まりん組・図書係 marinegumi.exblog.jp

海野久実が掌編小説やら短編小説を書いています。タイトルの後に原稿用紙換算の(枚数)があるのが小説です。


by marinegumi
プロフィールを見る
画像一覧

<   2012年 06月 ( 10 )   > この月の画像一覧

a0152009_19465918.jpg

海の底にあるものは
何億匹ものおさかなの
ひっそりついたため息や
いろんな思いの残りかす
それがどんどん降りつもり
遠くの船にあこがれる


いえいえあれはわたくしの
海に捨てた悲しみが
悲しいままで忘れられ
醜いままで忘れられ
いつしか不思議なひかり持ち
姿を変えた深海魚


いえいえあれはあの人の
叶わぬ夢のかけらたち
孤独な思いのメモ用紙
それぞれビンに詰められて
それぞれラベルが付けられて
ひっそりゆらゆら並んでる





またまた「詩」です。
これは古いホームページの掲示板に書いた記憶があったんですが、その掲示板が行方不明(笑)
今回思い出しながら書きなおしました。

今、小説のアイデアがいつになくたくさんあるのですが、「防音室」みたいにストレートに書けるアイデアではなくて結構いろいろ考えて、時間をかけないと作品にならないような物が多いんです。
それで「詩」でお茶を濁してる感じですね。
そろそろ7月の声を聞くと仕事が忙しくなって、更新回数が激減すると思います。
去年は7月にアップした小説は1本だけ。8月も1本だけでした。
今年もそんな感じになるかもしれませんが、よろしく。

ランキング参加してます。
クリックであなたに幸運が(笑)
 
   ↓
にほんブログ村 小説ブログ 掌編小説へ
にほんブログ村

人気ブログランキングへ
[PR]
by marinegumi | 2012-06-28 19:47 | | Comments(12)

音  [ 詩 ]

a0152009_22144826.jpg

ぼくの耳には 聞こえてる
すぐそばで ずっと遠くで
たくさんの あの音が

ぼくの心に 響いてくる
ちいさな声 巨大な叫び
あまりにもたくさんの 悲鳴たち

あれはきっと 非常ベル
ぼくの足元でも 遠い遠い国からも
たくさんの非常ベルが 鳴り響いて来る
今のうちに何かをしないとだめだよと
今のうちなら 間に合うんだよと
数知れないベルが 鳴り響いている

非常ベルは そのうちに
ひとつずつ 鳴りやんで行く

人知れず ひっそりと
鳴りやむ時には 気が付かない

鳴りやんだから もういいと
そう言う訳では 決してない
鳴りやんだから 終わったと
そう言う訳では 決してない

鳴りやんだ時に ひとつの終りが
気づかぬうちに しのびよる
鳴りやんだ時に また終末に
少しだけだが 近くなる
少しだけだが 確実に

鳴り終わる 鳴り終わる
長い時間をかけて 非常ベルは
ひとつづつ 鳴り終わって行く






この詩はTome館長さんの「非常ベル」に触発されて書いたコメントが元になっています。
Tome館長さんの作品には、いつもパクリ…いえいえ、インスパイアされています。
ありがとうございます。

ランキング参加してます。
クリックであなたに幸運が(笑)

    ↓
にほんブログ村 小説ブログ 掌編小説へ
にほんブログ村

人気ブログランキングへ
[PR]
by marinegumi | 2012-06-26 22:11 | | Comments(13)

防音室 (8枚)

a0152009_832322.jpg

「さあ、あれですよ。あの白い外観の家」
不動産会社の男は片手ハンドルで前方を指差した。
車は大型車が三台は停められそうなガレージの真ん中に入って止まった。
「庭も広いわね。ガレージがこんなに広いから庭はもっと狭いかと思ったわ」
車から降りながら妻はうれしそうに言った。
「中を見るのが楽しみだな」
そう言いながら私が不動産会社の男を振り返ると、かばんの中をごそごそとかき回していた。
「どうしたんです?」
「いやー、ちょっと、この家の書類と間違って違う家のを持って来てしまったみたいで」
彼は手を合わせ、鼻の前に持って来ながら言った。
「申し訳ないです。すぐ取って来ますから、庭の方でも先にご覧になっていてください」
車は元来た道を帰って行った。

車が見えなくなると、私たちは顔を見合わせた。二人して何も言わずにうなずき、門扉を開けて庭へ入ってみた。少し荒れてはいるが、元々はきれいな庭のようだった。
「ガーデニングどころか、家庭菜園でも出来そうね」
妻がそう言った時、彼女の後ろに一人の男の姿が見えた。目が合った私が会釈をするのを見て、気がついた妻は後ろを振り返った。
「こんにちは」と男が言った。私より少し年上、70歳前後だろうかと見当をつけた。
「こんにちは。お隣の方ですか?」
そう私が聞くと男は笑顔になった。
「いえいえ、そうではなくて、この家の者…と言うか、この家の元の持ち主と言うべきですな」
「あー、なるほど」
「今日、この家を見に来られると聞いて、どんな方が来られるのか、興味しんしんでしてね」
そう言って男は笑った。
「いやいや、本当はたまたま通りかかっただけですがね。で、坂口君はどうしました?」
坂口と言うのはあの不動産会社の男だと思い出した。
「書類を忘れて、取りに帰られましたの」妻が言った。
「あーなるほど。それでは家の中に入るには行かないわけだ」
「そうなんです」
「会社まで帰って引き返して来るとなると、30分は見とかないとな。どうです?わたしはまだこの家の鍵を持っていますから中をご覧になりますか?」
そう言うと男はさっさと玄関の方へ歩き出してしまった。
「おい、不動産屋は鍵は全部新しい物に取り換えたと言ってたよな」
私は妻に向かって言った。
「そうなんですか?私はよく聞いてませんでしたから」
「たぶん古い鍵は合わないはずだが」
二人が追いついた時には、男はもう玄関の扉に鍵を差し込んでいた。そしてそれは簡単に開いたのだ。
妻は私の顔を見て、くすっと笑った。
「取り換えますから…だったかな?」と、私は小声で言った。

玄関の中は吹き抜けになっていて明るい光が差し込んでいる。
不動産会社のネームの入ったスリッパが揃えて置いてあるのをそれぞれ履いて家に上がった。
男のかつて知ったる元わが家の説明を聞きながら一通り見て回った。
「あのう。私たちの子供が音大に入って本格的にピアノを弾いていますので、防音室が必要なんです。ここにはそれがあると聞いたもので」
「はいはい。そうだったんですか?実は私の妻はピアノ教師をやっていましたんですよ。防音室にはグランドピアノが1台と、アップライトが2台置いてありました」
防音室に案内された。窓のない広い部屋だが、その分豪華な明るい照明器具が取り付けられていた。四方の壁面が細かく微妙なカーブを描いていた。
「この部屋の防音工事だけで300万かかりましたか」
男は壁を手のひらでたたきながら言った。
「実はですね。この家はトイレも防音壁になっているんですよ」
男は不思議な笑顔を浮かべた。

部屋を出る男に着いて行くとトイレに案内された。
「ほら、このドアの厚さをごらんなさい」
「どうしてトイレまで防音なんですの?」と妻が聞いた。
「だって、あれじゃないですか?おなかの調子が悪い時なんか、音が漏れてやしないかと気になりません?女性なんかは用を足すときに水を流しながらとか…」
「それはそうですね」と、妻はうなづいた。
「やっぱり女性は共感してくださいますね。これを考えたのは私の妻だったんですよ」
男は私たちから目をそらし、少し上の方を見た。
「でもね。これは失敗でした」
そう言いながら、男は一人でトイレに入ってドアを閉めた。
しばらく何事も起きないので不思議に思い、私たちは目を見合わせた。
その時、ダイニングの方から声が聞こえた。
「どうです?今、私が中で大声を出したのが聞こえましたか?」
ダイニングに行ってみるとインターホンから声がしていた。
「壁をドンドンたたいたりしたんですが、聞こえなかったでしょ?」
「聞こえませんでしたよ」と、私は答えた。
インターホンの声は続けた。
「ある日、私はトイレに入っていたのですが、急に気分が悪くなりましてね。倒れてしまったんです。くも膜下出血でした。気が遠くなりながら大声をあげたり、壁を手当たり次第叩いたりしました。インターホンにまで手が届かなかったんです」
「それは大変でしたね。でも今は完全に回復されているように見えますが?」
インターホンからの返事は聞こえなかった。
「もしもし?」
インターホンのボタンを何度か押してみた。
ダイニングルームを出てトイレの前にやって来た。
ドアを叩いても鈍い振動があるだけで大きな音はしない。
ドアを開く。
しかし、そこには誰もいなかったのだ。
「外へ出たのかしら?」妻が少し震える声でそう言った。
玄関から外へ出てみたが、あの男の姿は見えなかった。
庭を歩いて家の周りを一周して元の場所に帰って来た時に不動産会社の車がちょうどガレージに入るのが見えた。
「お待たせしました」車から降りて来た、満面の愛想笑いの坂口は両手に缶コーヒーを持っていた。
私は聞いた。
「この家の元の持ち主の方は今どうしています?」
坂口はくるりとまじめな顔になって、小さな声で言った。
「最近、亡くなられたようですね。奥様はまだいらっしゃいますが老人ホームです」
私は玄関の扉の取っ手に手をかけた。
それにはしっかりと鍵がかかっていた。



おわり



昨日の夜、思いついて、即書きあげました。
1時間ほどで出来たかな。
それこそトイレに入っている時に思いついて(笑)すぐに書いて、アップしようとすると、まだ日付が変わっていませんでした。
同じ日に2本アップと言うのもなんですので、今朝アップしています。


りんさんのコメントを参考にして、一部修正しました。
修正前はこんな感じです。

    ↓

「あーなるほど。それでは家の中に入るには行かないわけだ」
「そうなんです」
「会社まで帰って引き返して来るとなると、30分は見とかないとな。どうです?わたしはまだこの家の鍵を持っていますから中をご覧になりますか?」
「そんな事をして大丈夫ですか?」と、私は少しためらった。
「あなた、お願いしましょうよ」
今日は朝から浮き浮きしていた妻がそう言った。
「そうだな。お願い出来ますか?」
私がそう言い終わらないうちに男は玄関まで歩き、鍵を差し込んでいた。


ランキング参加してます。
クリックであなたに幸運が(笑)
    ↓
にほんブログ村 小説ブログ 掌編小説へ
にほんブログ村

人気ブログランキングへ
[PR]
by marinegumi | 2012-06-19 08:05 | 掌編小説(新作) | Comments(18)

鉄人14号 (7枚)

a0152009_0433348.jpg

其の壱

ビル街に鉄人14号が現れた。
ガオー!
鉄人の叫び声が響き渡る。
操縦機を持つ昭太郎はまだまだ練習中であった。
「鉄人!そうじゃない。こっち側に…」
グワシャ!
鉄人14号の腕が、住友生命の看板をビルの壁からたたき落とした。
「何やってるんだ。そうじゃないだろう!」
声を必死でかけるけれど、操縦機の操作がひどく適当なのだ。
昭太郎は汗だくになっていた。
「むつかしいよー」
昭太郎が鉄人を十分に見ずに、操縦機に気を取られている間にもビル街に不気味な破壊音が響き渡った。
ベキベキ!バコン!バリバリバリ…
鉄人14号は道路を歩きながら自動車を踏みつぶした。
人々は逃げまどう。
「鉄人!もう大人しく座ってろ!」
鉄人が昭太郎の操縦のままにへっぴり腰になり、座ろうとしたその時。
ゴン!
鉄人のお尻がNTTビルに当たりビルは大きく傾いた。
昭太郎は一瞬真っ青になり、次の瞬間には走りだしていた。
昭太郎は走りながらそばで見守っていた鉄人14号の開発者の色島博士に操縦機を手渡した。
「はい、操縦機」
「え?昭太郎君!これ…」
操縦機を持っている色島博士に向かって人々が押し寄せた。
「あいつだ。ここにいるぞ!」
「あいつが操縦機を持っている!」
「たたき殺せ!」
色島博士は青ざめた。



其の弐

色島重工の工場では一つのプロジェクトが進行していた。
クレーンによって吊り上げられた巨大な部品が、今まさに鉄人14号の頭部に固定されようとしていたのだ。
その作業の進み具合を昭太郎と色島博士と署長さんの3人が見守っていた。
「オーライ、オーライ」
作業員が声を上げ、慎重にクレーンに指示を出している。
たっぷり30分をかけて、ついにその部品は鉄人の頭部に収まった。
次にそれを固定するための作業が始まる。
作業台に上がっている多くの作業員たちが一斉に溶接を始め、あちこちから火花が散った。
その火花によって出来る光と陰で、鉄人の顔はクルクルと表情が変わった。
「いよいよぼくが発案の、このプロジェクトも大詰めですね」
昭太郎は誇らしげに言った。
「うむ」
色島博士は相槌を打つ。
その時、工場の外を女子高生の二人組が通りかかり、中をのぞいた。
「なに?あれ?超うける~」
鉄人14号の頭部に固定されようとしている、それは白い大きな鋼鉄製のコック帽に似ていた。
「きっと料理の鉄人っていうダジャレなんでしょうね」
「馬鹿みたい」
それを聞いていた昭太郎は真っ赤になって工場の外に駈け出した。
「昭太郎君!どうした?」
色島博士が声をかけるのも聞こえないようであった。
「おーい昭太郎くーん」
署長さんも大声を上げる。
昭太郎は涙を流しながら夕陽に向かって走った。
「このプロジェク中止ね」
色島博士がそう言うと、作業員全員と鉄人14号がずっこける。



其の参

夕焼け空の街角。
昭太郎は、とあるビルの屋上のふちに腰掛けて沈んで行く夕陽を見ていた。
そのビルの向こうにはシルエットになった鉄人14号が立っている。
昭太郎は鉄人の手のひらに自分を乗せて、このビルの屋上に上がって来たのだ。
不法侵入である。
昭太郎はずっと夕陽を見つめている。
「どうしたんだ昭太郎君?」
そこへやって来たのは制服制帽で立派なひげを生やした署長さんだった。
「なんか、落ち込んでるみたいだね」
署長さんは昭太郎の隣に同じように座る。
「昭太郎君…」
と声をかけると、署長さんは昭太郎に顔を近づけた。
「あ…、やめてください」
「何を言ってるんだ昭太郎君。いつも匂いをかがせてくれたじゃないか?」
昭太郎は立ち上がって逃げようとした。
署長さんは昭太郎の腕を掴んで引き寄せる。
「ちょっとだけだから」
「いやだ~!匂いをかがないで~」
昭太郎は無意識のうちに鉄人の操縦機を操作していた。
ゴ~ン!
鉄人14号のゲンコツが署長さんの頭をなぐった。
昭太郎は鉄人の腕にかかえられて夕暮の空に飛び立った。
ビルの屋上に残された大きなたんこぶを作った署長さんの前に色島博士が現れた。
「大丈夫ですか?どうも女子高生の二人連れが『ショタ』と言う言葉の元が、昭太郎君の名前から来ていると言う事を本人に教えたらしいですね」
「あの二人か~!」



つづく



文章による漫画第2弾です。
これは基本的に1話が1ページで色んな主人公のシリーズがとっかえひっかえ出て来るんですよね。
ラインナップは「魔法少女マカロン」「鉄人14号」「怪盗マフィン」「幼稚園児まこと君」と、そんな感じです。
実際に描いたのは「怪盗マフィン」を2ページだけで、あとはネームだけでした。
今回はそのネームを元に文章にしているわけですね。

ランキング参加してます。
クリックであなたに幸運が(笑)
 
   ↓
にほんブログ村 小説ブログ 掌編小説へ
にほんブログ村

人気ブログランキングへ
[PR]
by marinegumi | 2012-06-18 00:45 | 掌編小説(新作) | Comments(4)
追悼詩「6月は雨降りしきる国」は、ブラッドベリファンではない人にはちょっとわかりにくいところがあると思います。
そこで少々解説を。

まず、「6月は雨降りしきる国」は言わずと知れた短編集「10月はたそがれの国」のパロディーになっていますが、作品に、「優しく雨ぞ降りしきる」(火星年代記 所収)や「雨降りしきる日」(メランコリイの妙薬 所収)などがあります。それらを踏まえているわけですね。

この詩自体のテーマとしては「ロケットマン」(刺青の男 所収)を踏まえています。
この「ロケットマン」と言うお話は、宇宙へ出て行った父親が、もしも金星で亡くなったら金星を見るのも嫌になるでしょう、火星で亡くなったら火星が出ている夜には部屋に鍵をかけるでしょうと母親が言うんですね。
ほかの星で亡くなっても同じこと、それらの星が出ている夜には外へは出ないと言う。
そして父親が亡くなったという知らせが来る。
彼が亡くなったのはどこだったのか…と言うお話です。
「ロケットマン」をブラッドベリに見立てて、更に金星の太陽面通過の日にからませているんですね。

「雨降りしきる金星」と言う表現はブラッドベリが描く金星は雨がいつも降っているからです。
「長雨」(刺青の男 所収)や「すべての夏をこの一日に」(メランコリイの妙薬 所収)で描写されています。

「太陽の黄金の林檎」は、冷えて行く地球のために、太陽からそのエネルギーを持ち帰ろうとする宇宙船のお話「太陽の黄金の林檎」(太陽の黄金の林檎 所収)の宇宙船と、金星に降り立ったブラッドベリを重ねているわけです。
更に太陽に近づき過ぎて落ちたイカロスともイメージをだぶらせています。
それで「レイモンド・イカロス・ブラッドベリ」としたわけです。
レイ・ブラッドベリの本名は、「レイモンド・ダグラス・ブラッドベリ」ですからちゃんと韻をふんでいますね。
作品には「イカロス・モンゴルフィエ・ライト」(太陽の黄金の林檎 所収)と言うのがあります。




ところで、倉庫からブラッドベリの本を探し出してきました。
しばらくブラッドベリばかりを読んで見ようと思ったんですが、とりあえず全部枕元に並べておこうというわけですね。
うーん、どうもまだ倉庫の片隅に埋もれている本がありそうですね。
「恐竜物語」や「夜のスイッチ」がこの中にはありません。
確か買っているはずですが。

これは文庫本ですね。
ブラッドベリを初めて読んだのは創元文庫「10月はたそがれの国」でした。
ここにはデザイン違いで2冊ありますが、本当は3冊買っています。
僕のお勧めは「10月はたそがれの国」以外では「太陽の黄金の林檎」と「刺青の男」ですね。
わりとすんなりブラッドベリの世界に入って行ける作品集です。
a0152009_20583189.jpg


次は単行本の背表紙です。
a0152009_20583580.jpg



その中から、懐かしきハヤカワSFシリーズ。
かなり傷んできていますね。
この中の4冊は文庫本でも同じものを持っています。
a0152009_20591328.jpg


様々な単行本。
日本独自の編集の物があり、数少ない長編もあり、戯曲集と言うのもあります。
こうやって見ると、やはり心躍るのは文庫本と、ハヤカワSFシリーズです。
a0152009_210921.jpg


最後に、今読んでいる「塵よりよみがえり」です。
この作品は、いろんな短編集にばらばらに入っていた同じシリーズの作品を、一冊にまとめて、新たに書き下ろした作品を加えたものです。
本全体の構成としては「火星年代記」に似ていますね。
なぜこれだけを特に取り上げたのかと言うと、上の写真を撮る時に入れ忘れていたからです(笑)
a0152009_210562.jpg



ランキング参加してます。
    ↓
にほんブログ村 小説ブログ 掌編小説へ
にほんブログ村

人気ブログランキングへ
[PR]
by marinegumi | 2012-06-09 22:17 | | Comments(8)
a0152009_1261635.jpg

もしもあなたが亡くなる日が
満月の夜だとすれば
それから後の人生で
満月を見上げる事はないでしょう

もしもあなたが亡くなる日が
雲ひとつない快晴なら
晴れた日には閉じこもり
雨の物語を書くでしょう

もしもあなたが亡くなる日が
しんしん雪の降る日なら
冬の来るのがうとましく
雪の降る日を憎むでしょう

6月6日
金星の太陽面通過の日
その日にあなたが逝くなんて
雨降りしきるあの金星の上
きっとあなたはいらしたのです
太陽の黄金の林檎を手に入れて
通り過ぎて行ったのです

105年後のその日まで
あなたを失くした悲しみに
さいなまれなくても済むように
きっとこの日を選んだのでしょう
そんなにもあなたは優しい人でした
レイモンド・イカロス・ブラッドベリ

a0152009_219642.jpg

ブラッドベリが亡くなった。
心にぽっかり空洞が出来た様な気がします。
ちょうど昨日、彼の未読の本「塵よりよみがえり」を、倉庫から出して来て読みかけた所でした。
なんか予感でもあったのでしょうか。
もっとも多感な少年期に彼の小説に出会った事はとても幸運でした。
僕の半分はブラッドベリで出来ている気がします。
あと半分は手塚治虫でしょうか?
高井信さんのブログでは亡くなったのは6月6日と書かれていたので、こんな詩を書いてみましたが、それは現地時間で、日本時間では6月5日に亡くなられたようですね。
まあ、5日に亡くなって、6日に金星に降り立ち、そして通り過ぎて行かれたという事なのでしょう。




ランキング参加しています。
    ↓
にほんブログ村 小説ブログ 掌編小説へ
にほんブログ村

人気ブログランキングへ
[PR]
by marinegumi | 2012-06-08 01:29 | | Comments(8)
画像は「魔法少女まーりゃん」のフィギュアですa0152009_23491294.jpg

「あ、そうだ。呪文の練習の時間だわ」
マカロンはショップモールで買い物の最中にそう言い出した。
彼女はまだ新米の魔法使いなのだ。
ボールペンぐらいのステッキをポケットから取りだすと、それはニョ~ンと1.5メートルほどに伸びた。
みゆきはうろたえた。
「こんな人ごみの中で何するの?ただでさえその服装で目立ってるのにさ」
みゆきの言葉をほぼ無視してマカロンは呪文を唱え始めた。
「テリメリ、ムルマリ、チピクレ、ホミョロ、カナペカル~」
マカロンは魔法のステッキを差し上げて大きく振りながらそんな呪文を口にした。
ステッキがブティックの店先の「SALE」と書いた紙に当たってそれが破れた。
周りには人だかりが出来始めた。
「あのさー」
「スルネル、ケレミノ…」
「終わってねーのかよ、呪文」
みゆきがずっこけた時に建物の床が小刻みに振動を始めた。
ゴゴゴゴゴという低い音と共に。
「ツレニコ、スメニロ、ツテロノミ~」
それでやっと呪文は終わった。
「マカロン。それって何の呪文なの?」
「うん。ただの練習だから」
「じゃなくて、何の呪文の練習かって聞いてるの!」
地響きはだんだん大きくなって来る。
「えーと。何だっけか?」
「何だったけって、あんた覚えてないの?」
「覚えてないんじゃなくてさ、忘れちゃった。うふっ」
「うふっ、じゃないでしょ~!!」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ

建物が激しく振動を始め、店の品物が棚から落ち始めた。
二人を物珍しそうに見ていた買い物客たちはあわてて逃げまどう。
「は…、早く思い出した方がいいわよ」
みゆきはマカロンの両手を握って顔を見ながら言った。
「えーと、えーと」


バリバリバリバリ


「バリバリって言ってるしー!」




ドカーン!




おわり




これは昔の原稿類を整理している時に見つけた、漫画のアイデアノートから文字にしたものです。
元は、絵でラフに描いた、いわゆる「ネーム」というものですね。
1ページで終わる漫画のシリーズ物でした。
こういう漫画として描こうと思って考えていて、そのまま眠っているアイデアがけっこうたくさんあるんですよね。
漫画として描くのが一番いいのでしょうけど、いまやもう文章で書く方が楽なんです。

ランキング参加してます。
クリックであなたに幸運が(笑)

    ↓
にほんブログ村 小説ブログ 掌編小説へ
にほんブログ村

人気ブログランキングへ
[PR]
by marinegumi | 2012-06-06 18:30 | 掌編小説(新作) | Comments(2)

想 い  [ 詩 ]

a0152009_1412287.jpg

あなたと別れて気が付きました
わたしたちはお互いに
お互いの事を知りすぎたのだと
恋のはじめはあんなにも
あなたの事が知りたかったはずなのに

あなたの事をなにもかも
わたしの事をなにもかも
知らない方がよかったと
そう言う事なのかもしれません

それではわたしはこれからは
知らない人を愛しましょう
なるべく遠くの町に住む
優しい人に恋しましょう

世界の果てで空を見て
雨に平気で打たれながら
草笛を吹くあの人に
この恋心を届けましょう

地球をはるかに何百光年
離れたところに浮かんでる
あるかどうかわからないその星の
いるかどうかわからないその人に
わたしの想いを届けましょう





この詩らしきものはTome館長さんの「恋文」のコメント欄で自然発生しました。

ランキング参加してます。
クリックであなたに幸運が(笑)

    ↓
にほんブログ村 小説ブログ 掌編小説へ
にほんブログ村

人気ブログランキングへ
[PR]
by marinegumi | 2012-06-03 14:14 | | Comments(10)

帰り道 (6枚)

a0152009_19541247.jpg

僕はひどく疲れていた。
電車で大阪まで出て、大きな書店をいくつも回って本を漁った。
さらに古書店をいくつも見て回り、いつになく長い距離を歩いたのだ。
帰りの電車に乗る頃には気分が悪くなるほど疲れていたが、電車は混んでいて座る事が出来なかった。
お年寄りに席を譲っている人を見かけると「こっちが譲ってほしいんだよ!」と心の中で毒づいた。
それほど疲れてしまっていたのだ。

夜遅くに僕の降りる駅に電車が到着し、それからも長い階段にうんざりしながら、やっとの思いで自転車預かり所までたどり着いた。
そしてなんとか自転車を漕ぎ出した時にはやっとわずかにホッとしていた。
あと少しで我が家に着く。
そうしたらすぐに横になれるんだと思うと、疲れていながらもペダルを漕ぐ足に力が入った。

時々車が行き交うだけの暗い夜道を一人走って行く。
「最後の気力を振り絞って」と言う陳腐な表現が実にぴったり来ていた。
その事に、悲壮感さえ感じていた。
いくつかのゆるい上り坂にさえ悪態をつきながら、やっと我が家まで平坦な道を残すだけになった。

しばらく走ると、前の方に一台の自転車が見えて来た。
その自転車は実にゆっくり走っているので、みるみる追いつきそうになった。
乗っているのは後ろ姿で女子高生だと言うのがわかった。
このまま近づいてしまうとまずいかなと考えた。
こんなに夜遅く、あまり車も通らない道で後ろからどんどん近寄って行くと不審者と間違われるのじゃないかと。
しかしその女子高生は、まどろっこしいほどゆっくりとペダルを漕いでいるのだ。
思いっきりスピードを出して一気に追い抜くと言うほどには体力が残っていない。
かといって距離を充分に開けたまま同じスピードで走るにはあまりに体は疲れていた。
一刻も早く家について横にならなければ今にも倒れそうな気がしていたのだ。
それでどんどん距離が縮まってしまう。
たぶん前を行く彼女も後ろから自転車が追い上げて来るのに気が付いているのだろうけれど、後ろを振り返る事はしない。
それはひょっとして、彼女が怖くて振り返る事が出来ないと言う事かもしれないと想像した。
しかしスピードを落とす事が出来なかった。

何とか追いついてしまわないうちに、我が家へ入る横道が見えてきた。
あの道を左に入ればすぐそこが我が家だった。

その時、なんと言う事か、前を行く彼女はその道に入ってしまったのだ。
一瞬の間にいろんな考えが頭をよぎった。
この小道の奥の近所には女子高生の子供がいる家はなかったはずだ。
ひょっとして彼女は僕をやり過ごすためにわざとそこで曲がったのかもしれない。
だとすると、僕がこのまままっすぐ行ってしまうのを期待しているのだろう。
そうすると僕はここで曲がらずに通り過ぎてしまった方がいいのかもしれない。
そして次の道で左に入ってぐるっと回って我が家まで帰るか?
しかしそれをするにはあまりに疲れていた。
今の僕にはあまりに遠い距離なのだ。
そして、大回りをした場合、別の可能性が出て来る。
回り道をして帰って来た僕と、彼女が鉢合わせをしてしまう事だ。
彼女が道を引き返せばいいが、そのまま通り過ぎて大周りをして元の道に帰る事を考えたとしたら鉢合わせの可能性が大いにある。
その時は彼女は完全に自分が狙われていると思うだろう。

それだけの事が一瞬に頭をよぎり、僕はそのまま僕の家に入る小道を選んだ。
そして見たものは、僕の家の前で自転車を降り、恐怖を浮かべた目で僕の方を見ている彼女だった。
恐らく僕が同じ道に入ってきたら大声を出して人を呼ぼうと身構えているのだろう。
「そこをのけよ!そこが僕の家なんだ!」と、心の中で彼女を罵っていた。
でも実際はそんな元気は残っていないのだ。
「ここが僕の家なんです」と言い出すタイミングを計りながら近づいて行った。

その時、彼女が大きな悲鳴を上げた。

それからの事はめまぐるしく、疲れが限界に来ていた事もあり、夢の中の出来事のようだった。
どこからか現れた男に僕は腕を掴まれ、道に引き倒された。
「ここが僕の家なんです」と何度も繰り返したが、誰もそれを聞いてくれなかった。
パトカーのサイレンが響き、僕は疲れと諦めで、そのまま気が遠くなって行った。

さっき僕を地面に引き倒した男。
あの人はなぜ僕と同じ顔をしていたのだろう?と思いながら。



おわり



うーん、なんか書いてしまうとアップせずにおられない性分なんでしょうか?(笑)
これで3日連続ですね。

この作品は、Tome館長さんの作品「引き裂く」を読んだ時に思い出した、僕が実際に経験した出来事がベースになっています。
それは「引き裂く」のコメント欄に書いたのですがそれを元にショートショートにしてみました。
でもまあ、結末を除くとほぼ実話なんですけどね。

自転車から降りて僕の方を今にも悲鳴をあげそうな顔で見ている彼女の前をそのまま通り過ぎて家に入っておしまいでした。
今から思えば家に入りながら声をかければよかったかなと思いますが。
「あ、僕の家はここなんですよね。ひょっとして痴漢か何かと間違えてた?僕の事。いやいや今日はめちゃくちゃ疲れてねー、少しでも早く家に着いて寝ころびたかったんですよね。だからついつい追いついてしまって。ごめんごめん」
てな感じですかねー(「引き裂く」のコメント欄から引用)

そして、そう言えばこう言う事があったと言うのを誰にも話していないのを思い出しました。
「引き裂く」のコメント欄に書くまではね。


ランキング参加してます。
クリックであなたに幸運が(笑)
 
   ↓
にほんブログ村 小説ブログ 掌編小説へ
にほんブログ村

人気ブログランキングへ
[PR]
by marinegumi | 2012-06-02 19:43 | 掌編小説(新作) | Comments(4)
a0152009_20523876.jpg

テラフォーミングされた火星は今や農場惑星だった。
農作物はもとより大量の家畜も放牧され、地球の食糧庫と呼ばれるまでになっていた。
栽培、飼育、収穫のほとんどが機械化されていたので、農業に従事する火星村の住民は数が少なく、せいぜい数万人と言うところだ。
統一された地球政府によって管理されたそこに住む人々は、一昔前の地球に似た、のどかな田園生活を送っていた。

火星村はまだまだ娯楽が少なく、生産地であるために食料の価格は安く、多くの人が美食に走った。
そこで問題になったのが住人たちの肥満である。
半数以上の住人が肥満による様々な病気を抱えているのが現状だった。
そこで、自分も病気持ちである火星村の村長は、住民のために地球からダイエット食を取り寄せる事にした。
カロリーが全くなく、脂肪燃焼効果があり、しかも非常においしいと言う高機能のダイエット食は地球の専門工場でないと生産が出来なかったのだ。

発注をしてから3ヶ月後。
ダイエット食だけを乗せた無人宇宙貨物船が到着した。
ところが、係員が荷物を検品していると、その積み荷の中に、乱暴に開封された箱がいくつも見つかったのだ。
係員が不思議に思いながら荷役ロボットが荷物を運び出すのを見ているうちに、一人の男の死体が積み荷の陰から現れた。
それはひどくやせ衰えた、しかし腹部だけは異常に膨らんだ死体だった。

「男の身元がわかりました、村長」
火星警察の刑事が言った。
「地球では何度も前科のある窃盗犯で、最近盗みに入った時に人を殺してしまって指名手配されていたらしいですね」
「それで、火星に密航を企てたのか」
火星と地球を往復する貨物宇宙船は毎日のように運航をしていたが、そのほとんどが無人の、食料運搬用だった。しかしダイエット食だけが載せられた事は今回が初めてだった。
「犯人は食料専用の貨物船だと思っていたので、手持ちの食料は一切持ってなかったんでしょう。栄養失調で死んでいた彼の胃の中はダイエット食品でパンパンでしたね」



おわり



この作品は矢菱虎犇さんのショートショート「スナック三昧」のアイデアを拝借して、違う方向から描いたものです。

ランキング参加してます。
クリックであなたに幸運が(笑)
    ↓
にほんブログ村 小説ブログ 掌編小説へ
にほんブログ村

人気ブログランキングへ
[PR]
by marinegumi | 2012-06-01 20:59 | 掌編小説(新作) | Comments(6)