まりん組・図書係 marinegumi.exblog.jp

海野久実が掌編小説やら短編小説を書いています。タイトルの後に原稿用紙換算の(枚数)があるのが小説です。


by marinegumi
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<   2013年 04月 ( 8 )   > この月の画像一覧

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「きょうさあ、頭が痛かったんだよね」
「なんだよ。風邪か?」
「そうかもしんない。今はお布団に入ってる」
「いい子いい子」
「でね、さっき外へ出て空を見上げてたんだ」
「なんでだよ。頭痛いんだろ?」
「だってさ。今夜はこと座流星群が一番流れる日なんだよ。だから見上げたんだよ。でもさ、10分間だけだよ」
「それで見えたのか?流星」
「見えなかった」
「それじゃあ、寝てた方がましじゃん。頭痛いの、ひどくなったらどうすんだよ」
「でもさあ、こと座流星群の日なんだよ?」
「流星が見えなかったら、見上げなかったのと一緒でしょ?」
「それって違うと思うよ。空を見上げずに見えなかったのと、10分でも見上げたけど見えなかった、と言うのは大きな違いだよ。全然違うわよ!」
「・・・・・・・」
「もしもし。聞いてるの?」
「ぷっ。へんなやつだなぁ。まあ、そんなとこが好きなのかもしれないけどさ」
「次の流星群の日には二人でどこかに見に行きたいね。今度がいつか知らないけどさ……」




おわり



4月22日「こと座流星群極大の日」に実際に頭が痛かったので書いたツイッター小説を元にしています。
「こえ部」にも投稿しましたが、まだ誰も朗読してくれてませんね。

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by marinegumi | 2013-04-25 00:33 | 掌編小説(新作) | Comments(4)

招待状(2枚)

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オオカミさんからブタさんに招待状が来ました。
過去にいろいろあったけれど仲直りしようと書いてあります。
ブタさんが行ってみるとテーブルにフルコースの準備が出来ていました。
前菜からスープ、赤ワインと次々に料理が出てメインディッシュです。
それがなんと、おいしそうなポークソテー。
ブタさんはそれを見るなり固まってしまいます。
「おや?どうしたんですか?この材料はちゃんとデパ地下で買ってきたものですよ」と、オオカミさんはおいしそうに食べながら言います。
ブタさんは青くなり、何も言わず、そのまま席を立って帰って来ました。
そして考えました。
仕返しに、オオカミの料理?
そんなものあるわけがない。
デパ地下に行って聞いてみたけれど、オオカミの肉は売っていません。
考えに考え、考え続けて三日後、ブタさんはオオカミさんに招待状を送りました。
オオカミさんがやって来ます。
「さあ、この間のお礼に、たんと召し上がってくださいね」
前菜、スープ、白ワイン、そしてメインディッシュ。
オオカミウオのムニエルです。
オオカミさんは「魚もなかなかいけるね」とうまそうに平らげました。

オオカミさんが帰った後も、ブタさんは小刻みに震えていましたとさ。



おわり



この作品はTome館長さんの作品「招待状」のコメント欄に書いたものに手を入れて出来上がった作品です。
Tome館長さんの作品とは似ても似つかないものになっていますね。
でもまあ、何らかのインスピレーションをいただいたようです。

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by marinegumi | 2013-04-15 16:28 | 掌編小説(新作) | Comments(6)
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わたしは日当たりのいい縁側の籐椅子に凭れて、手鏡を覗いていた。
わたしの顔は目が大きくてまつ毛が長い。
誰にでもかわいいと言われるのが素直にうれしい。
肌は自分の手で触ってもすべすべしてて気持ちよくて、しわの一つもない。
頬はふっくらと丸く、紅をさしたように明るい。
くちびるもイチゴのようにかわいくて、開くと歌が自然に出て来る。
手鏡をスカートから出たひざの上に置いて部屋の隅のベッドに寝ているおばあちゃんを見た。
ちょっと苦しそうな寝息をたてて、とてもよく寝ている。
そのまま眠っていなさいねとわたしは思う。
起きてしまうと大変なんだもの。
腰が痛いとかお腹が減ったとか、いろんなことを言う。
いくら腰をさすってあげても痛みは治らないし、ご飯を食べたことを忘れてすぐにお腹が減ったと言うんだもん。
最後にはお前は誰だ?って私に聞くんだからいやになっちゃう。
わたしは絶対あんな年寄りにはなりたくない。
いや、絶対にならないと思う。
手鏡を持ち上げ、もう一度覗き込むとさっきと少し違う顔がそこにある。
目は変わらずに大きいけれど、まつ毛も変わらず長いけれど、何となく瞳が濁って見える。
目の下や目じりにも、少しだけれどしわが見えている。
肌の色にも陰りが見えている。
これがシミというものになるのかしら。
ため息をついて胸の前に手鏡を持った手を置く。
部屋の奥を見ると仏壇がある。
おばあちゃんの写真が見える。
台所からは小気味のいい包丁の音が聞こえている。
そしてお味噌汁の匂い。
炊飯器が気持ちのいい蒸気の音を上げている。
高校生の娘が最近は料理をしてくれるようになった。
もう一度手鏡を持ち上げる。
その手鏡が急に重くなったような気がした。
手鏡の中の顔はずいぶん年老いて見えた。
あんなにキラキラして好奇心一杯だった私の目がどこかへ行ってしまった。
しわが増え、深くなり、顔色も悪い。
天気の良い日の陽当たりのいい縁側で、籐椅子に座っているというのに。
男の子が部屋に入ってきた。
今日は娘の家族が帰って来ている。
孫は私の方を珍しそうに見ていたと思うと何も言わずに出て行ってしまった。
「ゆうちゃんおいで」
私はそう言いながら手鏡に陽の光を受けて、向こうの暗い廊下に丸い光を投げた。
その光をクルクル動かしていると、年老いた飼い猫が入って来た。
猫は光を見つけ、少しだけじゃれるようなそぶりを見せてすぐに隅っこで丸くなった。。
お前も年をとったもんだなと思う。
手鏡を伏せてひざの上に置くと裏側の装飾に反射した光の模様が天井に映えた。
そのまま一瞬うとうととしたようだった。
目が覚めると、日差しで手が温かい。
手鏡を持ち上げる。
私のその手はなぜか少し震えている。
覗き込む。
一瞬、見えているのはおばあちゃんだと私は思った。
でもよく見るとやっぱり私なのだ。
孫だから似ていて当たり前ねと私は納得する。
お腹がすいたので娘の名前を呼んだ。
でも来てくれたのは見知らぬ女の人だ。
ご飯はまだかと聞くと「今さっき食べたでしょ」と言う。
そんなはずはない。
こんなにお腹はペコペコなんだから。
「娘を呼んでください」と言うと「娘さんは一週間に一度しか来られませんよ」と、私の顔も見ずに言う。
気が付くと私は部屋の隅のベッドに寝ているのだった。
「さ、おしめを取り換えましょうね」と、見知らぬ女の人は手鏡を取り上げようとする。
私はそれをしっかりと握り、渡さなかった。
もう一度それを覗けば、きっとあの日の、まだ幼くて可愛らしい私が見えるはずだと思った。
必ずそうなるはずだと思っていたけれど、私は胸の上にそれを伏せたまま持ち上げられなかった。
手鏡が重いからなのか、それを見る勇気がないのか、私にはわからなかった。




おわり




この作品はharuさんのショートショート「手鏡」をヒントに頂いて書いたものです。
haruさんのこの作品は僕なりにこうやれば面白くなるのになーと思って、その事をharuさんにお伝えしようと思いかけてやめたんですが、それは、haruさんのこの作品はこのままでいいんだと思い直したからなんです。
作品の書き方は人それぞれ。
素直に書いたものがベストですからね。
それで、思い切り自分なりに書いて、「手鏡」のコメント欄に書かせてもらって、それに手を入れた物がこれ「手鏡の中の顔」というわけです。
リンク先は朗読の動画ですが、文章もあります。
「年が明ける」です。
一年以上前に書かれたこの作品が朗読「手鏡」の原作と言う事になるんでしょうね。
で、この「年が明ける」の方のコメント欄にぼくがこう書いています。
>手鏡をもうちょっと重要な小道具にしたかったのですが。
すっかり忘れていたんですが、この朗読の方を聞いても同じような事を思ったんでしょうね。
手鏡を徹底的に小道具に使うと、こう言う感じになると言う事でしょうか。

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by marinegumi | 2013-04-13 15:34 | 掌編小説(新作) | Comments(5)
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ゆかの持っていたソフトクリームがコーンから落ちてしまった。
普段ならべそをかくと思うのだけれど、今日は違っていた。
周りのたくさんの乗り物に興奮しているのだろう。
少し食べただけのソフトクリームだったのに、それが地面に落ちたのを見て「あ…」と小さな声を上げただけだった。
わずかに残ったアイスとコーンをバリバリと食べてしまうと私の手を引いて言った。
「もっとのるぅ」
ゆかはまだ三歳だ。
こんな小さな遊園地でも十分満足している。
そのうちディズニーランドに連れて行ってやりたいとは思っている。
どんなに喜ぶだろう。
でも、東京は遠い。
行くならせめて二泊三日だろうなと思う。
そうそう何度も連れては行けない。
そうなると、もう少し大きくなってからだと思う。
乗れない乗り物もあるだろうし、成長しても記憶に残っている方がいいと思うのだ。
ゆかの目指していたのは観覧車だった。
「ゆかちゃん。これ乗るの二度目だよ」
「のるの!」

この遊園地では平日は入場料だけで乗り物の乗り放題のサービスをしている。
平日とは言え、春休み中なので人出はかなり多い。
観覧車が上がり出すとたくさんの親子連れの姿があちこちにいるのが見えた。
両親と来ている子もいれば、母親だけや祖父や祖母と一緒らしい子もいる。
私と同じように父親だけと言うのはあまりないようだ。
妻の京子は体が弱く、遠出の時は付いて来れない事が多い。。
そろそろ昼時なのか、バーガーショップの前には行列が出来はじめている。
ジェットコースターが轟音と共に風を切って走る。
メリーゴーランドの音楽が小さく聞こえる。
人々の声はだんだん遠くなり、その姿も小さくなって行く。
風があるようで、私たちの乗っているゴンドラは一番高いところで少し揺れた。
その揺れを敏感に感じて、ゆかが不安そうな目を私に向けた。
「だいじょうぶだよ」
と、微笑んで見せると安心して、ガラスにおでこを押しつけるようにして下を見た。
「こんどあれにのる!」
ゆかが指差したのは緩やかな起伏のコースを勝手に走る自動車だ。

乗り場まで来る。
レールに沿って走る自動車なので、子供だけでも乗れるらしい。
私はそろそろ疲れはじめていた。
疲れを知らない子供に付き合って、同じように乗り物を次から次へと梯子をしたのだ。
子供が一人で乗れるものは今からは一人で乗せるようにしようと思っていた。
ゆかを車に乗せ手見送って、乗り物のコースを背にしてベンチに座っていると、ゆかの声がした。
「パパ~!」
振り返ると自動車に乗って上機嫌で飾りだけのハンドルをあちこち操作している。
手を振ってやった。

朝早く家を出たのでずっと眠気が残っていた。
暖かい日差しが気持ちよく、ベンチでちょっとうとうとしてしまった。
夢うつつで園内放送を聞いていた。
「迷子のお知らせを申し上げます。やまぐちしんやくんと言う、三歳の男のお子様をお預かりしています。お心当たりのお客様は……」
(三歳と言うとゆかと一緒だな…)
そう考えている自分に気がつくと、みるみる眠気は去って行った。
目を覚ました瞬間にベンチから立ち上がっていた。
ゆかの顔を目の前に見つけ、ほっと気が緩む。
「終わったのか?今度は何に乗る?それともお腹がすいたか?」
「もういちどこれにのるの」とゆかは言う。
そして自分から乗り場へと駆けて行った。
初めて自分一人で乗ったので、それが気に入ってしまったらしい。
ベンチの後ろを通るゆかの車に手を振って見送った。
その時、また園内放送の声が聞こえた。
「よしだけいすけくんのおじい様。よしだけいすけくんのおじい様。けいすけくんがお客様広報センターでお待ちです。この放送を……」
(おいおい、じいさんが迷子かよ)
私は苦笑した。
けいすけと言うしっかりした男の子のイメージが浮かんだ。
しばらくしてまた園内放送だ。
「たかだあやかちゃんと言う四歳の女のお子様をお預かりしています。お父様お母様お聞きでしたら……」
(なんだ?やたらに迷子の放送が多いな)と思いながら聞いている。
園内の人の流れは午前中よりずっと少なくなっているような気がした。
それなのに迷子が多いというのはどういう事だろう。
おそらく遊園地内でもこの辺はあまり人気のアトラクションがないエリアなのかもしれない。
「迷子のお知らせです。赤い上着にジーパンを履いた二歳半ぐらいの女のお子様をお預かりしています。お心当たりの親御さんは、お客様広報センターまで……」
(おいおい、それにしても迷子、多すぎやしないか?)
何となくベンチから立ち上がっていた。
ほんのわずか、胸騒ぎのようなものを感じたのだ。
まだ昼を少し過ぎただけのはずなのだが、空の光が夕方っぽい色になっていた。
人影もめっきり減っている。
ゆかはまだ乗り物から降りてこないのだろうか?と、ふと不安になる。
一周するのにどれぐらい時間がかかるのか、そういえば最初の時は居眠りをしていたので把握していなかったのだ。
乗り場へ行ってみた。
そこには色とりどり車が十数台待機していた。
そこにいる係員に聞いてみる。
「娘がこれに乗ったんだけど、まだ帰ってこないんだが…」
「ああ、あと三台まだ走ってるね。あ、ほらほら一台帰ってきましたよ」
見ると、それはゆかではなかった。
男の子だ。
しばらくしてもう一台が帰ってきた。
遠目で、女の子らしく見えるけれど着ている服の色が違う。
乗り場には、新しく乗ろうとする子供はいない。
女の子が乗り場に着くと同時に最後の一台が遠く、帰って来るのが見えた。
その時、またも園内放送の声がした。
「迷子のお知らせをいたします。かわぐちゆかちゃんとおっしゃる三歳の女のお子様をお預かりしています。お心当たりの親御さんは……」
(ゆかだ!)
わたしは係員にお『客様広報センター』の場所を聞くと、最後の車が近づくのも待たずに走り出していた。
観覧車の前を通り過ぎ、チケットブースを通り過ぎ、お祭り広場を横切り、ショッピングモールの裏側に入った。
そこにあるはずのお客様センターは見つからなかった。
(え?どういうことだ)
確かこの売店の並んでいる裏側……
見ると向かい側にも何軒も並んだ売店があった。
その裏側に入ってみたがやはり見つからないのだ。
園内地図を探して広場へと出て来た。
その時に気が付いた。
遊園地には殆ど人がいないのだった。
遊びに来ている客は一人も姿が見えない。
男女の係員の姿がさっきまでちらちらしていたのだが、建物の中に入ったり、植込みの向こうに歩き去ったりして、気が付くと私一人になっていた。
そして空はすっかり夕暮れの気配だった。
園内地図をやっとのことで見つけ、しっかりと記憶して、慎重に道をたどって着いた所に、『お客様広報センター』があった。そのドアノブを掴み、回そうとした。
しかしそれには鍵が掛かっていたのだ。
窓から中を覗き込むと、一人の係員が向こうのドアから出て行こうとしているところだった。
窓枠を手でたたいて大きな音をたてた。
しかし係員は気が付かずにドアの向こうに消えてしまう。
同じ建物の他のドア全てを順に開けようとしたが、どれもみな鍵が掛かっていた。
そして、園内には蛍の光が流れ始める。
「どこだ!どこでこの曲を流してるんだ!?」
私の大声は園内に響き渡った。

人っ子一人いない真っ暗な遊園地で私は途方に暮れていた。
なぜこんなあり得ない事が起きてしまったのだろう。
ひょっとして私はまだあのベンチで眠っているのだろうか?
それにしてはあまりに遊園地の風景は黒々と重く、空気は肌寒く、足元をカサコソと風に運ばれて行く紙くずは現実的だった。
今朝入って来た遊園地のメインゲートは閉ざされていた。
私はこれからどうすればいいのだろう。
柵を乗り越え、警察へ駆けこむべきなのだろうか?
しかし今日あった事を信じてもらえるのだろうか?
この遊園地が明日には普通の遊園地に戻ってしまっているとすれば。

その時、遠く声が聞こえた。
今日、何度も聞いたあの声だ。
「迷子のお知らせを申し上げます。かわぐちけんじくんとおっしゃる三歳ぐらいの男のお子様を探しています。お母様がお客様広報センターでお待ちです。かわぐちけんじくんと…」
その声は遠く小さく、風にとぎれとぎれに聞え、そしてチャイムの音で終わった。
あとはもう風の音が聞こえるだけだった。

  カワグチケンジハボクノナマエダ

      オカアサンガボクヲサガシテルンダ

            デモドコへイケバイイノカワカラナイ




おわり



今年の初めぐらいだったかな?
その頃に書いたツイリミを元に書いています。
書き上げて、即アップしています。
出来立てのほやほやですから、まだおかしな文章があるかもしれませんが、それはちょこちょこ手直しして行きますね。
ぼくの気持としては、「ブログの作品は下書き。完成させるのはそのうちにね」
と言う感じでやっています。

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by marinegumi | 2013-04-09 20:23 | 掌編小説(新作) | Comments(2)
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ベッドに横になって一冊の本を夢中で読んでいた。
その本の中では世界は朝を迎えていた。
小高い丘から見下ろした小さな建物のひしめき合う古い町の夜明けだった。
ふと窓の外を見ると夜中のはずなのに空は薄明るくなっている。
そんなに夢中になって読んでいたのかと驚きながら、眠らなくてはと思いながらそのまま読み続けた。
やめることが出来なかった。
どうしても本のページを閉じることが出来ないのだ。

本の中で、夜明けの場面が一転、真昼の砂漠になる。
すると窓の外は熱気が渦巻く灼熱の世界だ。
その熱気が部屋の中にも忍び寄る。
やがて襲い来る砂嵐が窓ガラスを叩きはじめる。

そしてまた本の場面は大海原をゆく帆船の中になる。
荒れた海の只中で部屋は大きく揺れ、窓の外には波の音が聞こえる。

ふと世界は静まり返る。
窓の外に夜が再び訪れている。
でもその夜は僕たちの夜ではない。
あらゆる邪悪な者たちの徘徊する、恐怖に支配された全くの暗黒の世界だ。
今にも窓ガラスを打ち破って部屋に何かが飛び込んでくる予感に震えた。

本の中の世界と共に、この僕たちの世界が変貌してゆく。
いったいどうして僕はこんな本を読みはじめてしまったんだろう。
本のタイトルは「世界の終り」
どうしても読むのをやめられなかった。

残りのページはあとわずかだ。




おわり




もと、ツイッター小説。
「ツイリミ」と言うやつです。
人の書いたツイッター小説をもとにして、リミックスするということですね。
ツイッター小説のことを、ツイッターノベルと言い、ツイノベと略します。
ツイノベをリミックスするということで「ツイリミ」と言う言葉が生まれたようです。
元のツイノベの一部だけをちょこっと変えるというのから、一部の文章だけを生かした別のお話を作ると言うのまでそこらへんは自由なわけですね。
そうやって書かれたものを元に長くしたのがこの作品です。


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by marinegumi | 2013-04-06 17:02 | 掌編小説(新作) | Comments(2)

死神 桂枝雀バージョン

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「死神」 桂枝雀バージョン

                             原作 haruさん

はい、いらっしゃいませ
今日もまたお話を聞いていただくわけでございますでございますけれど
昔、長屋と言う物がありましたな
いわゆるロングハウスというやつでして
今で言えばアパートですかねー
平屋で軒(のき)の繋がった木造住宅みたいなね
落語ではおなじみの大家さんなんちゅう人が管理していらっしゃいましてね
そんな長屋が2,3軒集まった路地の一番奥の家、吹き溜まりみたいな所に一人の男が住んでおります
名前を清八(せいはち)と言います
上方落語ではおなじみの登場人物、喜六、清八のコンビの片割れですな
その清八が歳をとりまして、晩年を迎えていると言う設定のお話であります

両親や、嫁はんにも先立たれ、娘のおさきと二人暮らし
そんな清八が病気にかかりまして、長い長い病院暮らしをしております
治る見込みもありませんな
そんなある日、清八は看病をしてくれているおさきに言います
「治らん病気やったら、わしは家に帰って畳の上で死にたいんや」
「まあ、お父さんあほらしい。家に帰っても死ぬのは布団の上でしょ」
「なに言うてんねんな。家に帰ってそこで死ぬ事を畳の上で死ぬちゅうんやないかいな」
「まあ、お父さん。そんな弱音吐かんとってください」
「頼むから、わしを家に連れて帰ってくれ」
「まあ、お父さん。わたしがなんぼ力持ちでも歩かれへんお父さんをおぶっては、よう帰りまへんえ」
「なに言うてんねんな。お前が背(せ)たらわんでも、人力車でもリヤカーでもええねん」
「ほな、駅前のレンタカーでも借りて来まひょか?」
「お前なー、この時代にレンタカーなんぞあらしょまい?」
「まあ、お父さん…」
「もうええ、もうええ。お前のボケで、話が進まんがな」
なんやかんや言うても、優しい娘はんでんな
そんな父親の願い通り、病院と話をつけて長屋に帰ってまいります
清八は安心したのか、家に帰って布団に横になるなりそのまま寝たきりになってしまいます
言葉も塩梅(あんばい)しゃべれんようになるわ、目角も悪うなるわ、意識混濁も引き起こします
「意識混濁」やて
こんな難しい言葉、他の人の落語には出て来ませんよ
「お父さん、お父さん、大丈夫?」
おさきはそんな父親が心配で声をかけますな
清八にはその声が聞こえてはいるんですが、これが返事をすることも出来ません
自分を家につれて帰ってくれた娘に感謝の一言でも伝えたいんやけど
その言葉が声にならへんのですな
声帯まで弱って来たんでしょうな
心配そうに自分の顔を覗き込んでいるおさきの目に涙が見えます
「なに?お父さん。私が泣いてるのん見て泣き虫やな~思てはる?そんなんちゃうで。今さっきサンマを外で焼いてたさかいや。なに?サンマの匂いがせえへんて?お父さんのいけず!」
「わしゃ、何も言うてえへんがな」と清八は言おう思ても声が出ませんな

おさきは、かいがいしくも、涙ぐましくも、たまには手を抜いたりもして、毎日世話を続けております
ある日のこと、清八がいつものように自分の世話をしてくれるおさきを見上げると
おさきの他にもう一人誰かの顔が自分を覗き込んでいるのが見えます
不思議なこともあるもんやなと、かすんだ目を見開いて…もよく見えません
反対に目を細めると結構よく見えたりすることもあります
そうやって目を開いたり細めたりしておりますと
その顔はどうやら痩せこけたお爺さんのように見えるんですな
二人暮らしのこの長屋にそんな老人がおるはずがありまへん
まさか、おさきがどこかの誰かを引っ張り込んで同棲をしているのではないかと
そう思っても聞く事も出来ません
同棲をするにしてもこんな年寄りはやめておきなさいとアドバイスをしようにも叶いません
「お父さん。わたし、お父さんが入院中に誰かを引っ張り込んだりはしてませんよってに、安心してくださいね」
「ええ~?こいつ、わしの心見通してんのかいな。こわ」
そう思いはしたものの、どうやらおさきは、その老人がそこにいる事にさえ気が付いてない様子なんですな
それからと言うもの、その老人はしょっちゅう清八の顔を覗き込むようになります
日に何回も目が合(お)うたりするようになったんですな
目が合うたんびに薄気味悪う、にた~りと笑います
ある日はじっと熱く見つめていたかと思うと唇を寄せて来て濃厚な口づ……そんなあほな事は起きません!
考えるだけで気持ち悪いので今のはなかった事にお願いしますです
どうやらその老人はいつも清八の枕元に座り込んでいるらしい言うのがわかります
清八が毎日目が覚めると、がさごそと起き上がって、清八の顔を覗き込むんですな
そこで清八は昔おじいさんから聞いた話を思い出します
死神が病人の枕もとに座っていれば、その病人はもうすぐ死ぬ
それが足元の方におったら、ある呪文を唱えて柏手(かしわで)を二つ打てばまだ助かる
そのお爺さんが落語好きで、その死神の話も落語のネタのひとつやったらしいんですな
清八にとってみればそれが今、どうやら自分の身に起きとる事やないか
リアルタイムじゃん、と気が付いたわけですな
「これはまたえらい事になってしもた。このままやったら、わしは死神に連れて行かれるやないか。どないしょ?どないしたらええねんな~!」
こういうふうにまあ、心の中で叫んでおるわけです
そんな清八の顔をまた死神が覗き込んで、にたあ~りと笑います
「死神やとおもて見たらやっぱり迫力あるのう。さっきまで痩せたおいぼれじじいやとおもてたのに」
「おいぼれじじいで悪かったの」
「なんやお前、わしの言う事が判るんかいな。なんで今まで反応せえへんねん。人が悪い」
「それも言うなら、神が悪いじゃろ?」
「死神はん。あんたもおもろい人やな」
「そやから、人とちゃうて」
「そうか。あんたとこうやって話が出来るっちゅうことは、もうそろそろ向こうへ行く時間が来たんか?」
「そう言うことじゃ。まあ、支度は何もいらん。身ぃひとつでええさかいな」
それを聞いた清八はかえって落ち着いたんですな
自分の立場を納得したとでも言いますか、開き直ったと言いますか、頭がいつになく回転しております
おさきはどこにおるのかと見回しますと、かわいそうに疲れ果てて清八の布団の裾(すそ)で居眠りしています
「わしが死んだらこの子は一人ぼっちになるんやな~」
そない思うと涙がにじみます
「もう、おもろいボケをかます相手もおらんようになるんやな。しゃべられへんわしにでもボケるぐらい、ほんまにボケの好きなおなごやった。なあ、死神はん。最後に一つだけ、わしの頼みを聞いてくれへんか?」
「聞いてやりたいけど、もう時間がありゃせんがな」
「いやいや、そんなに時間がかかる頼みとちゃうがな。ちょっとだけ足の裏を搔いて欲しいだけなんや。さっきから足の裏が痒いぃて痒いぃてたまらんのじゃ。このままあの世行ってしもたら、この痒みで成仏出来んぞ。死神さんよ。痛いのはまだ我慢が出来ても痒いと言うのはそもそも…」
「もうええ、もうええ、話長ごうなるがな。ちょっとだけでええのんか?どれどれ」
そう言うと死神は清八の足元に回り、布団を持ち上げようとします
「屁、こかんといてや」
今や!と言うわけで清八はおじいさんから聞いた呪文を唱えます
「あじゃらかもくれん きゅーらいそ てけれっつのぱ!」
それで最後の最後に残しておいた力を振り絞って手を二つ叩きます

パン!パン!

手を打っても何も変わりません
おかしいなと思てると死神が顔を上げて
「死神も神様じゃ。賽銭はどうした?」




お後がよろしいようで




調子に乗って、「桂枝雀バージョン」を作りました。
故・桂枝雀さんならこういう感じに演じられるんとちゃうかいなと言うことです。
ボケをたくさん入れて笑う場所を多くした感じですね。
「上方落語バージョン」は、基本的に桂米朝さんの落語を頭に置いて書いたものです。

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by marinegumi | 2013-04-03 22:26 | 落語 | Comments(4)

死神

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「死神」 上方落語バージョン

                            原作 haruさん


毎度古いお話ばかりで恐縮しておりますが
今日の話がまた、今どき見んようになってしまいましたが…
長屋、なんちゅう所を舞台にしたお話ですな
今で言うたらアパートですか
平屋の棟続きの木造アパートちゅう感じですかな?
そんな長屋の一番奥の吹き溜まりみたいな所に暮らしております
清八(せいはち)と言う男のお話です
よろしくお付き合いを願いいたします

歳をとりまして、嫁はんにも先立たれ、娘のおさきと二人暮らし
そんな清八が病気にかかりまして、長い長い病院暮らしをしております
治る見込みもありませんな
そんなある日、看病をしてくれているおさきに言います
「治らん病気やったら、わしは家に帰って畳の上で死にたいんや」
「まあ、お父さんそんな弱音はかんとってください」
「頼む、わしを家に連れて帰ってくれ」
優しい娘はんでして、そんな父親の願い通り、病院と話をつけて長屋に帰ってまいります
清八は安心したのか布団に横になるなりそのまま寝たきりになってしもうて
言葉も不自由になり、意識朦朧と言うやつですな
「お父さん、お父さん、大丈夫?」
おさきはそんな父親に心配そうに声をかけますな
その声が聞こえてはいるんですが、これが返事をすることも出来へん
自分を家につれて帰ってくれた娘に感謝の一言でも伝えたいんやけど
言葉が声にならへんのですな
心配そうに自分の顔を覗き込んでいるおさきの目に涙が見えます

おさきはかいがいしく毎日世話を続けております
ある日のこと、清八がいつものように自分の世話をしてくれるおさきを見上げると
おさきの他にもう一人誰かの顔が自分を覗き込んどるんですな
不思議なこともあるもんやなと、かすんだ目を見開いてよくよく見てみると
その顔はどうやら痩せこけた老人のようですな
二人暮らしのこの長屋にそんな老人がおるはずがありまへん
おさきに聞こう思うても、言葉は声にはならへん
しかもどうやらおさきは、その老人がおる事にさえ気が付いてない様子で
それからと言うもの、その老人はしょっちゅう清八の顔を覗き込むようになります
日に何回も目が合(お)うたりするようになったんですな
目が合うたんびに薄気味悪う、にた~りと笑います
どうやらその老人はいつも清八の枕元に座り込んどるらしい言うのがわかります
清八が毎日目が覚めると、がさごそと起き上がって、清八の顔を覗き込むんですな
そこで清八は昔おじいさんから聞いた話を思い出します
死神が病人の枕もとに座っとったらその病人はもうすぐ死ぬ
それが足元の方におったら、呪文を唱えさえすればまだ助かる
お爺さんは落語好きで、それも落語のネタのひとつやったらしいんですが
清八にとったらそれが今、どうやら自分の身に起きとる事やないかと気が付いたんでんな
「これはまたえらい事になってしもた。このまやったら、わしは死神に連れて行かれるやないか。どないしょ?どないしたらええねん!」
そんな清八の顔をまた死神が覗き込んで、にたあ~りと笑います
「死神やとおもて見たらやっぱり迫力あるのう。さっきまで痩せたおいぼれじじいやとおもてたのに」
「おいぼれじじいで悪かったの」
「なんやお前、わしの言う事が判るんかいな。そうか。もうそろそろ向こうへ行く時間が来たんか?」
「そうじゃよ。まあ、支度は何もいらん。身ぃひとつでええさかいな」
それを聞いた清八はかえって落ち着いたんですな
自分の立場を納得したとでも言いますか
おさきはどこにおるのかと見回しますと、かわいそうに疲れ果てて清八の布団の裾で居眠りです
「わしが死んだらこの子は一人ぼっちになるんやな~」
そない思うと涙がにじみます
「なあ、死神はん。最後に一つだけ、わしの頼みを聞いてくれへんか?」
「聞いてやりたいけど、もう時間がありゃせんがな」
「いやいや、そんなに時間がかかる頼みとちゃう。ちょっとだけ足の裏を搔いて欲しいだけなんや。さっきから足の裏が痒いぃて痒いぃてたまらん。このままあの世行ってしもたらこの痒みで成仏出来んぞ、死神さんよ」
「ちょっとだけでええのんか?どれ」
そう言うと死神は清八の足元に回り、布団を持ち上げようとします
今や!と言うわけで清八はおじいさんから聞いた呪文を唱えます
「あじゃらかもくれん きゅーらいそ てけれっつのぱ!」
それで最後の最後に残しておいた力を振り絞って手を二つ叩きます
パン!パン!



お後がよろしいようで




haruさんの朗読作品「死神の呪文」を落語に作り直してみました。
haruさんが演じるには大阪弁はちょっと無理かもしれないので、この下に東京落語バージョンもあります(笑)
ただし、登場人物は上方落語の登場人物そのままですよ。
haruさんの原作には「パン!パン!」の後にちょっと続きがあるのですが、落語ならここで終わったほうがいいような気がします。

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死神  東京落語バージョンはこちら
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by marinegumi | 2013-04-03 19:09 | 落語 | Comments(0)

約束(2枚)

a0152009_11243852.jpg

二人は霧でぼんやりかすんだ道を歩いてきた。
彼女はしっかりと僕の手を握っている。
やがて霧は少しづつ晴れて行き、一面のお花畑が見えてきた。
手前には簡単に飛び越せそうな小川が流れていた。
二人にはこの川を越せば向こう側なのだということが解った。
「三途の川なんていうものはなかったようだね」
僕が言うと、彼女は震える声で答えた。
「そうみたいね」
「いよいよあっちへ行くんだね僕たち二人で」
彼女は何も言わないでお花畑を見ている。
彼女は不治の病に侵されていた。
僕たちは一緒に死のうと約束をしていたので、もう一度その約束を確かめ、今日一緒に死んだのだ。
ふと彼女の顔の向こうの景色が彼女の皮膚を通して見えているのに気が付いた。
次第に彼女の体が透明になって行くのだ。
「さようなら」
彼女はそう言った。
え?どういうこと?
「あちらでお父様がわたしのクローンを作ってくれることになってたの。私はまだまだ生きられるのよ。あなたより好きな人がいたし。ほんとにごめんなさい」
消えてしまった。
彼女の手のぬくもりがまだ残っていた。
どうしてだ?
彼女は決して嘘をつくような人ではなかったのに。
そして思い出した。
「今日は4月1日じゃん」



おわり


これはたしかTome館長さんのコメント欄に書いたものですね。
こちらです。
Tome文芸館約束
ちょこっと手を入れて4月1日にふさわしいものにしました。

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by marinegumi | 2013-04-01 11:27 | 掌編小説(新作) | Comments(4)