まごまご魔女 (5枚)

a0152009_18455130.jpg


ある森の奥深くひとりの魔女が住んでいた。
魔女の名前はマルゴ。
自分が何歳かさえ思い出せないと言う。
それぐらい長生きしている魔女なのだ。

魔女はホウキをどこに置いたか判らなくなった。
確か、ドア近くの壁に立てかけたはずだ。
掃除には大事なホウキは使わない。
魔法で部屋に風を起こし、ゴミを外へ吹き出す。
その時にホウキが一緒に飛ばないように部屋の奥に片付けようと思ったのだ。
それが記憶の場所にない。
魔女は外へ出るドアを開けて見た。
なんとホウキは小屋の外壁に立てかけてあったのだ。
「どうも最近、自分のやる事が自分でもよくわからんわい」
そうぶつぶつ言いながら魔女はホウキを部屋の隅のホウキ掛けにかけると、掃除の魔法の呪文を唱えた。
「トルノキトレキラマゴマゴマネリ。部屋のゴミよ外へいでよ!」
気が付くと魔女は小屋の外にいた。
いや、外のように見えてはいるがそこは部屋の中だった。
ドアを開けると世界が小屋の中にあり、ドアの外側が小屋の内側になっていたのだ。
恐るべし魔法の力。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

魔女は「ヘンゼルとグレーテル」と言う童話を読んで自分もお菓子の家を作りたくなった。
それではさっそく魔法で……
と、そう簡単にはいかない。
一見お菓子に見える材料で作った家ならすぐに出来るけれど、本物のお菓子を作った事のない魔女には魔法でそれを出す事は出来なかった。
まず作り方をちゃんと知っていないと魔法と言えどお菓子を出せはしない。
夜中に街までホウキに乗って出かけて行き、図書館に忍び込み、お菓子作りの本を借りた。
宿直室で眠っている司書を眠ったまま歩かせ、ちゃんと貸出カードを作らせ、正規に借りたのだ。
まあ、あくる日に貸出時間を見て、その司書は目を丸くする事だろうが。
こっそり持ち出して、こっそり返しておけばいいのだが、魔女にはそんな律儀な所があった。

それから二週間ほど、本を頼りにいろんなお菓子を実際に作ってみた。
家の外壁にするには長方形のクッキー。
屋根のカワラにするにはサブレ。
煙突にはバウムクーヘン。
窓にはポッキーを組み合わせて、ゼリーでガラスを作る。
ドアーは板チョコで、ドアノブはドーナッツ。
外側をホイップクリームで飾り付けるのだ。
まず普通の大きさのお菓子を作ってみてちゃんとおいしく出来たなら、今度は魔法で大きなサイズを大量に作るのだ。
材料がそろえば、あとは簡単。
あっという間に魔法の力で組み立てられる。

魔女は自分でもほれぼれするお菓子の家に満足だった。
ひょっとしてヘンゼルとグレーテルのような子供がやって来ないだろうかと考えた。
森のはずれまで歩いて行き、膝を抱えて村の方を何時間も眺めていた。
「まあ、そんなに早く誰も来る訳ないわな」
そう言うと「よっこらしょ」と腰を上げ、お菓子の家まで帰って来た。
するとあんなにおいしそうに出来上がった色とりどりの家が真っ黒だった。
日が暮れているとはいえ、あまりにも黒かった。
魔女が近づいて見るとそれは蟻(アリ)の群れだった。
数えきれない蟻がびっしりとお菓子の家を覆っていたのだ。
「トメノぺトルキネマゴマゴマネリ。蟻よ、去れ!」
魔法で追い払った後には、ぼろぼろのお菓子の家。
間もなくそれは音をたてて崩れ落ちた。
「蟻除けのおまじないを忘れておったわ……」



おわり



ツイッター小説を元に書きました。
僕は、ツイッター小説とは言え、ちゃんと落ちのあるショートショートを心がけて書いています。
だからちょいと魔法で引き延ばせば、ほら出来上がり。

ランキング参加してます。
クリックであなたに幸運が(笑)
    ↓
にほんブログ村 小説ブログ 掌編小説へ
にほんブログ村

人気ブログランキングへ
[PR]
by marinegumi | 2013-01-30 18:47 | 掌編小説(新作) | Comments(7)

a0152009_1855477.jpg



初めて出来た彼女の誕生日だった。
何をプレゼントすればいいのか判らなかったので彼女を呼び出し、食事に行く前にアクセサリー店に入った。
高額な指輪なんかをねだられても困るなと少しドキドキしていた。
でも彼女は僕の懐具合も考えての事か、選んだのは一万円弱の金色のブレスレットだった。
もちろんイミテーションゴールドだ。
腕にそれをはめて顔の横に持ってきて、僕に見せた。
「どう?似合う?」
眩しい笑顔だった。
でも僕はその笑顔のむこうに違う人の笑顔を見ていた。
突然思い出してしまったのだ。

小学校の3年生だった。
教室で隣の席に座っていた君に誕生日にプレゼントをした。
金色の色紙(いろがみ)にコンパスで円を書き切り抜いて、カッターナイフで切りこみを入れてブレスレットを作ってあげたのだ。
それを腕にはめると僕に見せて微笑んだ。
「かわいい?」
そう言う君の笑顔に僕はわけのわからない気持ちを感じた。

その君が、それからわずか二週間後、交通事故で死んでしまった。
その時の自分の気持ちを長い間思い出す事が出来ないでいたのだ。
悲しかったのは悲しかったのだろうが、たぶんそんな感情を超えていたのかもしれない。
子供の頃の思い出として、自分の気持ちは封じ込めて大人になって来たんだ。

アクセサリー店でブレスレットのお金を払いながら、食事に行く店までの道を歩きながら、僕は思い出していた。
僕は紙のブレスレットをプレゼントした君の事が好きだったんだと。
今まで好きになった誰よりも君の事が好きだったんだと。
その思いが胸を締め付けた。
「ねえ、そんなに早く歩かないでよ」
後ろから声をかけられた。
振り向くと、見覚えはあるけれどよく知らない女性が微笑んでいた。




おわり




ツイッターでツイッター小説(ついのべ)を書いています。
4本以上、ほぼ毎日。
それに満足してしまい、ともすれば掌編小説を書くのを忘れてしまいます。
ちょっと意識して長い物も書かないといけないのかな。
ついのべで掌編に出来そうなものは、いつになくいっぱいありますからね。


ランキング参加してます。
クリックであなたに幸運が(笑)
    ↓
にほんブログ村 小説ブログ 掌編小説へ
にほんブログ村

人気ブログランキングへ
[PR]
by marinegumi | 2013-01-09 19:05 | 掌編小説(新作) | Comments(8)