのがよくわかるんだ。
潮の匂いがしないけれど、あまりに緑色すぎるんだけど。

お母さんは、二日ほど僕の病室で一緒に眠ってくれたけれど「毎週お休みには来るからね」と言い残して帰って行った。

〈船長さん〉(ほんとは院長先生だけど、僕は〈船長さん〉と心の中で呼んでいた)は毎日僕の病室へやってくる。
そして僕は毎日同じことを聞く。
「僕の病気はいつ良くなるの?」
〈船長さん〉は言う。
「そうだなーぼうや、君の病気は気長に直さないとだめな病気だからなー」
これも毎日同じことばっかりだ。
「早く治してほしいんだけど、何かもっといい薬はないの?」
「何をそんなに焦ってるんだ?こんなに環境のいい病院はめったにないぞ。少年よ、もっと入院生活を楽しみたまえ」
「わはははは」と笑いながら〈船長さん〉は病室を出ていく。
看護師さんのお姉さんと僕は顔を見合わせて苦笑い。
先生が〈船長さん〉なら看護師さんも違う呼び方があってもよさそうだと思ったけれど、思いつかなかった。
まあ、本当の船にも看護師さんが乗っている事もあるし…、そう考えると大きな船には船医さんがいるんだという事に気がついた。
それからは、僕は院長先生を〈船長さん〉と呼ぶのをやめた。

丸い窓のある部屋は談話室になっている。
その窓から外を見ていると本当の船に乗っているようだった。
そして、僕のような子供もたくさん入院していて、学校の勉強が遅れないように勉強の時間もあった。
本当の先生がいて勉強を教えてくれる部屋にも丸い窓があった。
その窓から、風で波打つ草原をときどき横目で見ながら毎日勉強をした。

僕のこの船は毎日航海をしているんだ。
この広い広い草原の海を、もう一つの海へ向かってまっしぐらに進んで行く。
僕を待っているあの巡視船がいる海。
たっぷりと塩水を湛えた、本当の海と出会うまで航海を続けるんだ。
近づいてくる。
その日がどんどん近づいてくる。

僕はベッドに横になっていた。
横向きになって、窓に背を向けていた。
外を見たくなかったんだ。
カレンダーにつけた丸印の日の数字を見ていた。
院長先生は、僕を見て言った。
「ん?どうしたんだ、今日は早く病気を治してくれと言わないのか?」
僕は答えた。
「もういいよ、ずっと治らなくてもいい。僕はこの病院にいつまでもいるんだ」
「ほほーそんなに気に入ってくれたのか?この病院を」
「わははは」と、笑いながら僕の頭をくしゃくしゃにして出て行った。

一人になると、急に涙があふれ出した。
院長先生が出て行くのを、涙のやつが待っていたみたいだった。
とうとう僕は大事な日に間に合わなかったんだ。
巡視船の体験乗船の日は今日だった。

窓の外に広がるのは海なんかじゃない。
ただの草原、草っぱらだ。
波打っている草のすぐ下には硬い土が隠れている。
コンクリートで地面に固定されたこの病院も船なんかじゃなく、どこにも行けやしない。
どこまでも自由に行ける本物の船だって、こんな草原の海まではやってこれないんだ。
昨日の夜に夢に見たようには。

 僕が丸い窓から草の海原を見ていると、はるか向こうに船が見えた。
 まだ豆粒ほどの大きさだけど、僕にはそれが巡視船だと分かった。
 どんどんそれはびっくりするぐらい早く大きくなった。
 巡視船に乗っている、海洋少年団の子供たちはみんな笑顔で手を振っている。
 巡視船はボートを草原へ降ろした。
 それには、僕を迎えに来たお父さんとお母さんが乗っている。


わくわくした気持ちを抱いて、眼を覚ますと、カレンダーが目に入った。
赤色で丸を付けたその日が今日だという事が解った。
誰も迎えになんか来ないんだという事が解ってしまった。

起きてしばらくの間は外の草原は、まだ風に波打つもう一つの海のように見えていた。
まだ少し夢の余韻が残っていたんだ。
しばらく見ているうちに、だんだん魔法が解けるようにその海は輝きを失い、ただ、がさがさとした草っぱらにしか見えなくなり、病院もすっかり船でいる事をやめてしまった。

その時感じた気持ちは、初めてのものだった。
僕は、ずっと後になってから、その気持ちには「むなしい」と言う言葉がぴったりなのを知る事になる。

その時はまだ、その気持ちを表す言葉が僕の中にはなかっただけのことだった。

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                        おわり





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昔の作品が続いていましたが、一応新作です。
「たそがれの船出」と「何も見えない水平線に」と、この「ふたつの海」で「少年と海三部作」?なんてでっち上げたりして。
前の2編と、この作品との間には何十年も時差があるんですけどね。

草原の巡視船の写真ですが、コミックスタジオというソフトで合成しました。
以前はこのソフトで漫画をたくさん書いてたんですけど、何だかしんどくなっちゃって、文章を打っている方が楽に物語にできるんですよね。

合成に使った写真はこちら
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by marinegumi | 2010-11-02 21:29 | 短編小説(新作) | Comments(0)