まりん組・図書係 marinegumi.exblog.jp

海野久実が掌編小説やら短編小説を書いています。タイトルの後に原稿用紙換算の(枚数)があるのが小説です。


by marinegumi
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「お菓子をくれなきゃいたずらするぞ~」
玄関のドアの外で声がする。
そうか、そういえば今日はハロウィンだね。
気まぐれでうるさくてわがままで、それでいてすぐに泣き出すどうしようもないガキがうろつきまわるいやな日だ。
ここ何年もうちには寄り付きもしなかったくせに、今年はどういう風の吹き回しだい?。
何人いるんだろうか。
声からすると男の子と女の子が混じって、4~5人てところか。

そうだな。
ハロウィンといえば思い出すのは六年前のことだ。
この町に引っ越してきて間もなくだった。
あの日も玄関にかわいらしい子供の声がそう言ったんだ。
「お菓子をくれなきゃいたずらするぞ」
そうさ、ちゃんとお菓子を用意して待ってたんだよわたしゃね。
お菓子を入れた籠を持ってドアを開けると、口々にお決まりの文句を言っていた子供たちが黙り込んだ。
その顔は私を見て凍り付いていた。
すると突然、一番小さな男の子の顔が崩れ大きな声で泣き出してしまった。
それが合図でもあるようにみんなが一斉に逃げ出したのだ。
「うっわ~!本物の魔女だ~」
「こわいよ~!」
「人食い魔女が出た~」
みんな口々にそんなことを叫んでいた。

ああ、そうだろね。
わたしゃ若いころから老け顔でさ、おまけに鼻は鉤鼻、六年前のあの頃には、もう腰が曲がっていたわね。
その日はこれまた、たまたま親戚のお葬式帰りでさ、黒い服を着ていたのさ。
あとで鏡を見て納得したさ。
これじゃあ子供たちが魔女と間違えるのも無理はないとね。

だから次の年からはちゃんと明るい服を着て、精一杯お化粧もして子供たちを待つことにしたのさ、ハロウィンにはね。
でもなんと言うことだろ。
子供たちはあれっきり寄り付きもしないのさ。
何年も何年も待ったけどね。
六年間一度も来なかったというわけさ。
もう最近はお菓子を用意することもなくなってしまっていたんだ。

それがどうだい?
今年はなぜか、どういうわけだか、あの声がするじゃないか。
「お菓子をくれなきゃいたずらするぞ~」
そう、たぶん、私を魔女だと言いふらした子供たちが大きくなってしまい、それを知らない子供たちがやって来たんだろうね。
とはいえ、子供たちは今も昔も同じようなもの。
気まぐれでうるさくてわがままで、それでいてすぐに泣き出すどうしようもないガキだ。
「お菓子をくれなきゃいたずらするぞ!」
はいはい、待ってろよ。
顔をこのスカーフでかくしてと。
ドアを開けると目を輝かせた子供たちの顔があった。
ほら、お前たち、六年前に誰も持って帰らなかったこのお菓子を食べて、おなかを壊すがいいさ。
ハロウィンだからね。
本物の魔女がどこかにいてもおかしくないだろ。



おわり


これはきのう書いたツイッター小説を書きのばしたものです。
りんさんがハロウィンネタでショートストーリーを4本書いてらっしゃいますが、僕も同じようにごく短いものをいくつかと思ったのですが、つい長くなってしまいました。

りんさんの作品 ??ハロウィン??




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by marinegumi | 2014-10-29 20:25 | 掌編小説(新作) | Comments(4)
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疲れていた。
毎日残業続きで休日に出社することもある。
いくら若いと言ってもこんな日がいつまでも続くとどうなるんだろうかとぼんやり考えていた。
走る電車の窓の外をさまざまな色の光が流れて行く。
これは終電だったかな?
今日は一つ早い電車だったかもしれない。
そんな小さなことはどうでもいい。
かたいシートに頭を預けて少し上を向いて目をつぶった。

「今晩は。わたし、風邪です」
うとうと眠くなっていたときに、急に声をかけられた。
電車の座席、僕のとなりに何かが座っていた。
それは人間ではなかった。
人間以外のものに声をかけられたことがなかったのでちょっとうろたえた。
でも意外に冷静な自分にも気がついた。
眠気でぼんやりしていたのであまり現実感がなかったからだ。

声をかけてきたそれはなんだかはっきりしない物だった。
まん丸くて、青いような緑のような、赤っぽいような微妙な色だ。
そして表面には星の模様がいくつかついている。
その模様が目や口のように見えていた。
「え?なんですか。今、風邪って言いました?」
「そうです、わたしは風邪です」
風邪ですと言われても、ああそうなんですねとは納得できない。
その、自称風邪さんは、続けてこう言った。
「貴方はいつも本当に真面目に働いていますね。どんなに遅くなっても、休日出勤を命じられても、文句ひとつ言わない」
その声を聴いているうちに、ますますその星の模様が顔に見えてくるのだった。
「え?まあ、せいいっぱいというか、無理やりと言うか、流されるままにと言うか、必死に働いてはいるよね」
「わたし、そんなあなたが心配なのです」
え?どういうこと。
「そんなまじめで働き者のあなたが体を壊さないかと心配しているのです」
それって風邪さんの言う言葉なのかなあ?と思いながら、これはやっぱり夢なんだろうなと考えていた。
「二、三日ゆっくり休んだ方がいいですよ」
星模様の目と口が優しく微笑んだ。

目が覚めると、電車はちょうど僕の降りる駅のプラットホームに入るところだった。
立ち上がると軽いめまいがした。
改札を抜けながら少し頭痛が始まっているのを感じていた。
「そうだな。少しの間仕事を休むのも悪くないかな」

地下道の壁に貼られているさまざまなポスターの一つに、さっき夢で見た物の写真があった。
「ライノウイルス。風邪(普通感冒)の代表的な原因ウイルスとして知られている」




おわり




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by marinegumi | 2014-10-26 17:57 | 掌編小説(新作) | Comments(10)
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偕成社のサイトで連載されている、高井信さんの「小学生のためのショートショート講座 第3回 ショートショートの長さ」です。
イラストは、僕が描かせていただいています。

偕成社ホームページ「ウエブ連載」のページ
「小学生のためのショートショート講座」記事一覧
「第3回 ショートショートの長さ」

今回から記事ページにも僕のイラストが表示され、クリックすると大きな画像が表示される様にしていただきました。
以前の回でも同じ様に表示します。

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by marinegumi | 2014-10-21 00:50 | 写真や お絵かき | Comments(10)

遅刻常習女子 (2枚)

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なんだかとっても長い時間走っていたような気がする。
時間の感覚もなくなり、疲れてしまっていた。
やっと目の前に学校の建物が見えた。

廊下をゆっくりと歩いた。
今日はちゃんと遅刻をせずに済みそうだ。
いつもならドタバタと走ってばかりだけれど、今日はまだたくさんの同級生が歩いている。
その同級生たちはじろじろとわたしの方を見ている。
一体なんだっていうの?

教室に先生が入ってくる前にちゃんと自分の席に座っていた。
クラスのみんなが、珍しいこともあるもんだと言いたげな目を向けている。
やがて入ってきた先生までがそうだった。
わたしは微笑みを浮かべてその視線を受け止めた。
わたしだって遅刻をしないことだってあるんだからね。
先生は出席をとった。
よりによって先生はわたしの名前を呼ぶときにちょっと噛んでしまった。
教室に失笑が起きた。

ホームルームが終わり、一時限目は英語のはずだった。
でも入ってきたのは現代国語の先生だ。
時間割を見直してみると昨日の時間割だった。

あらららら。
ちょうど24時間遅刻してしまったらしい。



おわり



これで三日連続アップですね。
台風の影響もあり、仕事中に書く時間が出来たからですが、書けるときに書いておけと言う感じです。
書いたままアップせずに出し惜しみして保存していると、そのまま長い間忘れてしまったことがあるので即アップしています。

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by marinegumi | 2014-10-14 10:11 | 掌編小説(新作) | Comments(4)
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「このスイッチを手に入れたときからずっと思ってたんだ」
「なんて?」
「これを押す時がきっと来るんだろうなって」
「そうなの」
「いまの世界を見てごらん。こんな汚い世界なんて滅んでしまう方がいいと思うんだ」
「それが今日なのね」
「そうだよ。ぼくはきみを充分愛したし、自分のやりたいことはやった。最後に残ったのはこのボタンを押すことだけさ」
「もう決めちゃったのね」
「そうさ。世界は今日滅びるんだ」
「あなたが決めたのならわたしはそれでいいわ」
「いいかい?もう押すよ」
「ねえあなた」
「ん?」
「今日、病院へ行ったの」
「うん」
「わたし、こどもが出来たみたいなの」



おわり



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by marinegumi | 2014-10-12 18:34 | 掌編小説(新作) | Comments(2)

深海魚 (4枚)

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サトシはどんよりと暗い厚い雲の下、青い車を走らせていた。
空と同じように気分も重く沈んでいた。
「デートなのにいやな天気になっちゃったよな」
彼はそう呟きながら、ふとミサトの笑顔を思い出して、少し気持ちが明るくなった。
ほんの少しだけれど。

突然雨が降り出した。
車の屋根の上に雨粒が当たり、バタバタと大きな音をたてた。
すぐにワイパーをハイで動かさないと前が見えないほどの強い雨だ。
昼間だと言うのに更にあたりは暗くなりライトをつけている車もちらほらあった。
サトシはスモールライトを付けた。

回りの都会の景色はすっかり雨にかき消されていた。
まるで海の中にでもいるような濃い雨だった。
雨の音に慣れてしまうと、かえってそれが静寂に聞こえた。
静かな海の中を進む青い車。
すれ違う車のライトもぼんやりとにじみ、深海魚の目に見えた。
窓の横を流れて行く尾を引く光。
あれはチョウチンアンコウの誘引突起から出る発光物質なのだろうか。
それにしてもなぜこんなに暗いのだろうとサトシは考えていた。
いくらなんでも暗すぎる。
それはまるで深海の暗闇にいるようだった。

じわりと襲ってくる眠気を感じてサトシは車を停めた。
背もたれをリクライニングさせてフロントガラスを流れる雨を見ているうちに夢と現実の狭間に意識がさまよい始めていた。
あたりを無数の深海魚たちが静かに泳いでいる。
それぞれにさまざまな光を放ちながら。
音がわずかに聞こえる。
それは雨の音ではなく、あぶくの音だ。
ポコポコ、ポコポコと。
サトシは思う。
「ぼくは深海魚のおなかのなかにいるんだろうか」と。
「ぎざぎざにみえるのは深海魚の歯だろうか」
すうっと暗闇に引きずり込まれる。

ミサトは雨上がりの午後の街を歩いていた。
サトシが迎えに来るはずの場所に着いてから、もう30分過もぎていたので車が来るはずの方へ歩き出したのだ。
メールをしても返事がないし、サトシはいつも時間に遅れた事はないので少し心配でもあった。
雨にぬれた歩道に靴の音が響いた。
ふと車道に何か得体のしれない物を見つけた。
ぶよぶよとした青黒い塊が落ちていたのだ。
近寄ってみるとそれは車にでも轢かれたのか、醜くつぶれた魚のようだった。
それも、つぶれる前でもグロテスクだったに違いない深海魚だ。
傘の先でつつくと口の中に何か小さな人の形をしたものが見えたような気がした。
気持ちが悪くなり目をそむけた。

ミサトは空を見上げた。
くっきりと大きすぎる不気味な虹が架かっていた。



おわり



「まりん組」、「海野久実」の名前にふさわしく、海のお話が続きます。
それもどちらも雨から海へ、と言う感じですね。
このお話も、前の「雨の中のさかな」と同じくツイッターで「窓枠水槽」のタグで書いたものです。

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by marinegumi | 2014-10-08 11:43 | 掌編小説(新作) | Comments(0)