まりん組・図書係 marinegumi.exblog.jp

海野久実が掌編小説やら短編小説を書いています。タイトルの後に原稿用紙換算の(枚数)があるのが小説です。


by marinegumi
プロフィールを見る
画像一覧

<   2011年 09月 ( 10 )   > この月の画像一覧

新千歳空港から支笏湖南側の湖畔を回って、ニセコ周辺へやって来ると、いやでも目につくのが「羊蹄山」ですね。
この日、初めて見る羊蹄山はすっぽり雲の中でした。
でも次第に雲は少なくなり、ニセコに到着するころには美しい姿を見せてくれました。

「ミルク工房」から見る羊蹄山 クリックで拡大
a0152009_2010576.jpg


ニセコ駅前にはかぼちゃがいっぱい。
どうやらハロウインのイベントらしいですね。
a0152009_20152915.jpg


ホームに出てもかぼちゃだらけ。
a0152009_202628100.jpg

しゃれた駅舎前にも。
a0152009_20181343.jpg


a0152009_2016425.jpg

切符売り場にも。
a0152009_2019457.jpg

そしてどうやら、このカボチャに絵を描くコンテストがあるようなのです。
a0152009_20211927.jpg

a0152009_20214944.jpg

そこで僕も参加する事にしました。ホテルの部屋にかぼちゃをもらって帰ってきて出来たのがこれ。
芯の太いポスカしかなかったので細かい絵は描けませんでした。
a0152009_20294166.jpg


右側には三日月とほうきに乗った魔女。
a0152009_20315248.jpg

左側にはガイコツ。
a0152009_20335232.jpg


後ろ側にはコウモリと流れ星。
a0152009_2034421.jpg

親戚の家の前の道路にもかぼちゃが点々と置かれています。
このコンテストの商品はと言うと、当地の温泉の入浴券だそうです。
入選したら温泉に入りに来なくちゃね(笑)

クリックで拡大
a0152009_2037223.jpg


二日目の朝、ホテルを出発する前に乗った熱気球です。
a0152009_20391983.jpg


a0152009_20394190.jpg


それから向かったのが小樽です。
毛無山(けなしやま)展望台から望む小樽市街。
夜景もきれいだろうなー

クリックで拡大
a0152009_20411138.jpg


そして小樽運河。
a0152009_20403394.jpg

a0152009_20455599.jpg

a0152009_20465385.jpg


a0152009_20474795.jpg

直筆の絵を売っている人、アクセサリーを売っている人、似顔絵を書いている人、占いの人。たくさんのお店が並んでいました。
a0152009_20494245.jpg


a0152009_20501517.jpg

それにしても、一番の感動は午前5時に見たホテルの窓からの夜明けの羊蹄山でした。

クリックで拡大
a0152009_20521661.jpg



その後行ったのはー?
えーと(笑)

石狩湾の「ローソク岩」とか、そうそう「カムイ岬」では360度の大パノラマの夕陽を沈むまで見ましたねー
それから「神仙沼」にも行きました。
a0152009_20555868.jpg

三日間ともレンタカーで、同じところを二度通ったり、何にも縛られない旅だったのでーす。
北海道に来てから、お店の人に何度も言われた事があります。
「前の日までずっと雨だったのに丁度お天気になってよかったですね」
お天気に恵まれた良い旅行になりました。

それにしても、今の携帯のカメラは画質がいいですね。
僕のデジカメよりも高画質なので、デジカメは持っていきませんでした。
[PR]
by marinegumi | 2011-09-28 21:01 | わたくし事 | Comments(8)
アトマシン・シリーズ 2

はるかな外宇宙からやってきた「それ」は密度の高い気体の状態のままで空中を彷徨っていた。

「それ」は自分を生み出した「マスター」と共に、この星へやってきたのだが、彼らはもう遠くへ行ってしまったのを感じていた。
「マスター」の役に立つために作られた「それ」には感情はなかった。だから、ささやかな手違いのために、置き去りにされた事を特に嘆いてはいなかったのだ。「それ」の基本的な機能として新しい自分の「マスター」が見つかるまで、待機している状態だった。
自分を本当に必要としてくれる知的生命体が見つかるまで。


翔太はまだ2歳だった。だから、自分がなぜこんな山奥に車で運ばれ、一人っきりで置き去りにされたのか見当もつかなかった。
雪がうっすらと積もった、道らしい道もない結構高い山の中。しかも真夜中で、明りの一つも見えない場所だった。さらに悪い事に、彼はパジャマのままで裸足だった。
翔太はひとしきり母親の名前を呼んで泣き続け、泣き疲れて、とぼとぼと歩きだした。始めにどっちを向いて歩こうかと、小さいながらも考えた。大人なら山を下る方向に歩いただろうが、彼は違った。
山を下る方向は真っ暗で、山の上の方には星が瞬いているのが見えた。
翔太はそんなわずかな光を目指して歩き始めたのだった。
ほんの2歳の幼児が冬の夜中、草木の生い茂る山をどれだけも移動する力はないだろう。すぐに歩き疲れてしまい、眠り、凍死するまでにそれほど時間はかからないはずだった。

翔太は30分ほどは我慢して歩いた。「アンパンマンマーチ」を歌ったり、自分が戦隊ヒーローになったところを想像したり、立ち止まって「おかあさーん」と何度も叫んだりしながら。でもほんの2歳の幼児だった。
間もなく木の根元に座り込んでしまい、震えながら声もなく涙を流すしかなかった。
山の暗さに恐怖を感じていた間は眠気はやってこなかったが、それも長続きはしなかった。翔太の体温は次第に奪われ、意識はもうろうとして来た。
彼は思い出していた、楽しかったあの日の温かな場面を。

それは1週間ほど前に行ったデパートだった。
暖かいコートを着せられ、父親と母親の間で両手をつなぎ、歩いたあのきらびやかなデパートの光景を彼は閉じたまぶたの裏の闇に見ていた。初めてのデパートで、初めて乗ったエスカレーター。
長いエスカレーターの上がって行く先には照明を落とした暗い天井に小さなLEDランプがたくさん輝いていた。そのデパートのエスカレーター周りの天井は、星空をイメージしてディスプレイされていたのだ。
翔太はその記憶の中の映像と星空とを重ね合わせ、夢に見ていた。
寒く、心細い山道を必死に歩いている時に、楽々と自分を運んでくれたあのエスカレーターの事を思っていたのだった。

上空を風に乗って彷徨っていた「それ」は、か弱い心の叫び声を聞いた。
わずかな、ほんのかすかなその脳波の主は確かに自分を必要としているようだった。

その知的生命体の子はひどく弱っていた。しかし、必死に何かを求めているその意思は頑なで強力だった。
彼が必要としているのは「えしゅかるーたー」という名前のものらしかった。
知的生命体の子はそれに乗って星空へと登っていく場面をイメージしていた。
それは宇宙船なのだろうか?それとも軌道エレベーターの類なのか?
「それ」は薄れて行く彼の意識を汲み上げ、分析し、彼が必要としているその物に姿を変えようとしていた。

翔太は自分がたくさんの明かりに包まれているのに気がついた。そして体は嘘のようにポカポカと暖かかった。
彼は両親と行ったデパートで乗った、あのエスカレーターに足を置いて立っている自分に驚いた。いや、そこはデパートではなかった。そのエスカレーターは、デパートにあった物よりも、ずっとずっと長かった。翔太の乗ったエレベーターは先が見えなくなるまで遠く長く、星空目指して続いていたのだ。
翔太は下を見下ろした。かなり登って来たらしく、真っ暗な山の暗闇の向こうに小さく町の明かりが見えていた。そして上を見ると、きらきらと無数に輝く星空を、ほぼ無音でどんどん伸びて行くエスカレーターが細く糸のようになるまで続いていた。

a0152009_2320664.jpg


翔太の父親は駅の通路で、家からの電話を聞いて青ざめた。妻の言葉は信じられないものだったのだ。
「翔太がいなくなった?そんなばかな!」
妻はうろたえるばかりで、話は要領を得ない。どうやら誰かが家に忍び込み、眠ったばかりの翔太を連れ去ったようだった。
「すぐに帰る!」
父親は改札口を抜け、エスカレーターに乗った。その速度のあまりの遅さにいらついて、人をよけて駆け上がり始めた。
その時、天井に星空が見えた。気がつくと周りの人はいなくなり、彼だけがそのエスカレーターに乗っていた。星空に伸びる、どこまで続くとも知れない長い長いエスカレーターに。

警察に連絡を済ませたもののそれから何をすればいいのか翔太の母親はうろたえていた。
「そうだ、翔太の写真を…」捜索のために警察に見せる写真を用意しようと、やっとそれを思いついて2階への階段を上がりかけた。
その時、何か機械音がして階段が上に動き始めたのだ。上を見るとそれはエスカレーターになっていた。2階の天井よりはるかに高く長く、それは登って行った。星空を目指して。

星空の、一つの明るい星がさらに明るさを増したと思えば、見る間に1本の長いエスカレータになり、翔太の家の庭に突き刺さるように固定された。
やがてそのエスカレーターに乗って下りて来る人の姿が見え出す。
両親の間で手をつないだ翔太がうれしそうにはしゃいでいる。二人の手にぶら下がり、持ち上げられたりしながら笑い声をあげている。
三人が庭に降りると、その瞬間、エスカレーターは何の痕跡も残さずに消えてしまった。
そして三人を包んでいた暖かい空気のバリヤーも消えていた。

警察が到着して、到底信じてもらえない部分は省略して事情を説明している所に家の電話が鳴った。
父親が出ると、それは何かで口を覆ったような、くぐもった男の声だった。
「子供は預かった。2000万円用意しろ。警察には言うんじゃないぞ」
「あの…」
「子供は無事だ。言う通りにすれば無傷で帰してやる」
父親は、翔太を殺すつもりで山に放置した犯人に怒り、罵倒したい気持ちを抑えながら、そばにいる刑事からの、電話を長引かせるための指示に従った。

「えちゅかれーたー」に姿を変えていた「それ」はまだ翔太の家の上空に密度の高い気体の状態で漂っていた。
そして間もなく自分がもう必要とされてはいないのを感じ取ると風に乗って移動を始めた。
次の、自分を本当に必要としてくれる知的生命体を探すともなく探しながら。



おわり



この作品は日本ブログ村のトーナメント機能を使って、川越敏司さんが企画した「エスカレーター」をテーマにしたショートストーリートーナメントのために書きました。

トーナメントの投票には参加しますが、自分の作品には常に引き分けに投票する事にしました。。

小説のアイデアに詰まったら、何かの募集のテーマに乗っかって考えるのもいいかもしれないと思いましたよ。自分でまずテーマを決めてから考え始めるとかね。

ところで、「エスカレーター」か「エスカレータ」で迷いましたが、Wikipediaでは「エスカレーター」、メーカーの三菱電機のホムペでも「エスカレーター」なので、「エスカレーター」にしました。


「アトマシン・シリーズ」と言うのを、さきほどでっちあげました。
その1はこちらです。
    ↓
「自動販売機」

「アトマシン」と言うのは「ナノマシン」よりさらに小さい機械と言う設定です。
「ナノ」は十億分の一、「アト」は百京分の一。
「ミリ」が0.001に対して「アト」は0.000000000000000001の大きさ。
よくわかりませんが、そういうことらしいですね(笑)

最初は「ナノマシン」より1段階小さい「ピコマシン」かなと思ったんです。
「ピコマシン」って響きが、かわいくていいかなと。
でもネットで検索すると、結構使われているようなので、次にさらに小さい「フェムトマシン」に決めていたんですが、あまり可愛くない(笑)
というわけでさらに小さい「アトマシン」で決定しました。
「ピコマシン」にはかなわないけど、なんとなく「アトム」っぽくてちょっとかわいいネーミングでしょ?

ショートストーリー「エスカレータ」ブログトーナメントに参加するものの、準決勝進出ならず。



ランキング参加してます。
クリックすると、幸運が(笑)↓
にほんブログ村 小説ブログ 掌編小説へ
にほんブログ村

人気ブログランキングへ
[PR]
by marinegumi | 2011-09-27 23:28 | 掌編小説(新作) | Comments(8)

新千歳空港なう

a0152009_18235415.jpg

今から帰ります。
画面の左端に写り込んでいるのが僕ですwww
[PR]
by marinegumi | 2011-09-26 18:23 | ケータイからこんにちは | Comments(2)

初めての小樽運河

a0152009_15534864.jpg

北海道が初めてなので小樽運河が初めてなのは当たり前ですよね。
でも、一度は来てみたかった場所です。
倉敷の美観地区を大きくしたようなところですね。
[PR]
by marinegumi | 2011-09-25 15:53 | ケータイからこんにちは | Comments(0)

熱気球に乗った

a0152009_13422790.jpg

かなり昔、乗る機会があったんですが強風のため叶わず。
これはホテルの早朝限定のイベントです。
[PR]
by marinegumi | 2011-09-25 13:42 | ケータイからこんにちは | Comments(2)

朝焼けの羊蹄山です

a0152009_5325179.jpg

滞在中のホテルの部屋からの風景です。
羊蹄山はもういいか、と思っていたんですがこれはすごいですね。
上空に細い月がぽっかり。
[PR]
by marinegumi | 2011-09-25 05:32 | ケータイからこんにちは | Comments(4)

ただ今北海道!

a0152009_1602115.jpg

と言うわけで(どう言う?)北海道に来ています。
新千歳空港から支笏湖のそばを通り羊蹄山を望む親戚にちょこっとおじゃまして、これからホテルにチェックインと言うところです。

写真は蝦夷富士と呼ばれる羊蹄山です。
[PR]
by marinegumi | 2011-09-24 16:00 | ケータイからこんにちは | Comments(5)
この作品はharuさんが朗読してくださっています。先に朗読から聞
朗読からのつづきは落ち葉の写真の下からです。
a0152009_1102946.jpg


わたしがまた、その病院に戻って来た時には、季節はすっかり冬になっていた。
前に入院していた時の病室は307号室で、廊下を挟んだ向かい側の326号室が今度のわたしの部屋になった。
ベッドに腰掛け、窓から外を見ると葉をすっかり落とした落葉樹の林が広がっている。
ドアを押し開け顔を出すと、しんと静まり返った消毒液の匂いのする薄暗い廊下が伸びていた。
「じゃんけんぽん」
小さな声が頭の中で聞こえた気がした。か弱いその声の持ち主の顔を思い出していた。


わたしが307号室にいた夏のある日の事だった。
つらい治療から帰ってきたわたしはベッドに横になり、小学校の国語の教科書を胸の上に広げて伏せたままぐったりとしていた。目を開けると、焦点の定まらないわたしの視線の向こうに小さな男の子の笑顔があった。半開きにしていたドアのすきまからのぞき込んでいたんだ。
その子は青い縦じまのパジャマを着て、大きな大人用のスリッパをはいている。わたしより五歳ほど小さいかなと思った。真ん丸な顔をして、はち切れそうな笑顔だった。
部屋に入って来ると横になっているわたしの目の前、鼻と鼻がくっつきそうなほど近くで言った。
「おねえちゃん、あそぼ」
小さなよわよわしい声だった。
「わ、わたし今ちょっと疲れてるんだ。また今度ね」少しどぎまぎしながらやっとそう答えた。
「いいよ。また今度ね。今度、何して遊ぶ?」
わたしは強い眠気に襲われ「かくれんぼでもしようか…」そう言いながら、男の子の返事も聞けないうちに眠りに落ちてしまった。

307号室の窓からは遠くに街並みが見えた。さらにその向こうに海が広がっていた。
たった今、看護婦さんが体温を測りに来て、注射をして出て行ったばかりだった。それを待っていたようにドアが開くと、昨日の男の子が入って来た。
「おねえちゃん、あそぼ?」

わたしたちは部屋を出て、屋上へ続く階段を上がった。そこは洗濯機や掃除道具や色んな物が置いてある塔屋だった。
「ようし。かくれんぼだね。じゃんけんに勝った方がかくれるんだよね?」
「うん!」男の子は本当にうれしそうに笑った。
「じゃんけん…」
その時、男の子の名前を呼ぶ声がした。看護婦さんとお母さんらしい人が上がって来た。
「だめでしょ?ちゃんと大人しく寝てなくちゃ」
男の子は手を引かれ連れ戻されていく間、ずっと下を向いていた。わたしは寂しくなっていた。
こっちを向いて「バイバイ。また今度ね」と言ってほしかったんだ。

それから何度もそういう事があった。
男の子が大人の目を盗んで病室を抜け出して来ては、かくれんぼをしようと言う事になる。でも、その子の病状は看護婦さんや両親はもちろん、入院している人みんなが知っていた。だからたいていは、じゃんけんをして、まだゲームが始まらないうちに大人たちに見つかり連れ戻される。
かくれんぼを一度も始められないうちに、いつのまにか男の子はわたしの病室に顔を見せなくなってしまった。

そんな事を思い出しながらわたしは海側の307号室とは全く違う窓の外の景色を見ていた。
男の子はあれからどうしたんだろう。しばらくしてわたしは退院する事になったので、その事が気になっていたけれど、どうする事も出来なかった。男の子は病気が治って退院したのか、それとも…。
その時、ストッパーで半開きになっている病室のドアの隙間から小さな手がのぞいているのが見えた。握られたその手がぱっと開き、つぎにハサミを作った。グー、チョキ、パーだ。
ドアがすうーっと開き、青いパジャマのそでが見え、あの時の男の子が立っていた。
「おねえちゃん、あそぼ!」元気そうな声で男の子は言った。
「ま、まだここにいたのね?」初対面の時と同じようにわたしはちょっとうろたえていた。
男の子はわたしの手を引いて廊下へ出た。そしてまた屋上へ続く階段を上がり、洗濯機の横でじゃんけんをする。
「じゃんけん、ぽん!」あいこだった。
「あいこで、しょ!」
「やったー!」わたしの勝ちだった。
「じゃ、わたしがかくれるわね」男の子は笑顔のままうなづいた。
「なにやってるの?」看護婦さんが立っていた。
男の子はひきつった顔になり、走って階段を下りてしまった。
「病気を治しにここに来てるんでしょ?ちゃんと病室でおとなしくしていなさいね」
看護婦さんは男の子がいなくなったので、わたしに向かって言った。

それからも時々男の子はやってきたが、前と同じようにすぐに誰かに見つかってしまい、なかなかかくれんぼは出来なかった。
わたしは、一向に良くならない自分の病気に絶望的になり始め、生きているうちに一度でいいから男の子とかくれんぼをしたいとまで思うようになっていたんだ。
そして、やっとその願いがかなったのは、秋の気配を感じる事が多くなったある日のことだった。

a0152009_111211.jpg


その日は朝からなんとなくいつもと違っていた。それはたぶん新しい痛み止めの薬や、一緒に飲んだ薬のせいだったと思う。空は晴れるでもなく曇るでもなく、まるで夕暮のような光に満ちていた。病院の中もその光にあふれ、お医者さんや、看護婦さん、入院患者の子供たちも、大人の人もみんな穏やかな顔をして、その不思議な光の中で行きかっていた。
わたしはその頃には一日中ベッドに横になっている事が多くなっていた。目を閉じてはいたけれど痛みのため、眠れずにいた。
その時、目を開く前からわたしは、男の子がベッドの横に立っている事を疑わなかった。
「おねえちゃん、かくれんぼしようよ」と言いながら男の子はわたしの手を引いた。すると不思議な事に、自分が痛みもなく、少しも疲れていないのに気がついた。わたしたちは階段を上がり、塔屋から屋上へ出た。
「よーし!今日こそかくれんぼだ!」
「じゃんけん、ぽん!」
一度目でわたしの鬼が決まった。
「それじゃ、ちゃんと目隠ししてね。10数えるんだよ」と言いながら走り去る男の子の足音を、わたしは闇の中で聞いていた。
オニになったり、かくれたり、二人で交互に繰り返しかくれんぼを続けた。いつもわたしが男の子を見つけるのは難しく、わたしは反対に男の子にすぐに見つけられてしまった。

海の向こうから夕闇が押し寄せる頃、二人はやっとかくれんぼをやめた。階段を下り、廊下をかけて行く男の子。
「ばいばい。またね」そう言いながら向こうの角をまがった。

わたしが326号室に帰ると、看護婦さんが待っていた。いや、担当の先生や、隣の部屋の患者さんまでが一緒にそこにいた。
「どうしたの?みんないっしょに」わたしは聞いた。
「どこにいたの?」と看護婦さんが反対に聞き返した。
「ずっと探し回っていたのよ」
「屋上や塔屋やボイラー室で男の子とかくれんぼしてたの。それでもわたし、ちっともしんどくなかったのよ」
わたしが笑顔を作っても、みんなは無表情のままだった。
「いい?そんな男の子はこの病院にはいないのよ」
看護婦さんが何を言っているのか判らなかった。
「あなたが時々誰かと話をしたり、じゃんけんをしたりしているのを見たわ。でもあなたの前には誰もいなかったの。いつもね。それで私たちはそんなあなたを見ると、すぐにやめさせていたの」
話している看護婦さんのそばの壁に鏡が架かっていた。
その鏡には見知らぬ女の人が写っていた。
それがもう子供ではなくなった私だと言う事に気がついた時、この十数年間の私の記憶が一度に私の心を満たして行った。それと共に体に疲労感と、痛みが戻ってきた。
「いいですか?あなたがいつも言っていた男の子はもう十何年も前に、この病院で亡くなってるんですよ」
病室が現実感を取り戻し、消毒液の匂いが空気に満ちていた。


a0152009_14514664.jpg


(haruさんのブログからの つづき はここからです)

それからさらに何年もが過ぎた。
私は色んな病院を替わり、入退院を繰り返し、負けそうになりながらもなんとか病気と付き合って来た。そして今、あの青いパジャマの男の子と初めて会った病院の前に立っていた。
いや、もうそこは病院ではなかった。蔦の葉や雑木林にのみ込まれそうになっているコンクリートの建物。それは原因不明の火事で焼けてしまったあの病院だった建物の廃墟だ。
火事があった事をテレビのニュースで聞いてからも、すでに十年近くが過ぎていた。その建物を一度見て見たいと思いながらも、ずっと体の調子が悪く、最近やっと一人で外出が出来るようになったばかりだった。
私は雑草をかき分け、足元を走るトカゲに驚いたりしながら、建物の中に入った。
受付の前を通り、動かないエレベーターの前を過ぎ、診察室をいくつか数えて階段を上がり始めた。
建物の中は全てひどく焼けただれ、すすで真っ黒になっていた。診察の機器や色んな道具や家具類も熱で変形して、当時のまま残されていた。
3階まで階段を上がると、さすがに息切れがして手足や背中が痛んだ。その痛みでふと我に返り、自分は何をやっているのかと、馬鹿ばかしく思えて来る。でもそんな思いを無視するかのように、足は自然に307号室に向かった。
1,2階と比べるとこの階は殆ど焼けていなかった。それでも307号室のドアはなくなり、窓ガラスはすべて割れ、部屋の中まで蔦の葉が侵入しようとしていた。
ベッドはすこし斜めに場所がずれてそこにあった。私は自然にそれに腰掛けていた。
廃墟の中に一人きり。でも怖くはなかった。昼間だったし、窓の外には優しい日差しの中で、あざやかな緑の葉が風に揺れていた。
ベッドに腰掛けたまま私は右の手のひらを見た。
「じゃんけん…」と声にならない声で呟いたとき、私の前で小さな子供の手がひるがえるのが見えた。反射的に私は「ぽん!」と声に出していた。
顔を上げると、そこには誰もいなかった。ただ、壁にかかった割れた鏡が私を写していた。だいぶ白髪の増えて来た私の顔を。
さっきのじゃんけんは私の負けだった。私がオニになる番だった。
「もうかくれちゃったんだ?」そう声に出して、私は立ち上がった。
「もう探さなくてもいいよね?」
私は病室を出て廊下を歩いた。足どりはだんだん速くなる。そして階段を苦しい息で下り続けた。
もしも後ろで男の子の声が聞こえたら私はきっと悲鳴を上げただろう。

でもそんなことは起こらなかった。




おわり



haruさんの詩「かくれんぼ」を元にした掌編小説です。
haruさんの要望(めちゃぶり)で書くことになっちゃいました(笑)
この作品を朗読して下さるそうですが、朗読は原稿用紙にして、7枚ぐらいが限界と言っておられたharuさん。
ごめんなさい13枚(12枚半)になってしまいました(苦笑)
そこで、提案ですが、原稿用紙にして9枚ほどの所。

>病室が現実感を取り戻し、消毒液の匂いが空気に満ちていた。

ここで朗読は終わりにしてはどうでしょうか?
ちゃんと結末が付いていますからね。
で、あとがきに、「原作にはさらに驚きの展開が用意されています!」と書く。
haruさんのお客様がみんなこちらを見に来ると言うのはどうでしょう(笑)
ささやかなむちゃぶり返し!
長くなりそうだなと思い始めた時に、そういう遊びも面白いかなと思って、そこで終わってもいいように書きましたから、違和感はないと思いますよ。

川越さんのコメントを受けて、男の子が着ている「かすりの着物」を「青いパジャマ」に直しました。
臨機応変、優柔不断。
でもまあ納得の修正です。


ランキング参加してます。
クリックしてくれたらうれしい!↓
にほんブログ村 小説ブログ 掌編小説へ
にほんブログ村

人気ブログランキングへ
[PR]
by marinegumi | 2011-09-21 01:24 | 短編小説(新作) | Comments(6)
a0152009_18183195.jpg

携帯から投稿出来るように設定したのでテスト投稿です。
前に「夏休みの午前10時」の舞台になった写真をアップした時に漏れていた図書館の写真です。
[PR]
by marinegumi | 2011-09-16 18:18 | ケータイからこんにちは | Comments(7)
a0152009_17232520.jpg



道の上に 蝉の骸が増える頃 終らぬと見え 終わる夏かも

柄にもなく詠んだ自作の短歌をふと思い起していた。
犬を散歩させながら歩いていると、道の上にはたくさんのセミの亡骸が落ちている。
短歌を詠んだのはちょうどお盆の頃だったのだけど、九月に入った今、その内容がしっくりとなじむ季節になっていた。
仰向けになっているセミ。羽根をやや開いて斜めになっているもの。道路の上で羽根を休めているかのように、今にも飛びそうな様子で死んでいるもの。
車に轢かれたのかバラバラになっている亡骸は、同じように道路に落ちている枯葉を想像させた。亡骸はみんなやがてバラバラになり、枯葉とまじり合い、見分けがつかなくなり、大地へと還って行く。

そんな事を思いながら、いつものように小説のネタを探しているのだった。

亡骸が枯葉とまじりあい…
この間の一斗缶殺人事件ではないが、人を殺した時、一番問題なのは死体の処理だと思う。
このセミのように死体がカラカラに乾けば、砕いて小さくして他の物と混ぜて捨ててしまえば…
いやいやそれには何か大きな乾燥機のような設備が必要だ。
それならいっそ焼却してしまえばいいわけで、そうなるとそんな場所の確保と死体の移動手段が必要で、事が大げさになり、発覚し易くなって来る。

そこまで考えただけで行き詰ってしまった。
セミの亡骸と人間のそれを同じように見てしまったのがそもそもの間違いだ。
ぼんやりと考えていると、そう言う簡単な事に気がつかずにお話を頭の中で進めてしまう事も多い。
そしてどうもそういう犯罪小説を書く素質が僕にはないらしいのに気がついた。

セミの亡骸を次々に見ていると、ほとんどがアブラゼミだった。
最近見かけるセミの多くがクマゼミになってしまったと思っていたのだけど、道の上の死骸はアブラゼミばかり。
これはどう言う事なんだろう。
クマゼミが一時増えていたのが、再びアブラゼミが盛り返してきたという事なのか?
セミの種類によって、年ごとに成虫になる数に多い少ないがあるのだろうか?

そこでまた別の切り口で小説にならないかと、考え始める。

死んでいるのはアブラゼミばかり。
いや、中にはツクツクボウシやニイニイゼミも数は少ないが混じっている。
ところが、あんなにたくさん鳴いていたクマゼミの死骸が全く見つからなかった。
秋になった頃、それを不思議に思った一人の昆虫学者が、調査する事にした。
ある日、森の中に分け入り、間もなく木にとまったクマゼミを見つける。
彼は、おそらく木にとまったままの体勢で死んでいるのではと思いながら、補虫網を伸ばして捕まえる。クマゼミは羽ばたいた。
それは確かに生きていた。
すでにほかの種類のセミはすべて死に絶えているこんな時期になぜ?

彼はそのクマゼミを手に取り、じっくりと観察した。
ごく普通のクマゼミのはずだったがどことなく違うような気がした。
少し大きい?いや、それほどでもない。
色が少し赤みがかっている?いや、光線の加減かもしれない。
なんとなく少し重い様な気もした。
そのクマゼミを手に持ったまま、頭上の木々を見上げると、あちこちに同じように止まっているクマゼミが見つかった。
さらに注意深く木々を見て行くと、夥しい数のクマゼミが、みんな鳴きもせず、びっしりと木々に張り付いているのに気が付く。
同時に、しんと静まり返っていたはずの森に、ずっと響いていた低い音域の音にも彼は気が付く。
そのクマゼミたちは、みんなわずかに羽根を震わせていたのだ。

その時彼は右手の親指の付け根あたりに激痛を感じて、持っていたクマゼミを放り出した。
手には赤い刺し傷があった。
見る間にはれ上がって行く右手を信じられない思いで見詰めている彼の頭上で、木々のクマゼミたちはこの時とばかり、一斉に飛び立った。
そして、まるでスズメバチが人を襲う様に群れをなして、彼に向って来るのだった。
彼は逃げた。
右手の尋常ではない痛みは腕からやがて右胸へと広がって来ていた。
次第に朦朧としてくる意識の中で、逃げて行く足元に横たわるたくさんの動物の死骸に気がついた。
毛皮と骨だけになった猫や犬、タヌキや鹿まで同じように干からびて死んでいる。
山鳩やヒヨドリさえも…

うーん。これはこれで面白いかもしれないなー
思いながら愛犬の散歩を続けた。
セミの突然変異なんてねー、そんなことあるわけがないのは承知の上だ。
突然変異のクマゼミは、その本来なら樹液を吸うためのストロー状の口から動物に毒液を注入して肉体を溶かし、液状になったそれを栄養にする。
そして冬を越して何年も生きる事が出来るように進化したという設定だ。
科学的な根拠らしいもので肉付けして短編にするのは無理としても、ショートショートのアイデアとしてストックしておくのには悪くない。

いつもの散歩の折り返し地点。
道の駅の裏側で自販機で買った缶コーヒーを飲みながら海を眺め、携帯のメールチェックをする。
そんないつものパターンをこなしての帰り道。
しばらく歩いたところで、スニーカーの中に小石が入っているのが気になった。
脱いで逆さまにして小石を出すと、靴をもう一度履くために道路の上に落とした。
片足で立っているので、そのままかがんで路上に置こうとすると体のバランスを崩しかねない。
それで立ったまま落としたのだ。
スニーカーは跳ねて、一瞬逆さまになるかと思ったが、コトンとまともにき起上がった。
ふと、昔よくやったお天気占いの記憶がよみがえった。

「あーした天気になーれ」と言いながら履いている靴を遠くへ飛ばす。
上を向いたら晴れ、裏を向いたら雨、横になると曇りと言う事だったと思う。
僕が子供だった頃に履いていたのは、いわゆる運動靴だ。
それは紐で縛るわけでもないので、すぐに脱ぐ事が出来た。
最近の子供たちは小学校低学年の頃からでも、殆どスニーカーを履いているように思う。
だとするとあまりこんなお天気占いなんかしないのかも知れない。
などと思いながら、スニーカーを手で拾いポーンと放り投げた。
「晴れ」だった。
もう一度やってもやはり「晴れ」。
十数回繰り返し、たまに「曇り」になるものの、「雨」には一度もならなかった。
スニーカーという靴の形状が逆さまになりにくいのだ。

そこでふと突拍子もない事を想像した。
天気占いと言えば、昔からの履物では下駄がぴったりくる。
これで天気占いをすれば晴れも雨も曇りもそれなりに出るだろう。
もしも、履物による天気占いが実際の天候に影響を与えているという事だったらどうだろう?
昔なら、全国で色んな人が、特に子供たちが下駄でお天気占いをしたに違いない。
その結果はそれぞれ違っただろうが、そのお天気占いの結果の多い少ないが実際の天候を左右しているとしたら。
いやいや、笑いごとではない。
最近の何十年間の世界の気候の異常さを考えてみるといい。
世界のあらゆる国が、降水量の減少で慢性的な水不足に悩んでいる現状を見て見るといい。
日本は海水の淡水化装置の普及で何とかしのいではいるが、発展途上国の惨状はいやというほど伝えられている。
これは天気占いをする子供たちが、極端に「雨」になりにくいスニーカーを履く事が多くなったからだとしたら?
たぶんそうなのだ。
いや絶対にそうに違いないのだ。

犬の散歩から家に帰って来る頃には、それは確信に変わっていた。

世界中の水不足を解消するにはこれしかないと思い、僕は下駄を買いに出かけた。
車でいろんな履物屋さんを回り、出来るだけたくさんの下駄をかき集めた。

そしてあるよく晴れた日、何十足もの下駄をつぎつぎに足に履き、「あーした雨になーれ」と言いながら飛ばして行った。
カラーンと音を立てて下駄は裏返しになった。
次のも裏返しだ。
「あーした雨になーれ」カラーン、「雨」
カラーン「雨」
一つとして表にはならなかった。

ひょっとして僕はやりすぎてしまったんだろうか?
今、この時代にはお天気占いをする子供が極端に少なくなっているはずだ。
と言う事は数少ないお天気占いでも大きな影響を与えるのかもしれない。
テレビの明日の天気予報は久々の雨を伝えている。

僕はその夜、眠りの中で雨音を聞いた。
長く激しくいつまでも降りやまない雨だ。
やがて遠くサイレンの音。
それが夢なのか現実なのか判らないまま、しばらく夢うつつの中にいた。




おわり




というわけで、お話を考えながら散歩をするというエッセイかな?と思わせておいて実はフィクションだったという作品です。
いつも実際にこんな風にいろいろ考えながら散歩をしていますよ。
ところで、「靴の中の石っころ」と言うのはどんな小さなきっかけでもお話を思いつく鍵になりますよと言う事の象徴なわけです。


ランキング参加してます。
クリックお願い↓
にほんブログ村 小説ブログ 掌編小説へ
にほんブログ村

人気ブログランキングへ
[PR]
by marinegumi | 2011-09-07 17:25 | 短編小説(新作) | Comments(8)