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海野久実が掌編小説やら短編小説を書いています。タイトルの後に原稿用紙換算の(枚数)があるのが小説です。


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朗読 「珈琲の香り」

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5月14の作品「珈琲の香り」を「さとる文庫」のもぐらさんが朗読してくださいました。
こちらから聞いていただけます。
   ↓
珈琲の香り

この作品は、以前、「ゆっくり生きる」のはるさんにも朗読していただきましたが、そのはるさんからもぐらさんへ「もぐらさんの朗読でも聞いてみたい」と言うリクエストがあったと言う事らしいのです。
そのはるさんの朗読はこちらです。



もぐらさんのゆったりと、また淡々とした朗読から思いもよらぬ真実が浮かび上がる感じも好きですが、はるさんの何かが起きるぞ起きるぞと思わせる朗読と音楽の効果はラジオドラマみたいでなかなかいいと思いました。
もぐらさん、はるさん、ありがとうございました。

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by marinegumi | 2014-06-22 21:58 | 朗読 | Comments(0)

思い出は海の中

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わたしがわたしの思い出たちを
ちゃんと思い出している時は
それはわたしの頭の中で
いつもいつも きらきらしている

わたしがわたしの思い出たちを
すこしのあいだかまわないでいたら
うっかり思い出すのを忘れたら
いつのまにか どこかへ行ってしまう

大切だったはずの思い出なのに
思い出そうとしても思い出せない
かけがえのない思い出なのに
もうすっかり残っていない

そんな忘れてしまったわたしの思い出は
きっとあの海に沈んでいるのだと思う
だって海の色は 青い青い思い出の色だから

わたしが忘れた思い出たちは
水底(みなぞこ)深く沈んだり
サンゴ礁に引っかかり
波にのってゆられたり
ずっと海を漂っている

海を漂う思い出たちは
ある日わたしの近くへ流れ着く
その時きっとわたしにはそれがわかる
はっきりとは思い出せないけれど
ただぼんやりその思い出の気持ちを感じる

悲しい思い出が近くなると
わたしはきっと悲しいのだろう
楽しい思い出が近づくと
わたしはきっと楽しいのだろう
なぜか人恋しい時は
恋をした思い出が近いのだ
なぜか懐かしい時は
幼い頃の思い出が近いのだ
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ひさびさに詩を書いてみました。
と言っても前によく詩を書いていた頃に書いて、没にしていた断片を元にして大幅に書きなおしたものです。

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by marinegumi | 2014-06-17 23:27 | | Comments(0)

星喰い虫 (9枚)

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『星喰い虫』が生まれた。
それは何万年も宇宙空間を漂流した後、ある星系の第三惑星に漂着した。
そのまま放置すれば惑星は確実に喰い尽くされるだろう。
『星喰い虫』が自然発生の物なのか、どこかの邪悪な種族が作った物なのかは未だに判らない。
判らないまま数億年の間に多くの惑星が餌食となった。
しかしまたそれを防ぐ装置を開発した種族があった。
その装置は『星喰い虫』を閉じ込める『虫籠(むしかご)』と呼ばれていた。
『虫籠』は自己進化型の機械で、それ自体が星喰い虫の居場所を見つけ出し、自動的に閉じ込める機能を持っていたのだ。

その日の午前中、季節外れの別荘地に一人の少年とその両親と小さな妹の四人家族がやって来た。
彼らの乗る車が緑に囲まれた山道に入った頃、少年は不思議な物を空に見つけた。
青空にぽっかりと白い何かが浮かんでいるように見えたのだ。
少年が空を指差すのを父親は横目でちらりと見て「風船かな?」と言った。
それは丸くはあったが輪郭がはっきりせず風船ではないと少年は思った。
父親は運転に集中しているし、母親は妹の相手をしていたのでそれを気にしているのは少年だけだった。
景色が変わるにつれてその白い物が遠景の山より手前にあるのが見えた。
それほど大きな物ではないようだった。
やがて木々の向こうに見えなくなってしまった。
「後であれが何なのか見に行ってみるか?」父親がそう言った時、車は別荘の前庭に着いた。
いくらか荷物を運び込むと、母親が足りない食料品などの買い物に近くの街まで出掛けると言う。
少年は両親と妹を見送り、一人で残った。
彼は気になっていたのだ。
あの空に浮かぶ白い物を思い出すとなぜかひどく胸騒ぎがしたのだ。
二階の部屋のカーテンを開けた。
鬱蒼とした緑が重なっているばかりで何も見えない。
近くに他の別荘が2~3軒あるが、誰もいないはずだ。
この別荘地がにぎわうにはまだずいぶんと季節外れだった。

少年は外へ出てみた。
ドアを開けると木々の間に草の生えた静かな道が続いている。
少年の心にあの空に浮かぶ白い物が影を落としていた。
あれが見える所まで行くにはどれぐらい歩けばいいのだろう?
とりあえず少年は歩き始めた。
十数分歩き、少し汗ばんできた頃にそれは意外に早く姿を見せた。
その白い物は、始め見たよりもかなり大きくなり、空にある位置も高くなっていたのだ。
それは確実に風船や気球みたいなものではなかった。
円くはあったが輪郭がじわじわと回転するように動き、空の青さに溶け込んでいるのだ。
少年は訳のわからない恐怖を感じた。
振り返ると少年は別荘まで走って帰った。

両親はまだ帰って来ないのだろうかと思った。
彼はもう二時間ほども家の中で過ごしたのだ。
落ち着かない気分で窓の外を眺めていた少年の視界が一瞬真っ暗になった。
「停電?」と、少年は思った。
ほんの数秒で元の窓外の明るい景色が見えた。
日中のしかも屋外だ。
まさか停電ではありえないと少年は一人苦笑いをした。
父親の運転する車の音が聞こえないかと耳を澄ますと、その代わりに別の音が耳に入って来た。
「電車の音みたいだ」と少年は思った。
その電車の走るような音はあらゆる方向から聞こえる気がした。
少年はその音に誘われるように外へ出た。
音が一番大きく聞こえる方向を目指して歩き始めた。
歩くにつれ少年は不安になった。この別荘地へはもう何度も来ていたが電車の音など聞いた事がなかったからだ。
しかし、その音が何なのかを突き止めなければと思った。
知らないままにして置くのはもっと不安だったのだ。

十五分ほど歩くと木々の間に電車の走る姿が見えて来た。
とすると新しく鉄道が開通したと言うことなのだろうか。
近寄って行くとそれは客車ではなく貨物列車の様だった。
窓のない、連結された箱が次々に通り過ぎていた。
しかしそこには踏切も何もなく山道を突然断ち切るようにしてその電車は走っていたのだ。
車両は青い色の同じ形の物ばかりだった。
よく見るとその電車には車輪がなかった。
いや、その上に地面に敷かれたレールさえもなかった。

少年がやって来てから十分以上が過ぎてもまだ電車は途切れることなく走り続けていた。三十分を過ぎる頃、少年はこの電車は先頭と最後尾が繋がり、円を描いているのだと確信した。
前後が完全に繋がった円を描く電車の車両の内側に自分が閉じ込められている。
「ここを出なくちゃいけない」少年はそう声に出していた。
「ここを出なくちゃいけない」
「ここを出なくちゃいけない」
ふと、自分はその言葉を何度も何度も繰り返して声に出したような気がした。
そしてまた、自分は何度も同じ行動を繰り返しているような気もした。
別荘の二階で周りが一瞬真っ暗になり、玄関を出てこの場所までやって来る。
そしてここから、走り続ける列車の輪の中から外へ出ようと試みる。
そんな事を何度も何度も、気の遠くなる程に繰り返して来た。
そんな気がした。
少しずつ違う同じ様な時間を。
少年は通り過ぎる車両に掴まれる様な手掛かりを見つけた。
何両も何両もやり過ごしながらタイミングを見計らい、その手掛かりに飛びついた。
今までは決心がつかず、どうしても手を伸ばせなかったのだ。
グン!と腕が抜けるかと思うほどの力が掛った。
体を木々が叩き、手足が切れ、血が噴き出した。
傷だらけで車両の連結部に体を入れる。
そして反対側に来ると、過ぎ去る景色が開けた時、目を閉じて足を思いっきり蹴って飛び降りた。

青空が見えた。
彼は仰向きで倒れていた。
少しの間気を失っていたのかもしれない。
体中がひどく痛んだ。
起き上がるとそこには林の中の道はなく、高層ビルの林立する見知らぬ大都会がすぐ近くに見えていた。
少年は思い出していた。
あの電車の描く円の中で過ごした時間を。
ほぼ同じ数時間を何度も何度も繰り返し続けた気の遠くなるほどの年月を。
少年を夥しい記憶の洪水が襲い一瞬めまいがした。
そしてもう自分は少年ではない事に気がついていた。
無数のしわに覆われ、血管の浮き出た自分の腕を見つめた。

『星喰い虫』それ自体を殺すことは不可能だった。
時間の檻、『虫籠(むしかご)』に永遠に閉じ込めて置く以外に方法はないのだ。




おわり



この作品は公募ガイドの「第28回小説の虎の穴」に応募して没だった作品です。
投稿した物に少々手を加えています。
というか、反対に投稿した物は原稿用紙5枚に収めるためにこれをだいぶ削ったものだと言うのが本当かもしれません。
しかし、その削る前の物が残っていなくて、今回思い出しながら修正しました。

この回のテーマは「時間のない世界」です。
うーん、だんだんテーマが難しくなって来る気がします。
今回は齋藤想さんが「時間のない世界へ」で佳作に入っておられます。
おめでとうございます。


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by marinegumi | 2014-06-11 14:45 | 掌編小説(新作) | Comments(4)

珈琲の木 (2枚)

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おいしい珈琲が飲みたい

あなたはそう言った。
お湯はいつでも沸いている。
コーヒーカップももう温めてある。

そうねえ 目的の星に着いたら 飲めるかもしれないわね
まず炭化水素を星全体に散布して温室効果で気温を上げるでしょ
軌道上に巨大なアルミの鏡を浮かせて太陽の光を極地に当てるでしょ
そうすると地下の氷が解けて海になり川になり それが蒸発して雲が出来る
雨が降ってまた蒸発して 繰り返すうちにだんだん呼吸できる大気が出来る
それまでに15年ぐらいかな
土壌に菌類を蒔いて栄養豊富な土に変えてから育ちやすい樹木を植える
それが茂って更に大気を地球に似た環境にするわ
そこまでで更に20年ぐらいかな
その後ね 珈琲の木を植えるのは

あなたはうんざりしたような顔をした。
その顔を横目で見ながらインスタントコーヒーのビンからひとさじすくう。
温まったカップの中にそれを入れるとお湯を注いだ。

砂糖とミルクはご自由に
インスタントもそんなに悪くはないでしょ?

食事室が珈琲の香りに包まれた。
宇宙船が目的の星に着くのはまだまだ先の事だった。



おわり




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by marinegumi | 2014-06-06 01:03 | 掌編小説(新作) | Comments(2)